ポケットモンスターインフィニティ

















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第九章 反逆の旗を掲げ
第74.6話 円環の軌跡
 彼らにとっては、一も百も大差はない。オルビス団という大樹の幹はそう容易く折ることなど出来ず、その暴威の前では幾重の刃も意味を為さない。
 青き鋼兵……エドガーの相棒メタグロスは、破壊の神の化身と畏れられ、逆鱗に触れれば終焉を齎すカイリューに匹敵し得る力を秘めた強力無比なポケモンだ。一度動き出せば地形を変え、災害級の被害を起こすことなど容易く、

「束で掛かろうが私の相棒には届かないさ。ヴィクトル様の命だ、殺しはしないが、一掃させてもらおう。メタグロス、ラスターカノン」

 ましてや、ただのポケモンでは敵うわけがない。
 迫り来る業火を、降り注ぐ稲妻を、眩く輝く太陽光線を一身に浴びても、彼の鋼鉄兵は揺らがない。厳かに脚を踏み出し、口を開くと白銀の波動が渦を巻く。視界を覆い尽くす程の夥しい光が刹那に閃き、一線薙ぎ払われれば忽ちポケモン達は意識を焼き払われてしまった。

「フフ、容赦ないよね、エドガーくんってばいつだってゼンリョクなんだもん。さ、ボクたちもやっちゃおう!」

 指示と共にゾロアークは凄まじい速さで駆け抜けて、雨のように降り注ぐ岩雪崩や水弾、氷柱を抜き去り、飛び交う風や鋼の刃をすり抜ける。
 追尾してきた無数の必中技すら「みきり!」と紅く閃く眼で容易く躱し、敵陣深くに切り込んだ化け狐が跳躍するとその指先に黒く渦巻く闇が収束していく。

「ゾロアーク、あくのはどう!」

 瞬間、縦横無尽に回転しながら放たれた渦巻く漆黒の光線が無造作に周囲へ撒き散らされて、無数のポケモンが意識もろとも闇に呑まれてしまった。

「さーて、エドガーくん、残り何匹かな?」
「今の一幕で79匹が瀕死になったからね、これで143匹だろう」
「アハッ、さっすがボクたちに刃向かってきたポケモントレーナーたちだ! エドガーくんのメタグロスでも、一撃じゃたった42匹しか倒せないなんて!」
「なに、レイの倒した37匹に比べれば質では劣るさ。もっとも……」
「そうだねエドガーくん、次でぜーんぶおしまいだ! さ、行くよーゾロアーク!」

 そう無邪気な声色で相棒に声を掛けるレイの瞳は磨り硝子のようで、感情などは覗き込めず。エドガーもただ義務的に対する勇士達を見据え。

「サイコキネシス」
「ナイトバースト!」

 ある者は闇に呑まれ、ある者は凄まじい力で脳を直接握り潰されるような感覚に卒倒してしまう。
 ほんの一瞬だった、全てが終わるには……それだけで良かった。



 剣の城の中枢、全ての動力が収束する心臓部。
 闇のように深く、黒い大広間は無数に伸びる蒼い光の回路が明滅している。全ては最奥に佇む巨大な金属の円筒に集束しており、その根本に在る金を基調とした玉座には……一人の男が鎮座していた。

「終わったよーボス。やっぱりボクたち最高幹部には勝てなかったけど、フフ、思ってたよりがんばってたよ!」
「ヴィクトル様、貴方へと刃向かう挑戦者達の掃討は完了しました。集結したおよそ千人の内半数届かない程度がアイクのサザンドラのりゅうせいぐんに畏れを為して逃走し、投降した者は……」

 鷲鼻で、黒衣に身を包んだ巨躯の壮年。ヴィクトル・ローレンス、かつてエイヘイ地方に住む誰からも憧れられた元チャンビオン。
 玉座で脚を組む彼の隣には相棒である鮫竜ガブリアスが佇んでおり、足下では二人の幹部が膝を付いてかしづき先程までの一幕を報告していた。

「そうか、御苦労だったなエドガー。しかしレイ、貴様も相変わらずだな、隙有らば部下を増やそうと画策する」
「アハッ、ボスってば意地が悪いこと言わないでよ! ボクがなんのために部下を増やしてるか分かってるクセに〜」
「無論理解しているとも。だからこそ私は貴様を高く評価している、実力も服従もな」
「さっすがボス!」

