ポケットモンスターインフィニティ



















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第十五章 闇を裂く星辰
第128話 たとえ世界が滅ぶとも
 オルビス団の本拠地たる『剣の城』、名の通りの剣に例えれば鍔部に当たる幹部以上の者のみが立ち入ることを赦された特別区画。世界の存亡が賭かった運命の日にシャンデリアに照らされた戦場で向かい合うのは、幼い少女と幹部たる女性。
 かたや濡羽烏の艶やかな長髪を靡かせ純白のワンピースをまとう、ツルギの相棒を自称する幼い少女サヤ。対するは白髪のボブ、黒衣に身を包んだオルビス団幹部の地位を戴く女性クリスだ。
 ルールは三対三のフラットバトル、勝てば先に進めるという単純明快なもの。お互いに一撃浴びてポケモンを交代し、此処から仕切り直して新たな戦いが始まる。

「……どうしてですか」

 手にしていたモンスターボールを強く握り締め、肩を震わせながらサヤが絞り出すように呟いた。その瞳には遣り場の無い憤りと深い悲しみが映されていて、意を決して言葉が続けられていく。

「あなた達はこんなに強いのに、優しい人の筈なのに、なんで誰かを傷付けたり……ひどいことをするんですか!?」

 まだ彼女達とは出会ったばかりだが、それでも戦いを通して多少なりとも伝わって来た。少なくともポケモンに掛ける言葉にだけは偽りが無い、本心から彼らを想っているということはよく分かる。
 ──何故、その優しさを身内や手持ちだけでなく他者に向けてあげられないのだ。彼女から強い憎しみなど感じないのに、何故世界を滅ぼさんばかりの悪行を働く者達に与しているのか、と。まだ幼い少女にはとても理解出来なくって。

「……私達は皆、ずっと一人だった。オルビス団はそんな私やこの子達に居場所をくれた、理由はそれだけで十分よ」

 カプセルの中で暫時の急速に丸くなって身を休めているガラガラを慈しむように眺めながら、幹部はぽつりと呟いた。
 今でも覚えている、この子と初めて出会った日のことを。まだ当時進化もしていなかったカラカラは母親を密猟者に殺されて、彼女の身体が朽ちて白骨化してもなお側でうずくまり続けていて。
 ──きっと、幼い心に母の死を受け止め切れなかったのだろう。たった一匹で食事も摂らずに泣き続けて、彼を見つけたクリスとシャンデラは隣に寄り添って語り掛け、それから泣き明かした幾夜を越えるとあてどない旅路にカラカラという新たな仲間が加わって。

「だからってこんなことしなくっても……!」
「世界を敵に回しても、あのお方達に報いたい。それに今在る世界にどうしても未練なんて抱けない、だから……申し訳ないけれど退けないわ」

 きっと、自分がこの世界を好きになれるような優しい人ならまた違う道も選べたのだろう。けれど自分は嫉妬深く、罪深く、他者を慮ることの出来ない心無い人間だ。
 今更未練も躊躇も引き返すつもりも一切無い。ポケモン達と共に何処までも堕ち続けていく覚悟は出来ている。

「そう……なんですね」

 ……彼女の吐き出す言葉から、氷の瞳に湛えた失意と憧憬から嫌でも伝わって来た。かつてガラガラの味わった深い悲しみも、彼女達の苛まれた孤独も、譲れぬ覚悟も胸が痛くなる程に。

「それでも……あなた達を、本気で倒します! わたし達も、ツルギの為に!!」

 結局のところ自分も彼女もそう変わらない、どうしようもないエゴイストなのだ。ただ自分達を救ってくれた恩師に報いたいだけで、立つ場所が違うだけで……世界の存亡なんて結果齎される副産物に過ぎない。

「嘘でも『世界を守る為に』とか言わない辺り本当に素直ね」
「……た、たしかにそうかもです……」
「良いわ、その方が私も安心するし。世界なんて人が背負うには重すぎるから」

 けれど──だからこそ選んだ道に一点の曇りも無い。この先にどんな未来が待ち受けていようと、大切なもののことを思えば譲ることなど出来やしないのだ。
 一歩踏み出した少女の曇りなき瞳が淡く薄金に瞬いて、幹部は無感動な冷眼で戦場を睥睨して、腰に装着されたモンスターボールを力の限りに握り締める。

