ポケットモンスターインフィニティ
















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番外編
特別な日で、特別じゃなくて
 穏やかな陽が降り注ぐ昼下がり。野暮用で久方ぶりに再会した二人は買い物を終えて、宿に戻ると日当たりの良い窓際の椅子に腰掛ける。

「あ、ねえジュンヤ、それ!」
「ああ、ポッキー。安売りしてたんだ」

 開け放たれた窓から吹き込む風が二人の髪を柔く弄び、困ったように笑いながら咥えていた菓子を飲み込むと少女は嬉しそうに微笑み掛けてきた。

「そんなに物欲しそうに見てもあげないぞノドカ、『最近少し丸くなってきてねえか?』ってレンジに言われたばかりじゃないか」
「ち、ちがうよぅ! ただあなたがポッキーなんてめずらしいなーって思って!」

 本当に違うのか、訝しげに見つめると「……ごめんなさい、ちがいません」と白状したが、……確かに普段はこういうお菓子は食べない、ただの気まぐれだったのだが、そこまで物珍しく映るのだろうか……?

「さあジュンヤ君、問題です!てれれてんっ!」
「え、どうしたの」
「何故今日はポッキーが安く売られていたのでしょうか!」
「え? ……発注ミスで在庫を仕入れすぎてしまい、定価では在庫が掃ける目処が立たなかった?」
「ぶっぶー、不正解!」
「そうだな……じゃあ新発売の商品をまずは安値で売り出して、多くのお客様に味見いただく為! とかどうだ!」
「……た、たしかにそしたらみんな買うとは思うけど、ちーがーいーまーすー!」

 ……なかなか難しい問題を出してくるな。だけどノドカが出してくる問題ということは、そこまで難しくはないはずだ。
 次々に見当違いの答えを出しては撃沈するジュンヤに、ノドカは呆れたように「じゃあ!」と問題を切り替えた。

「え、ええと、さっきの答えは?」
「良いから! 次の問題です、今日は何の日でしょうか!」
「世界平和記念日だろ。感謝しないとな、こうしてお前と穏やかに過ごせることに」
「うが〜……! うれしいけどちが〜う!」

 それからしばらく少女は「あ〜……でも」だの、「うう、どうしよ……!」だの一人でもごもごと唸った後に、……しばらくの静寂。
 そしてようやく何かを決意したのか、何かを堪えているかのような少し潤んだ瞳で見上げてきた。

「ジュンヤ、今日は……その、ポッキーの日! なの!」
「ああ、そうなんだ。面白いな、1をポッキーに見立ててるのかな」
「だから……って、はあ、もういいよ〜」

 だが……流石は大切なものを守る為に、と鍛え続けてきた少年。世間のイベントには割りと疎くて、ここからポッキーゲームの話をするのは難易度が高すぎる、と諦めた。
 せっかく、勇気を出したのに。恋人らしいことなんて何一つできず、がっくり肩を落としていると。

「はいノドカ、残りはあげるよ」
「え? ……ジュンヤ、私が食べたら元気出るって思ってない?」
「……ソ、ソンナコト、オモッテナイヨ」
「もう……。なんでもない、えへへ、ありがとねジュンヤ!」

 ……いつもと変わらないその優しさが。人のことを言えないくらい分かりやすい素直さが、いつも通りで簡単にほだされている自分もいて。

「あれ、そういえばポッキーの日がどうしたんだ?」
「えへへ、なんでもない!」
「い、いやでも何か言いたげだったろ!」
「なんでもあるけど、何でもないの! まだまだ子どもなんだから、ジュンヤには早いです〜」
「ええーっ……!」

 だけど、今はそれで良いのかもしれない。これから変わっていくのかもしれないし、少しずつ変わっていくかもしれない。なんにせよ、あなたといっしょならそれだけで幸せなのだから。

■筆者メッセージ
うちの子の主人公ジュンヤと、ヒロインのノドカのポッキーの日話を書きました!日付変わったら多分寝てるので、少し早いですが投稿します!付き合ってる前提な上にポケモン出てこなくてすみません!
せろん ( 2019/11/10(日) 20:47 )