 厳かに言葉を紡ぐヴィクトルにも、レイは変わらぬ口調で語り掛ける。その隣で静かに見守っていたエドガーだが、ふと抱いていた疑問を首領へぶつける。

「しかし良かったのですかヴィクトル様、私達が退けて。彼らこそが貴方の求めていたもののはず」
「生物は窮地にこそ真価を発揮する、人もポケモンもそれは同じだ。確かに吉兆ではあったが、私が出るには時期早尚だ。最強であるチャンピオンに挑むにはまず四天王を倒してから。ふふ、古くからの約束であろう」

 エイヘイ地方の中心で悪の玉座に君臨する己へと立ち向かう、無数のポケモントレーナー達。頂から見下ろしていた景色を振り返り、さぞ嬉しそうに口元に笑みを湛えていたヴィクトルだが……先程から胡座をかいて興味無さげに報告を待っていた彼が、ふと一つの違和感を呈した。

「おーいおいヴィクトル、おれらは三人、四天王には一人足んねぇじゃねえのー?」
「口を慎めと何度言えば分かる、アイク。……いや、君は何度言われようが理解できない単細胞だったな」
「あー? 売られた喧嘩は買って、勝ってやるぜえ、エドガーよぉ」
「あーもう、やめてってば二人とも!」

 敬意の欠片も見えないアイクに、忠心たる彼は募る苛立ちを直接ぶつけて、レイが慌てて仲裁に入る。そんな幹部三人の様子に笑みを零しながら……頂点は、この先の未来を見据えて疑問に返答した。

「形式は重んじられるべきだが、貴様ら幹部共に匹敵する力の持ち主とはスタンを除き巡り会えてはいない。混沌の中に芽吹く種を、気長に待つとしようではないか」

 最終兵器『終焉の枝』……総てを灰塵に還す究極の力。野望の成就はもう間もなくだ、求め続けた未来へ手を伸ばし、掴み取る日は足音を立てて近付いている。
 彼は深く弓形に、心底愉しげな嗤いを湛えて金属の円筒……『終焉の枝』を振り返った。

「……もうすぐだよ、ジュンヤくん。ボクは絶対、一人でも多くを護り抜いてみせる」

 兵器の動力となる一匹のポケモン、ビクティニは未だ囚われたままであり。レイは瞼を細めて、そう呟いた。
 


****


 時刻はもう間もなく日付を跨ぐ。激闘も終わり、各々動ける者は鍛練に励み……残された日付は、十二日へと近付いていた。
 赤い絨毯、絵画や壺などが飾られ中央には円卓が鎮座するアゲトジムの会議室。そこに青年が厳かに座し、少年が壁に背を預け佇んでいた。

「で、わざわざ俺を呼びつけて……何の用だ」

 ぶっきらぼうに言い放ったのは臙脂のトレーナーを羽織った少年、ツルギ。数時間程前まで激闘を繰り広げていたというのに、疲労を感じさせない様子は戦い慣れしていることを窺わせた。

「恥を忍んでお願いする。単刀直入に言う、ツルギくん、きみの知っているオルビス団に関する情報を教えてほしい」

 椅子に座って答えるのは緑のチュニック、金髪の青年ルーク。このアゲトジムのジムリーダーでありチャンピオンスタンの好敵手、恐らく今オルビス団に立ち向かっている人間の中では最も強いのが彼だろう。

「わざわざ話して何になる?」
「ぼくの生涯の親友が……エイヘイ地方を担う最強の男スタンが、ヴィクトルさんとの戦いで果てた」

 どうしてあの時止められなかったのか、スタンが死にに行く者の目をしていたのは分かっていたのに、何故手を掴めなかったのか。
 その顔には、未だ拭えない深い後悔が刻まれていて。

「知りたいんだ、スタンが命を賭けて戦い抜く価値が あったのか。もちろん、ぼくが各街のジムリーダーとの情報網を通じて調査した情報も渡すぜ」
「……ああ、良いだろう」
「……邪魔するよ。その話、僕も聞かせてもらっていいかな」

 彼にも背負っているものがある、ツルギも当然同様だ。僅かな逡巡の後、答えようとしたその時に、静かに扉を開いて一人の影が現れる。いつものブレザーではない、汗に塗れてタンクトップ一枚の姿の茶髪の少年、ジュンヤの幼馴染みソウスケだ。 

