ポケットモンスターインフィニティ

















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第二章 迫り来る脅威
第14話 佇む洋館
 木漏れ日の中、レジャーシートを広げて三人で腰を下ろしている。お昼ご飯の準備も済ませて後は食べるだけ、なのだが……。
「雲行きが怪しくなってきたな……」
 少し肌寒くなってきて、辺りも薄暗くなっていた。しかしまだ時刻は昼の三時頃、暗くなるには早すぎる。見上げると、いつの間にか空には重く暗い雲が広がって、輝く太陽はすっかり隠れてしまっていた。
 手のひらを広げてみると、ポツ、ポツと雨粒が手に落ちてくる。
「まずいな、どこか雨宿り出来るところを探そう」
 この様子だと雨足は更に強くなるだろう。そうなる前に、急いで三人は雨宿り出来る場所が無いか探すことにした。



 幸いにも、どしゃ降りになる前に良い場所を見つけることが出来た。それは良かったのだが、それでも幾分雨に降られたからか、少し体が冷えている。
「……ねえ、本当に入るの?」
 背後では、轟々と激しい雨音が響いている。だのに何を迷うことがあるのだろう。
「当たり前だろ、じゃないと風邪ひくぞ」
「それはそうだけど……。でも……」
 元々自分達は、雨宿り出来る場所を探していたのだ。目の前の最適な場所を前に、今更迷う理由が無い。
「……やっぱり、怖いよ」
 だが、ノドカはそう言って入ろうとはしない。……確かに、その気持ちは痛いほど分かる。
「……確かに少し、薄気味悪いところではあるね」
 普段ならば迷うことなく行動するソウスケも、今回はさすがにノドカの言葉に理解を示しているようだ。
 ……オレだって、本当はこんなところ入りたくは無い。こんな、不気味な洋館には……。

 ……目の前に重々しく佇んでいるのは、巨大な屋敷だ。老朽化が進んで黒ずんでいる木目や、来る時にちらりと見ただけだが、一部の窓は割れたままになっていたりと、この館は長い間放置されていたことが窺える。
 一応インターフォンを押してはみたが、当然のごとく反応は返ってこない。
 ……だが、このままここで立ちすくんでいては、最悪風邪をひいてしまう恐れがある。ならば行くしかないだろう。
「ええい、ままよ!」
「え、ちょ、ジュンヤ!?」
 決断は済ませた、後はそれに賭ける。重々しく佇む扉を思い切り引いて、ジュンヤはチュリネを抱えながら渋るノドカの腕を掴んで無理やり一緒に館に入った。
「……しかたない、僕らも行こう」
 ソウスケとダルマッカも彼らに続いて中に入る。
 床には真紅のベロワ生地の絨毯が敷かれ、天井には割れたシャンデリアが吊されている。
 中は当然だが薄暗く、天井の隅には蜘蛛の巣が張られていたり、照明が割れていたりと老朽化の跡が見える。だが、救いが無かったわけでは無い。
 こういう雰囲気の館ではお決まりのひとりでに閉まる扉、それが無かっただけでも少しは気が楽になった。
「ど、どうしよう。まるでオバケ屋敷だよ……」
 ノドカもチュリネも挙動不審な程に怯えながら辺りを見回している。そして突然家が軋む音が鳴って、彼女達は叫ぶ。
「お、落ち着け、野生のポケモンが住んでるんだよきっと!」
 オレも音にはぎょっとしたけど、正直それより叫び声の方に驚かされた。
「はは、相変わらずだねノドカ」
 ソウスケももはや怖がるよりも呆れるばかりだ。
「……よし、分かった」
 とりあえずこのままここに居てもいたずらに怯えるばかりだ、せめて人や野生ポケモンの有無は確かめた方が良いだろう。
「とりあえず……探索するか!」
 ……それに、廃墟と化した館、そんな場所に来たのが実感出来たからか何だか気分も高揚してきた。
「えぇっ!? 雨が止むまでじっとしてようよ!」
 当然ノドカは猛反対、しかしそんなの承知している。
「ああ、怖いだろうしソウスケとここで待っててくれ」
 とりあえず視界を確保したい。リュックから手探りで懐中電灯を取り出して、仲間をボールから解き放つ。
「行くぞイーブイ!」
「待ってくれ、ジュンヤ」
 意気揚々と歩き出そうとしたら呼び止められ、振り返ると同じく仲間のハーデリアと懐中電灯を構え、瞳を輝かせるソウスケが居た。
「……よし、行くかソウスケ!」
「……ああ! ごめんよノドカ、君とチュリネは嫌ならここで待っていてくれ」
 彼らはそう言い残して、青いジャケットと緑のブレザー、二人がどんどん薄闇の中へと消えて行ってしまう。
「ち、ちょっと待って、置いてっちゃやだよ〜! チュリネ、行こう!」
 こうして三人と三匹で、この廃館を探索することにした。

