暗闇より


















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11〜20
18.酒の強さ
 ゴルトは潰れたヒナタを見やった。「弱い」ヒナタを挟んで反対側に座るニコニスが陽気に笑った。「Very weakですネ」
 ここはゴートシティのとあるバーラウンジ。夜遅く、珍しく3人で酒を飲んでおり、ヒナタは手始めの一杯だった――ウイスキーの炭酸割り。「ツキネはザルなんだが」「Youに似たんですよ」「つまらんな」頬杖をつき、ゴルトはブランデーを口にした。
 真っ赤な顔で潰れているヒナタを挟んで二人が話していると、完全に出来上がった酔客が絡んできた。「おいおい〜弱いニーチャンだなぁ」ゴルトはマスターに、こいつは? と尋ねる。バッジ6つで足止めを喰らっていると愚痴っていたトレーナーだと返答があった。「あと2つね。片方はお前か?」「Meですネ。参加者は全員覚えてマス」酔った男はニコニスをギロリと睨む。

「お前ェ、ルーロージムリーダーかぁ! お前の頭のおかしい女装ルールで俺は足止めなんだよぉ!」
「年齢規定はありませんヨ?」
「そぉいう問題じゃねー!」

 男の叫び声に、むっくりとヒナタが起き上がる。「そーだそーだー!」ゴルトが面白そうに片眉を上げ、ニコニスがパチクリする。そのままヒナタは男に加勢し、拳を振り上げた。

「俺だって大会に出たっていいだろー! なんれ駄目なんだー!」
「お前のご身分だとただの大会荒らしだろ」
「ちゃんぴょんだからってのけ者にしやがってー!」

 おいおいと泣き出したヒナタに、男が指を突きつけた。「お前ええええチャンピオンかー!」おうよ、とヒナタが真っ赤な顔で胸を張った。

「おまぇを倒せば俺がチャンピオンだ!」
「おお!? やるか!」

 そのまま二人で出て行き、一気にバーラウンジが静かになった。

「悪酔い極まれりか。どっちが勝つかな」
「HAHAHA!」

 十分後。ズボン片手に歓声を上げるヒナタと、泣いている半裸の男が戻ってきた。

( 2021/06/13(日) 20:18 )