「誰かと思えば、お前だったか」
「オルビス団の悪事は、僕に直接は関係なくとも親友が大いに携わっているんだ。ジュンヤは今疲労で泥のように眠っている、僕が代わりに聞いておきたい」

 彼の後ろでは傷と泥だらけのヒヒダルマが頷いている。彼らも四天王グレンとの鍛練が終わったばかりなのだろう、顔には深く疲労が刻まれていて。

「……ふざけた奴だな」
「なにがかな、ツルギ?」

 嘲笑うように鼻を鳴らすツルギに、ソウスケがよく分からずに首を傾げると、彼は呆れたように言葉を続けた。

「お前、手帳も出していないが、情報を正確に記憶出来るのか?」
「あ、確かに。ソウスケくん、メモは必要だぜ。それとポケモン達を回復させて、汗臭いから先にお風呂入ってくれよ」
「……ハイ、イッテキマス」

 それまで待っててやるからさ、と言ってはくれたが……少しきまりが悪くて、ソウスケは風呂上がりに気恥ずかしさを晴らすように牛乳をイッキ飲みするのであった。



****



 大理石の敷かれた広間。天井にはシャンデラを模したシャンデリアが明るく室内を照らしており、一面ウール生地の赤絨毯が広がっていた。
 剣の城上層、幹部にだけが立ち入りを許された大広間には、ディナーテーブルで少年と青年が向かい合うように座っている。

「……長い道程だった。此処に至るまでのめくるめく運命は……まさに、激動と言うのが相応しいだろう」

 紫の長髪に、平素身に付けている紫のコートは脱いでおり、インナー姿で腰掛けているのはエドガー。オルビス団最高幹部の一人であり……その顔には、長い間ヴィクトルの右腕として働き続けた、深い実感が込められる。
 今でも脳裏に蘇る。十三年前、信じてくれる仲間達を裏切り……師の私利私欲を支える為に、罪も無い無数の人々をこの手に掛けてしまったあの日を。

「アハッ、ホントだねぇ。ホントに今まで……すごく長くて、色々あったよ。始まりは終焉の枝を見つけた日から、だったよね」

 軽い口調で返すのは同じく最高幹部の一人、レイ。ハンチングと上着は私室に置いてきた為に、乱れた銀髪とシャツ姿。
 いつまでも、脳裏にこびりついて離れない。九年前、首領が全てを灰塵に変えたあの日のことを。誰よりも大切なただ一人の親友の愛する世界が、全て燃え尽きていく様が。

「ふわぁ〜あ……。ねっむ……」

 過去になど興味が無い、そう言いたげに無造作に床に寝転がる青いジャケットを羽織った青年アイクだが……彼の瞼の裏には、初めて出会った日の姿が今でも鮮烈に思い起こされる。
 他を寄せ付けぬ強さ故に競合する相手も居らず、全てに倦怠感を覚えていた自分を容易く打ちのめした男。その隣に侍る二人の幹部。……可能性を見せてくれた者達の姿を。

「ああ、そうだな……懐かしい。あの日から、我々の運命は動き出した。いや……今に至るまで、全てが定められた運命だったのかもしれない」
「ボクがジュンヤくんとビクティニに出会ったのも、ボクがヴィクトルの──なのもきっと、ぜんぶぜーんぶ運命なのかもね。彼があの力で、野望を果たす為の」
「運命だとか、くっだらねぇー……けど、まあ言いてえことは分かるぜぇ。ヴィクトルなら、ま、……おかしかねえかんなぁ」

 エドガーの眼は恩師の野望が果たされた遥か彼方を臨むかのように見据えられ……レイの瞳は、望郷を振り返るかのように細められた。アイクですらも納得の様子で半身を起こして、それだけ言うと再び身体を横たえており。
 皆、認識は同じであった。ヴィクトル・ローレンス……彼こそが、運命を掴む勝者なのだと。

「あの人は月桂冠の勝者だ。勝つべくして勝つ、生まれついての完全勝者。運命は……それを望んでいるのかもしれない」
「……そう、だね。ボクもそう思うよ、あの人には勝利の星が輝いている、誰も勝てやしないんだって」
「おれらが束になってもあいつのガブちゃんにゃ敵わねーんだ、誰も勝てるわきゃねえわなあ……」