 まずは大広間を真っ直ぐ進んだ部屋に入る。
 どうやらここは食堂のようだ、ここにも絨毯が敷かれ、絹のクロスが引かれたダイニングテーブルの足元には割れた皿の破片や倒れた椅子が散っている。
「あーあ、こんなんじゃポケモン達が怪我しちゃうぞ」
 イーブイが皿の破片を危うく踏みそうになっていたので、「危ないぞ」と彼を抱え上げて肩に担いだ。
「とはいえどこに捨てればいいかも分からないし、とりあえず袋に入れて置いておこうか」
 オレが皿の破片を集めて、ノドカが広げてくれたビニール袋に纏めて突っ込んでおいた。
 次は食器棚だが、こちらも酷い有り様だ。皿が飛び散り棚自体も倒れている。
 更に冷蔵庫も既に開けられており、中身も乱雑に食い散らされた後や結局食べられず、腐った食品が残っていた。
 ……流石にこれは不気味だ。生活品が丸々と残されていて、まるで強盗にでも入られたような……。
「……次に行こうか」
 息を飲んで気圧される三人。しかしそんなこととは露知らず陽気に探索を望むハーデリアに鼻で小突かれて、ソウスケがいち早く立ち上がった。
 ジュンヤ達もそれに続いて、今度は大広間に出て向かって右手側から階段を昇って二階へと上がる。

