暗闇より


















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11〜20
15.タマザラシ in ゴート
 タマザラシはもぞもぞとツキネのベッドから這い出した。ツキネはよく眠っている。オニキスはサニーゴについて治療部屋に入ったのでいない。暇だな、と思った。ふかふかのベッドの上で跳ねてみる。とても楽しい。だが、すぐに飽きてしまった。――リクを探そう。うんと伸びをして部屋を出る。開かない。扉が重かった。ぐっと低く構え、転がる体勢に入る。「たまー!」
 ぶつかる前に扉がひとりでに開き、タマザラシはべしっと向かいの壁にぶつかった。目をぱちくりとさせる。「たま?」
 
「グゴォ」
「たま!」

 ツキネの部屋を覗き込むと、ベッドと一体化しているメタグロスがいた。彼がサイコキネシスで扉を開いたようだ。タマザラシは、ありがとう両手を叩き、元気に廊下を駆けていった。部屋の扉が閉る。今度はエレベーターまで転がっていき、またぶつかった。「たまー!」ぴょんぴょん跳ねるが、スイッチに届かない。と、そこへアンノーンが一匹飛んできた。スイッチを押してやる。一緒にエレベーターに乗り込むと、何階? と尋ねた。

「たまー!」

 りっきゅんのいる階! とタマザラシが答える。アンノーンが部屋まで案内する。早朝の時間である。廊下を歩く人はおらず、流石にアンノーンもリクの部屋のカードキーは持っていなかった。3つ目の開かない扉にタマザラシは体当たしたが、びくともしない。「たま……」肩を落とすタマザラシに、背後から女性の声がかかった。

「おはようございます、タマザラシ様」
「たま?」

 ツキネの部下の女性が抱きかかえた。「リク様は、まだお目覚めになっていません。昨日の今日ですから、もう少し寝かせてあげましょう」

「たまー……」
「タマザラシ様には朝食をお持ち致します」
「たま!」

 部下と一緒にタマザラシは部屋を後にした。部屋の中では、二日酔いのリクが死んだように眠っていた。

( 2021/06/13(日) 20:17 )