 エドガーがレイに視線を送れば、彼も隣で舌鼓を打ちながらポフレを頬張るゾロアークの頭を優しく撫で付けながら僅かに眉を潜めて同意を示した。
 幼い頃にエイヘイ地方の頂点に立ち、以降数十年間その座を誰にも譲らず勝ち続けてきた最強の男。彼の人生はまさに完璧と言って差し支えの無いものであった。
 力も、地位も、名声も、富も……ポケモンバトルで望むもの全てを手に入れて来た男故に、彼らには確信があった。運命は彼に与している、と。

「……古代の城にて最終兵器『終焉の枝』の遺構が発見されたあの日から……全てが始まった。伝承とされていた兵器の発見に、ヴィクトル様は希望を見出だした。そしてその時に発足されたのが……我らが組織だ。尤も、あの頃にはオルビス団という名前は無かったがね」

 あの時、彼は確かに瞳に光を宿した。頂点に立ち続け、旧態依然の停滞の中総てを諦めていた彼が……新しい玩具を与えられた幼子のように、その心に再び熱く燃え盛る無垢な焔を灯したのだ。

「だからこそ、共に堕ち続けると誓った」

 倫理に反する悪辣だとしても、かつて誰もが憧れた最強の男の姿が、求めた背中が其処に在ったのだから。

「……エドガーくんってば、ホントにボスのこと大好きだよね〜」
「君のことも大切に思っているよ、レイ」
「もちろんボクもだよエドガーくん。だからホンットにケンカはやめようね?」
「……すまない、気を付けよう」
「……わりい」

 本当に彼らには日頃手を焼かされて困っている、レイが困った声色で頭を下げると、サザンドラは決まりが悪そうに目線を逸らし、メタグロスも落ち込んだように瞼を伏せて……エドガーとアイクが、素直に謝罪を口にした。
 ……まあ、こんなこと言ってもどうせすぐにまたケンカするんだけど。



****



「そして十三年前のあの日、最悪の事故が起こった」

 『十三年前の爆発事故』、それはツルギにとっての始まりの日。
 213番道路に佇む古城の最奥に安置されていた、かつての戦争を終結へと導いた最終兵器『終焉の枝』。それには現在より遥かに高度な生体エネルギー利用に関する技術、所謂ロストテクノロジーが詰め込まれており、解き明かして発展させることで地方を繁栄に導く計画『プロジェクト:オルビス』。
 しかし、ある日進化エネルギーを電力に変換する実験の最中に機械の一部が負荷に耐え切れず小爆発を起こした。
 元々軍事転用で危険性が提唱されていた為に安全面を疑問視する声も増え、十三年前のある日、遂に最悪の事故が……研究施設一帯を灰塵に変えてしまう大規模の爆発事故が起きてしまった。

「だが、無論あれは事故などではない」

 苦々しげにツルギが語るのは、およそ突拍子も無い出来事ばかりだ。

「オルビス団の奴らが主導で起こしたんだ。目的はただ一つ、研究が進み、最早用済みとなった研究施設の封鎖、及び真実を知り得る関係者全ての抹殺」

 十三年前に起きた最悪の大事故は人為的に起こされた事件であり、

「そしてヴィクトルとエドガー、奴らは逃げ出した研究所員達を証拠を残さないように確実に仕留めていった。ヴィクトルが凄まじい力を奮い破壊の限りを尽くし、エドガーが俺の父リュウザキ博士や、母も含めた逃げ延びた者達の始末を行った」
「そんな……」

 オルビス団、彼らは証拠を残さない、その為だけに一人残らず殺し尽くしたというのだ。余りに現実離れした事実が積み重なるが、ツルギの真剣な表情にそれが嘘ではないのだと思い知らされる。
 苦々しい顔で沈黙するルーク。ソウスケも絶句するしかなく、それでもツルギは言葉を続けていく。

「俺はその事件の唯一の生き残りだ。親から子守りとしてつけられていたナックラーを連れ、母上がまだ幼い俺に託して下さったケーシィのテレポートで逃げ出した。……いや、エドガー、奴が俺を見逃したんだ」
「……そうか、だからツルギ、君は今まで力だけを求めて来たのだね。……オルビス団に、復讐をする為に」
「下らん、俺は感情に振り回されるつもりは……」
「一つ質問して良いかい?」