 ……二階。吹き抜けの廊下は、数歩歩けば二メートル程の長方形の穴が見えた。そこから中を覗き込めば、何故か扉が床に倒れている。
 しかし部屋の中は存外無事で、書斎のようだが本棚も倒れておらず、元の姿を保っているようにも思える。
「何か無いかな……」
 廃墟なんだから、例えば本棚を動かしたら壁に穴があって、その中に黄金に光る蜘蛛が居たりとか。
 そんな下らぬ幼稚な思いつきでイーブイの心配を無視して本棚を押してずらしてみれば……。
 ……なんと、本棚の裏に拳大の穴が空いていた。
「これは……」
 覗いて見ると、その中には黒光りする丸い何かがある。手を伸ばしてはみるが手の骨がつっかえて微妙に届かない。
「ノドカ、これちょっと取ってくれないか」
 自分じゃどうにも取れそうに無い、彼女は快く了承してすんなり黒く光るそれを取って見せた。
「はい、ジュンヤ」
「ありがとな」
 彼女から受け取ったのは、闇のように暗い濁った紫の石だ。
「それは?」
「ああ、やみのいしだよ。珍しい進化の石さ」
 やみのいし、ある特定のポケモンを進化させることが出来る石だを
 とはいえ今はこの石に対応して進化するポケモンは居ない、鞄に入れてそれ以上の収穫は無い為部屋を出ることにした。
 そして二階、中央の扉をくぐると廊下……。
「きゃああっ?!」
「うわぁっ!?」
「うおおっ!!」
 ノドカ、オレ、ソウスケ。叫び声が見事な三重奏を奏でながら一気に一階まで駆け下りた、
「ま、まま待てちょっと待て! さっきのなんだ!?」
「なななにあれなに!? ……ほんとになに!?」
「おお落ち着くんだ素数を数えろジュンヤ、ノドカ! お化けなんて怖くない、お化けなんて嘘さ! きっとあれは……そうだ風で揺れてたんだよ!」
 三人は動揺しきっている。当然だ、自分達以外この屋敷にはいないはずなのに、横に広がる廊下にいくつも並ぶ扉の一つが突然激しく揺れたのだから。
「そ、そうだよな! よし、探索は中断するか!」
「そうだね、やめよっか!」
 ノドカの胸元で抱えられたチュリネもひたすら頷く。
「よしイーブイ、戻って……あれ?」
「は、ハーデリア?」
 大広間を見渡しても、食堂を覗いても、いくら呼んでも出て来ない。
 ……もしかして。嫌な予感が全身を駆け巡り、冷たい汗が噴き出してきた。
「ジュンヤもそう思うかい……?」
 オレ“も”。つまりソウスケも同じ予感がしているらしい。……きっと、オレ達は。
「……多分、イーブイとハーデリアを、置いてきたんだ……」
「……そうなるよね」
 彼らは大事な仲間だ。……ならば、腹を括って行くしかない。
「ノドカはここで待っててくれ。……行くぞ、ソウスケ」
 気合を入れて、赤い帽子を被り直す。
「……ああ、ジュンヤ」
 ソウスケも、緑のブレザーの襟を直して拳を握った。
「二人とも……絶対、無事に帰って来てね」
「大丈夫、必ず戻るさ」
 不安げに見上げてくるノドカの頭を撫でて、二人で顔を見合わせ頷き合った。
「イーブイ、ハーデリア、無事で居てくれよ……!」
 そして階段を駆け上り、先程の廊下まで振り返らずに走り出した。
 ……廊下に出た。相変わらずいくつも並ぶ扉の一つが、中から激しく叩かれている。
 だが先程と違うのは、今度は外側からハーデリアとイーブイが協力してドアノブに手を伸ばそうとしていることだった。
「やめろ二人とも! 良からぬ何かが出てくるぞ、離れろ!」
 とジュンヤとソウスケで二匹を扉から引き離そうとするが、必死に抗い離れようとしない。
「そんなにこの扉の向こうが気になるのか……?」
 その問いかけに、二匹は迷わず頷いた。……この扉の向こうに、一体何が……。
 良く聞くと、扉を叩く音に混じって何かが聞こえる。まるで、ポケモンの声みたいだ。
 ……まさか!?
「大丈夫か?!」
 扉を叩いていたのは幽霊ではなく、生きたポケモンではないのか。
 急いで扉を押し開けると、今の勢いで飛ばされたのだろう、扉の前にいたポケモンが倒れていた。
 窓からは強い雨風が吹き付けている、恐らく入ったは良かったが風で扉が閉められ、出られなくなってしまったのだろう。
 そのポケモンは、赤いほっぺに黄色の毛皮。ギザギザ形の尻尾を持つポケモンだった。
「……ピカチュウ!?」
 思わずモンスターボールを投げそうになったが堪えて、駆け寄り抱き上げる。
 ピカチュウは弱々しく声を発するばかりで、腕すら動かさない。
「おい、しっかりしろピカチュウ!」
 これは相当衰弱してるんじゃ……。まさかさっきのは最後の力を振り絞った必死の救助信号で……!
「どうすれば……!」
 その時、ピカチュウが大きく唸った。否、ピカチュウではない、今聞こえたのは彼の腹に潜む虫の声だった。
「お前……お腹空いてるのか?」
 ピカチュウが起き上がって元気に鳴いた。……良かった、この様子なら固形物を食べさせても大丈夫そうだ。
「ソウスケ、ノドカを呼んで来てくれ」
「分かった、行こうハーデリア」
 ポケモンフーズはノドカが持っている。彼女を待つ間、まずは柔らかいポフレをピカチュウにあげることにした。