「次は……来てください、トドゼルガ!」
「貴方に任せたわ、アブソル!」

 叫んだのはほとんど同時だった。投擲された二色の球が色の境界から割れて、その内より溢れ出す眩い光が空に迸り新たな影が顕現していく。
 赤光が巨躯の影を象り、地を震わすかのような低い唸りと共に粒子を払い戦場に現れたのは、発達した二本の牙に全身を分厚い脂肪の鎧に覆われた海の如く青い海獣。
 大きな牙で氷山を砕きながら氷点下の海を泳ぎ回り、ぶ厚い脂肪で外敵の攻撃を跳ね返すこおりわりポケモンのトドゼルガ。
 対するは天に反り返る三日月の角、全身を柔らかな白毛に覆われ人面に似た黒き貌で、華奢に見える四肢で大地を踏み締める白獣。
 天変地異を感知する能力を持ち、人前に現れれば必ず地震や津波などの災害が起きることで恐れられたわざわいポケモンのアブソル。

「先んずれば人を制す。行きましょうアブソル、つじぎり!」

 圧倒的な体格と総合的な能力の差、だがそれだけで結果が決まる程ポケモンバトルは甘くない。暫時緊張を孕んだ睨み合いが続き、張り詰める静寂を切り裂いて動き出したのは幹部たる女性クリスとアブソルだ。
 白獣が湾曲した角に力を収束させて、ふっ、と軽やかに地を蹴れば逞しい四肢で猛然と戦場を駆け抜けた。

「それならわたしたちは……後の先、です! 迎え撃ってトドゼルガ、れいとうビーム!」

 対するトドゼルガが口を開けると冷気が粒子となって収束していき、一切を凍て付かせる光線となって向かい来る対敵目掛けて迸る。
 しかし鍛えられた白獣をそう容易くは崩せない。迫り来る技に対して首を傾け角の側面を滑らせることで冷凍光線の矛先を逸らされ、ならばとれいとうビームの軌道を変えて大地を穿てば、幾つもの氷柱が道を阻むように突き立てられるがそれも一閃の下に容易く切り捨てられてしまう。

「何かある……いえ、行きなさい!」
「ごめんなさいトドゼルガ。少しだけ、耐えてくださいね」

 障壁など容易く越えて眼前に躍り出たアブソルが三日月の刃を振り下ろし、対する敵の胸部を渾身の力で袈裟斬りに切り裂いて──ここまでは狙い通りだ。
 たとえ急所に当てられても全身を覆う脂肪の鎧故に大したダメージになどなりやしない、逃がさないと言わんばかりにアブソルを見据えて海獣の双眸が力強く見開いた。

「今ですトドゼルガ、ゆきなだれ!」
「これを喰らうわけにはいかない、みがわりよ!」

 相手は小柄で技量にも優れ、攻撃を当てるのは容易いことではない……ならば機が訪れるまで待てば良い。受けた痛みを力に変えて、頭上に収束した夥しい白雪が塊となって渦を巻き、容赦の無い雪崩が降り注いでいく。
 しん──と静まり返った戦場に風切り音が空を裂く、見上げた時には眼前で振り抜かれる三日月の黒刃。咄嗟に飛び退り僅かにタイミングをずらしたアブソルは、雪崩に呑まれる寸前に体力を削り身代わり人形を生成し離脱していたのだ。

「もう一度つじぎり!」
「受け止めて、ください! こおりのキバ!」

 猛然と戦場を駆り瞬く間に眼前へ躍り出たアブソルが湾曲した刃を振り翳し、ならばと構えた海獣が氷塊をも容易に砕く大牙で迎え撃つ。
 アブソルはこの小柄な身体では想像出来ない程の高い攻撃力を持つが、体重の差は大きい。それでも大地を踏み締めることで衝撃を堪え歯を食い縛って食い下がる。
 何度と火花を散らしてぶつかり合う黒刃と大牙、一歩も譲らぬ鍔迫り合いだが……あまりにも顕著な体格の差に次第にトドゼルガが押し始めた。
 此処で退けばすかさず一撃が放たれるだろう。それでもこのまま消耗を続けた上に切り崩されるならば、と大牙が頬を掠めた瞬間アブソルは地を蹴り素早く背後へ跳躍する。

