暗闇より


















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31〜40
31.内緒のプレゼント
 ここは、ホウエン地方のとある研究施設。色々な種類のポケモンを預かったり、育てたりしている。ここで育ったポケモン達は、地方の新人トレーナーの最初のパートナーとして連れられることもあれば、研究のお手伝いをしてもらうこともある。研究室のひとつで、二人の研究員が話していた。

「本当にアチャモで良いんですか? ミナモシティでしょう?」
「妻がね、ほのおポケモン連れてきなさい≠チて」

 穏やかに苦笑しながら、研究員の男はモンスターボールを受け取った。ボールの中のアチャモを見やる。「珍しくて強いポケモン……間違ってはいない」相手の研究員が肩を竦めた。「そりゃそうですけど、息子さん拗ねないですか」

「はは、しばらく口きいてもらえなかったら、どうしよう……」

 ぽりぽりと後ろ頭を掻き、研究員の男は肩を落とした。それでもボールを戻すつもりはないらしい。ぽん、とボールを軽く放る。飛び出したアチャモが、ちゃもちゃもちゃも! と部屋を駆け回った。「わったたっ! 元気だなぁ!」「ちゃもー!」

「うちの研究室で一番元気で素直なアチャモです。上手く育てば心強い味方になるでしょうな」
「ありがとう、この借りはいずれ」
「いえいえ」

 研究員の男は膝を折り、おいでおいで、とアチャモを手招きする。「ちゃも?」「こんにちは」くりっとした瞳と視線を合わせて名乗り、ゆっくりと言葉を続けた。

「……そんなわけで明日君は、うちの息子と顔をあわせる。最初はもしかしたら……上手くやっていけないかもしれないけど、根は良い子なんだ。どうか信じて、付き合ってやって欲しい。どうだろう」
「ちゃもっ!」

 コクコクとアチャモは頷いた。「ありがとう……って、本当に分かってるのかなぁ」「ちゃもちゃも!」アチャモを渡した研究員が苦笑いする。「たぶん、よく分かってないですね……」元気よく駆け回るアチャモを眺め、顔を見合わせて笑った。

( 2021/06/27(日) 11:52 )