 この部屋には、クローバーを模したエメラルドの嵌められたネックレスを付けた女性と白衣の男性、そして女性に抱かれた外跳ねの黒髪の赤ん坊が写った写真が壁に掛けられている。
 他にはベッドと机、棚だけの質素な部屋で、恐らく寝室だったのだろう。
 オレがピカチュウにポフレをあげているとノドカも来て、ピカチュウは無事ご飯を食べ終えてすっかり元気になった。
 今はお菓子を食べ始めて、もう四つ目だ。
「あはは、本当に良く食べるなお前」
 ピカチュウはついにそれも食べ終え、ついに五つ目にまで手を伸ばし始めた。
「さすがに駄目だ、食い過ぎは健康に良くない」
 とポフレの入ったバスケットを取り上げると、ピカチュウはしばらく責めるような視線を送って来たが諦めたらしく、大きく伸びをして飛び退る。
 見ていると、頬の電気袋からパリパリ放電を始めた。
「なるほど、食後の運動ってわけか。いいぜ、やるぞイーブイ!」
 後ろで苦笑いしながら見ていたイーブイが、突然の指名に肩を跳ねさせる。だが別に嫌というわけではないらしい、ジュンヤの前に進み出て構えた。
「狭いんだからバトルはだめ!」
 と、そこでノドカの静止がかかった。……正論すぎて、なにも言い返せない。
「……分かったよ。じゃあバトルはやめようピカチュウ」
 だがピカチュウは納得していないようだ。そしてこちらに駆け寄ってきて、床に置いていたポフレに手を伸ばした。
「バトル出来ないからってポフレを食べる気かよ、駄目だって」
 言いながらバスケットを取り上げるが……。……いや、待てよ。
「なあピカチュウ、お前ポケモンバトルと、このポフレが好きなんだよな?」
 脳裏に良からぬ企みが閃いて、悪代官のごとくピカチュウにポフレをちらつかせながら話しかける。
「オレ達と一緒に来れば強いやつとバトル出来るし、ポフレだって他のお菓子だってたくさん食べられるぜ。なあ、だからオレの仲間にならないか?」
 それは、ピカチュウにとっては苦渋の決断だろう。野生でのびのび育ってきた彼にとって、モンスターボールという未知の空間に入って過ごすことへは抵抗感だってあるはずだ。
 悪魔の囁きとも言うべきその言葉に、ピカチュウは悩……むことは無かった。彼は無邪気な声で、その勧誘に頷いて見せた。
「いいのかよ!?」
 実際はモンスターボールの中はポケモンが過ごしやすいように快適な環境となっている。しかしそんなことを野生のピカチュウが知っているはずはない。
 ……こいつ、お菓子とバトルで簡単に釣られたな。こんなにチョロくて大丈夫なのか……。
 目論見の通りとはいえ、ピカチュウのことが少し心配になってしまった……。
「本当にいいんだな、これからモンスターボールに入るんだぞ!」
 と念押ししても、「いいって!」と言わんばかりに前脚を振っている。
「……分かった、行くぜ。はい、モンスターボール」
 ピカチュウの目の前にモンスターボールをかざすと、彼は自らその開閉スイッチを押した。
 赤い光とともにピカチュウを飲み込んだその球は、数度揺れると静止した。
「……よ、よーし! ピカチュウ、捕獲完了!」
 ピカチュウ、それでいいのか。そんな想いが無くはなかったが、とにかくこれで目的のピカチュウはゲット出来た。
 よし、探索を続けよう。