「なみのり、です!」
「此の程度……もう一度みがわり!」

 無論──サヤにもそれが見えていた、すかさず海獣が吠えると地の底から溢れ出す波濤が容赦無き高波となって白獣目掛けて押し寄せていく。
 必死に体力を削り生み出した身代わり人形などお構いなしに呑み込んで、半ばの焦燥と共に離脱して上空から睥睨するアブソルと歯を打ち鳴らして睨み付けるトドゼルガの視線が交錯した。

「……よくもやってくれたわね。お返しよ、かみなりを喰らいなさい!」
「れいとうビーム、迎えうちますっ!」

 先の鍔迫り合いから二匹の距離は打って変わって遠ざかり、なお戦いは止まることなく進み続ける。
 体勢を立て直したアブソルが黒角を翳して雷鳴を轟かせ、対するトドゼルガは砲口に冷気を収束させて、同時に放たれた技が戦場に広がる空間の中心で正面から激突。
 激しく迸る紫電の束と冷たく煌めく光線が天地の狭間で鬩ぎ合い、宙を焦がし地を凍て付かせながら激しく火花を散らして拮抗するが──やがて衝突する力に耐え切れずどちらともなく炸裂。
 舞い上がる爆風が視界を覆うが、迷い無く駆け抜けたアブソルが吹き荒ぶ砂塵の幕を突き抜けて二匹の距離は目と鼻の先。

「此の距離なら躱せないでしょう、つじぎりよ!」
「このままやられっぱなしなんて……イヤです! トドゼルガ、もう一度なみのり!」

 トドゼルガの何よりの強みはその身体に蓄えた有り余る体力だ。分厚い脂肪の鎧の上から深く急所を切り裂かれ、怒号を響かせて痛みを圧し殺すと瞬間地面から溢れた水流が波濤となって柱の如く噴き上げていく。
 白毛に覆われた身体がいとも容易く蒼き奔流に押し流されて空中へ打ち上げられてしまうが、舞い散る水飛沫の中ですかさず体勢を立て直した時には既に三日月角に数億ボルトもの膨大な電流が迸っていた。

「……そう、けれど此の程度では私のアブソルは倒せない。かみなり、連続で放って!」
「速っ──! トドゼルガ、れいとうビームで防御ですっ!」

 渾身の力で振り払うと同時に降り注ぐ幾重もの雷撃。咄嗟に放った冷凍光線により自身の周囲を覆う半球の防壁を展開するトドゼルガだが、ツルギが訝しげに眉を顰める。
 眩い閃光を伴い駆ける電撃は防御を貫くには至らない。遅れて雷鳴が轟いて、次の瞬間には硝子が割れるにも似た音を響かせて容易く氷壁が砕け散った。

「これでようやく袋小路ね。渾身の力で放ってアブソル、ばかぢから!!」

 瞬発力に欠けるトドゼルガでは退くに遅く、迎え撃つにも間に合わない。瞬間橙色に輝く宝石“かくとうジュエル”が光を散らし、アブソルが掬い上げるように振り上げた三日月の角が鈍重な身体を吹き飛ばした。
 きっと、それは堅牢なる鋼に抗する為の力なのだろう。かくとうタイプの中でも屈指の威力にジュエルで威力が上乗せされて、華奢な白獣の身体からは想像も出来ない程の筋力により放たれた一撃はいくら厚い脂肪の鎧を誇るトドゼルガであろうと軽傷では済まない。

