24.豪雨とダンス
落下するような雨だった。風雨が渦巻き、木々がなぎ倒されそうなほどしなっている。叩きつける豪雨の隙間からかすかに、踊り出したくなる音が聞こえ、コダチは顔を上げた。
ここは、サイカタウンの森の中。群れからはぐれたハスボーを保護し、洞穴で雨をしのいでいる。ハスボーは、豪雨の底から聞こえてくる音に全身をぶるぶる震わせていた。「行きたいの?」「びぶ!」「そっかぁ……」サイクロンを思わせる横殴りの風雨をチラと見る。
「じゃあ、一緒に行こう!!」
「びぶぶ!」
抱いたまま飛び出した。風に流され、雨に打たれ、ものの数秒でびしょ濡れになるが、音にドンドン近づいていく。その場所に出ると、数十匹のハスボーが輪になっていた。「わっ!」「ぶぶっ!」
頭の葉っぱを乱打する雨がドラムロールのように音をかき鳴らす。中心でルンパッパが力強いダンスを踊り、ハスブレロがサブのダンサーとして踊り狂う。「ぶぶっ!」飛び出したハスボーが輪に加わった。絶妙に雨受け皿を傾け、無数の音を生み出し、重なり合って1つのリズムを作り上げる。みんな雨に打たれていた。コダチも雨に打たれていた。横殴りの雨は変わらず全身を叩く。
混ぜて、の言葉もなく、いいよ、の言葉もなく、手に手を取り合い、くるくると豪雨の中心で、みんなに混ざって踊り出す。
やがて雨脚が弱まり、ぽたりと雨受け皿に落ちる程度になった頃。一匹、また一匹と森の中へ引き上げていった。その中には、はぐれたハスボーもいた。ルンパッパはくるりと一回転して片手をあげ、コダチはハイタッチで応えた。
これが、出会いであった。
◆
「――という事だよ!」
喜々として出会いを語ったコダチに、ライカは胡乱な目を向けた。「なんも説明になっとらんで」「ええっ!?」