 ……どの部屋も、老朽化や野生ポケモンによる探索の跡があったとはいえだいぶ生活感が残っていた。それはまるで、生活が突然途絶えたかのような、そんな想像が浮かんでくる程の様子だった。
 そして何より目を引いたのが、一冊のハードカバーの日記だ。表紙には、丁寧に名前が書いてある。
「リュウザキ ミツノブ……」
「どこかで聞いたことがあるような……」
 その名前には、聞き覚えがあった。
「思い出した、スタンさんが話していた……」
 ソウスケのその一言で、オレもノドカも気が付いた。
 リュウザキ ミツノブ。それはスタンさんから聞いた、「13年前の爆発事故」を起こした張本人、マッドサイエンティストと呼ばれる研究者「Pr.リュウザキ」その男の名であった。
 ……まさか、この屋敷が。いや、
「とりあえず読んでみよう……」
 鳥肌が立つのを感じながら、オレはその日記を慎重に開いた。
 ……どれだけ狂ったことが書かれているんだ。覚悟を決めて読み始めた、のだが……。
「……これも、これも、これも。これもだ」
 ……彼の日記の内容は。
「ツ……かわい…。最…一人…立て…ようになっ…」
あるページではこう書いてあり、またあるページでは
「赤……んって本…に…わい……だな。いや、私の………がかわい……るだけか……れな…」
 など、ところどころが掠れて読めなくなってはいるが、一つだけ伝わってくることがある。
「どこを見てもかわいいばかりだ……。Pr.リュウザキ、親バカすぎだろ……!?」
 どのページを捲ってみても、書いてあるのは息子であろう、赤ちゃんのことを褒め称える内容ばかりだ。
「これじゃマッドサイエンティストじゃなくて、ただの親バカじゃないか……!」
 理不尽なのを分かってはいるが、湧いてくる怒りを抑えられなかった。こんなに良い人そうな男が、どうしてあんな事故を……!
 想像とのギャップから生じるそんな違和感が、頭にこびり付いてしまう。
「僕にも見せてくれないか」
 ……。
「……うん。なんて言うか、目が滑る内容だね」
ソウスケも反応に困って、それだけ言って日記を閉じてしまう。
「私も見る!」
「覚悟しとけよ。なんていうか、キツイからさ」
 ……だが、ノドカは存外真面目に読み始めてしまった。
 …… …… ……。

「……ねえ、ジュンヤ」
「ん、読み終わった?」
「……うん。それでね、それ……」
 しばらくピカチュウとイーブイを遊ばせながらノドカを待っていたら、彼女が声を掛けてきた。返事をしてから、彼女の声が相当な真剣味を帯びていることに気が付く。
「一番最後のページが裏表紙にくっついてたから変だなって思って、剥がしてみたんだけど……」
 ノドカから日記を渡されて確認する。そこに残されていたのは、それまでとは全く違う内容の手記。
「○月△日
 ……本当に、私達の研究は正しいのだろうか。確かにこのプロジェクトが成功すれば、人々の暮らしは確実に豊かで恵まれたものとなるであろう。だが……。
 仲間達を疑いたくはない。しかしどうしても、私達の中の誰かに悪意が潜んでいて、その誰かに研究の成果を悪用されるような気がしてならない……。
 そもそもこの研究自体も未だ危険性を内包している。先月の爆発事故では幸い死傷者は出なかったが、もしあれが更に大規模なものであったならば……。
 危険性を取り除くのも私達の仕事ではあるが、彼の言う通り、研究を続けて本当に問題は無いのか……?」
 ……そこで、文は終わっている。
「……なんだ、これ」
 ジュンヤもソウスケも、暫時は呼吸を忘れる程に見入ってしまっていた。
 これはリュウザキ本人の日記だ、筆跡からも間違いは無い。あの爆発事故を引き起こした張本人とも言われる、狂った男。
 しかしそこに書かれていた内容からは、プロジェクトを危険視しているようにしか感じられなかった。そんな人物が、大事故を引き起こす程に暴走してしまうのか……?
 必死に頭を働かせてはみるけど、オレには納得のいく答えを導きだせない。それに、もう一つ気になることがあった。
「……“彼”って、一体誰なんだ」
「僕もそれは気になったよ」
 リュウザキのこの書き方だと、むしろ“彼”の暴走により事故が引き起こされたようにしか思えない。
 ……しばらくの間、重苦しい沈黙が続く。
「……あ、雨があがってるよ!」
 光の差し込む窓際で、ノドカが嬉しげに飛び跳ねた。隣に立って覗いてみると、黒雲は未だ影を残しているものの、再び空を覆うことはなさそうだ。
「じゃあ、行こうか。早く街に着かないとすっかり暗くなるぞ」
「そうだね、行くよハーデリア」
 今事件について考えたってしかたない、答えが出るはずはないんだ。とりあえず日記は元の場所に戻して、オレ達は不気味な洋館を後にした。

■筆者メッセージ
現実だと、いくら廃墟だからって勝手に物を取ったりしたら犯罪ですよ。ジュンヤはポケモン世界の人間だから許されるだけなので、皆さんは彼みたいなことをしないでくださいね
後変な数字の羅列があったので訂正しました
せろん ( 2015/04/04(土) 01:03 )