「これでおしまいね、その身体では空中で動けないでしょう。かみなり、トドゼルガを芯まで焼き尽くして!」

 そして背中から天井に激突してなお収まらぬ威力で天面にめり込み、一呼吸を置いて重力に身を委ね落下する海獣に幹部と白獣が容赦無く叫んだ。
 ──海獣が怒号を響かせて、意識を掻き消さん程の痛みを無理矢理堪える。二度に渡る“つじぎり”だけではなく、またも急所を穿たれてしまったのは恐らくただの運などではない。急所への命中率を上げるアブソルの特性“きょううん”と研ぎ澄まされた技術による必然だろう。
 そして今にも放たれんとするのは、でんきタイプ最大級の威力を誇る大技にして効果抜群の一撃。三度の急所により自慢の体力を根こそぎ削がれてしまった今のトドゼルガでは次の直撃に耐え切れない。
 だが──サヤもそんなことなど百も承知している。だから自分のアドバンテージを最大限に活かしてあえてこの状況を作り出したのだ。

「やっと、です。耐えて、耐えて……ようやくチャンスが巡って来ました!」

 ばかぢからを放たれる直前、いつでも放てるようにと念話で指示を送っていた。勝機はこの一瞬しかない、この刹那に攻防の全てを賭けて──受けた痛みが溢れ出す力に変わっていく。

「今ですトドゼルガ、これで……決めます! ゆきなだれ!!」

 そして、その名が表す通り見上げた視界を覆い尽くす程膨大な雪量にアブソルが思わず絶句した。解き放たれた雪崩は咄嗟に撃ち出した雷も、この広い戦場も、視界に映る何もかも──一切のものを容赦無く純白で覆い尽くしていった。

「……そう、此処まで計算済みだったのね」

 ぽつりとクリスが呟き──景色は白煙に覆われて閉ざされていたが、暫時の静寂を経た後にようやく戦場が元の光景を取り戻していく。
 雪が溶け、視界が晴れて、果たしてその先に在ったのは……力尽きて広大な戦場に倒れ伏す意識を失ったアブソルと、重々しく鎮座し白い息を吐くトドゼルガの姿だった。

「ごめんなさいアブソル、私のせいで。よく頑張ってくれたわね、ありがとう」

 瞼を閉じて眠りについた友に憂いげな溜息を吐いてから、モンスターボールを翳したクリスが優しく穏やかな声色で語り掛ける。溢れ出した閃光は温かくアブソルを包み込み、その身体は粒子となって安息の揺籃へと誘われて。
 これでついにアブソルが戦闘不能。クリスに残されたポケモンは初陣を担ったガラガラを含めて残り二匹だ。

「……懐かしいな。貴方と出会った時のことは今でも鮮明に思い出せる」

 瞼を細めた女性の氷の瞳が僅かに揺れて、紅白球の中で穏やかに眠る彼に思い出を辿るように語りかける。
 アブソルと出会ったのは、自分が仲間達と旅をしている最中に立ち寄った海岸沿いの寂れた村でのことだった。天変地異を予知して現れるアブソルを見かけた私はその村も近い未来災害に呑まれるのだと知り、彼とポケモン達と共に村人に警戒と避難を呼び掛けた。
 けれど彼らはそれを信用しなかった。いや──むしろ、私達が居ることこそ凶兆だと非難した。それも当然だ、災いを齎すと伝承されるポケモンと、相棒に生命力を吸われ続けて死体のように青い肌、生気の無い白髪になってしまった女のことなど誰も信じられる筈がない。

「貴方は……最後まで諦めなかった」

 諦めて彼らを見捨てようとしたわたしと違ってアブソルはそれでもと奮起した。たとえ虐げられても、口汚く罵られても、人々に必死に呼び掛けて……その甲斐も虚しく、降り掛かった災害によって村は暗き水底に沈んでしまった。
 生き残った人々は遣り場の無い怒りと悲しみから私とアブソルを糾弾した。……その村はかつて、彼の何世代も遡る親のアブソルに救われて以後畏れられ大切にされてきたらしい。
 程近い山に暮らすアブソルはそんな経緯故に村人達を見捨てたくなかった。それでも時を経て変わってしまった者達を救うことはできなかった。
 怨嗟と慟哭を背に駆け出し失意の中にあったわざわいポケモンにわたしは声を掛けた、『居場所が無いのなら、私達と行かない?』と。彼は未だ晴れない心のままに頷いてくれた、それからはずっと一緒に旅を続けて来た。

「……ええ、大丈夫。あとは私達に任せてちょうだい」

 意識を失って眠り続ける仲間が少しでも安らかに眠れるようにそう笑いかければ、声が届いているのか無意識か、その口元には微かに笑みが浮かんでいて。
 改めて心の中でありがとう、と感謝を告げてから腰に装着したクリスは、白髪を掻き分けて対峙する少女に「まさか先に切り崩されるなんてね」と苦笑混じりに向き直った。

「駄目ね、貴女のことを無意識に侮っていたのかしら」
「わたしも、そうかもしれないって思います。きっとツルギが相手なら、あなたもこんなの喰らってくれなかったから」

 まだアブソルにはあともう一度だけ“みがわり”を放つ余力があった。もし最後の局面で攻勢に出ず守りに徹していたら先に倒れていたのはトドゼルガだろう。
 無論三対三のポケモンバトルにおいて、あそこで勝負に出るのは体力の温存という意味でも決して間違った選択とは言えない。それでも……もし対戦相手がツルギで同じ場面があったとしたら、彼女は確実に警戒して追撃ではなく“みがわり”を優先しただろう。

「それにしても……その歳でよく此処まで強くなれたわね、貴女」
「ツルギにたくさん鍛えられました、から!」

 それは本人すら気付かなかった幼子故の油断か、倒すべき敵としてツルギを見据えている故の焦燥か、あるいは……そのどちらとも異なる理由かもしれないが。
 なんにせよ彼女が本来の実力を発揮していれば、きっと此処で返り討ちにすることはできなかった。
 得意げに言い放つサヤに此処まで一言も発せず見守ることに徹していたツルギを見遣れば、彼は鬱陶しげに眉間に皺寄せてどこか遠くを眺めていた。

「……良いコンビね、貴方達」
「そうなんです。わたしはツルギのアイボー、ですから!」

 あえてダメ押しをすればツルギは最早諦めたように溜息を吐いて、腰に装着された紅白球を握り締める。強い信頼と感謝を向けられていることは当然彼も理解しているのだとは思うが、恐らくこの純粋さとちょっとのずるさが時折面倒になるのだろう。

「けれど此処からはわたしも本気、二度と同じ轍を踏んだりしない。覚悟することね」
「そんなの、とっくの昔に出来てます。ツルギと出会った……あの日から」

 先刻までの何処か優しさを感じる声は形を潜めて、冷たく言い放つ幹部に臆することなく少女は答えた。彼の為なら死ねる、それは比喩では無く何の隠し立てもない本当の気持ちだ。
 自分は何度もツルギに救われた、彼が居るから今まで生きて来られたのだ。本来なら既に失っていた筈の命だ、己がどんな結末を迎えようと……彼の願いを果たす為なら、投げ出すことなど惜しくない。
 だから、と強く拳を握り締める。懐に隠していた“オボンのみ”を食べたトドゼルガは嬉しそうに頬に右前脚を当てて、ひとしきり味わった後に立ち塞がる幹部を主人と共に力強く睨みつけた。

■筆者メッセージ
サヤ「これで先手を取りました!ちょっとリード、ですっ」
クリス「してやられたわね…貴方が子どもだからって侮ってたみたい」
サヤ「うれしい、このまま勝ちますよ!サーナイト!」
クリス「私達もそう簡単に負けるつもりはないから」
ツルギ「…自惚れるなよ、サヤ。実力では完全にお前が下回っている、油断していればたちまち足を掬われる」
サヤ「わ、分かってます!油断なんて、してな…」
ツルギ「その上擦った声を聞くだけで分かるさ。調子に乗るなよ」
サヤ「う、うう…クリスさん!正論しか言わない人どう思いますか!?」
クリス「私に聞くの!?…そ、そうね。こんな幼い子にあまり強く言うのもどうかと思うわ」
ツルギ「鬱陶しい、だったら早くそこを退け。嫌なら口を挟むな」
クリス「…そうね…」
サヤ「…でも逆に言えば、真面目にやれば勝てなくもない!ってこと、ですよね!ツルギ、信頼に応えてみせます…!」
ツルギ「(無言)」
せろん ( 2022/03/10(木) 19:13 )