 ソウスケの推測に反論しようとしたところで、ルークが疑問を呈して遮られる。彼の疑問、それは「今まで警察に言わなかったのか」ということだ。

「お前は、今の話を幼い子どもが口にして事実だと受け止められるか。全て話したとさて、下らない都市伝説だと切り捨てられるのが関の山だろう。もっとも……警察庁もマスメディアも上層部はオルビス団の手にかかっていた、話したところで無駄だったろうがな」

 ……ソウスケにも覚えがあった。その爆発事故はオカルト界隈では定番の題材となりしばしば与太話が語られている。当時の幼いツルギが「爆発事故は人為的なものだ、黒幕がいる」そう話したところで、信じる方が無理な話だろう。
 そしてオルビス団はレイのオーベムがそうだったように、ポケモンの力で記憶を操作することが出来る。今まで警察の人達やマスメディアが悪の組織の胎動にも大々的に動かなかったのは……それが原因だったのか。

「後はお前らも知っているようなことばかりだ。発電所の占拠や捉えたポケモン達の成体エネルギーを用いて終焉の枝、及び剣の城の動力源にする。テレビ局を占拠し終焉のカウントダウンを行う……などな」
「ありがとなツルギくん、よーく分かったぜ。奴らはぼくやスタンが思っていた以上にやべーやつらだってな。じゃ、次はぼくとスタンが調査した内容だが……」

 ……スタンの話す内容は最低限の幹部の身の上や被害状況、オルビス団の活動が活発になり始めた時期やエイヘイ地方中のジムリーダー達と提携を取って暴徒の鎮圧に当たったり調査をしている……などであった。ツルギにとっては大して目新しい情報は少なかったが、ソウスケにとっては何れも圧倒させられるものばかりであり。
 しかし、ただ一つ興味を引いたのがほんの一時間程前に行われたという剣の城麓で行われた攻防だ。
 勇士を募って千人程で取り囲み、オルビス団の活動を鎮圧する為に挑んだのだが……たったの幹部三人に返り討ちにされてしまったのだという。

「……俺のギャラドスですら都市一つを破壊するのは容易い、奴らはそれ以上に強力なポケモンを従えている。所詮一匹一匹の質が低い有象無象、奴らには敵う筈が無いからな」
「ツルギくんの言い方は気に食わない、だが……悔しいがその通りだ。良いかソウスケくん、ぼく達が戦ってるのはそんな奴らなんだ。下手したらチャンピオン以上の力を持っているかもしれないんだぜ」
「……はい、分かっています。僕とヒヒダルマも……身を持って体感しましたから」

 ……残された時間は十二日と少し。自分達が戦っている相手の強大さは理解しているが、それでも圧巻の力に不謹慎にも心が踊らざるを得ない。

「さ、じゃあこれから情報を纏めて四天王達と会議を行うとするぜ。二人とも、協力に感謝する」
「俺は鍛練に戻る。……まだ、奴らには届かないからな」
「……僕らも、更に鍛えなければだねヒヒダルマ。ツルギ、手合わせに付き合ってくれないか」
「……経験値にはなるか。良いだろう、加減はしないがな」
「ああ、助かるよ。僕らはもっと強くなってみせる、だから……とにかく鍛えないとだ!」
「だったらジム戦用のバトルフィールドを使っていいぜ。二人とも、あまり壊すなよ!」

 そして二人は暫く全力での闘いを行うが、やはりソウスケ達では食い下がるのが精一杯だ。
 ルーク達は四天王で集まって今後の方針を決めていき、ジムリーダー達とも通話で各街の被害状況、オルビス団員や暴徒の状況などを報告し、対策と避難場所への誘導など山積みとなった問題に一つ一つ当たって行きながら。
 エクレアは鍛練の疲れが出てすっかり眠りこけてしまい、サヤは少しでも強くなる為にがんばって夜更かしをして特訓をしていた。
 ノドカは未だ疲労で眠り続けているジュンヤを枕元で見守り続け、長く短い夜は更けていく。
 ──終焉の刻まで、残り12日。

■筆者メッセージ
ジュンヤ「すやすや……」
ノドカ「……ふふっ。ジュンヤってばすごい寝てる」
エクレア「すやすや……ぐごぉ……」
ソウスケ「……え、エクレアはイビキをかくんだね。なんか分かるけど」
サヤ「ふたりとも、すごくつかれてます。でも、わたしたちも、がんばらないと」
ソウスケ「そうだね、相手は手強い。このままじゃあ…幹部に勝てるわけがない」
ツルギ「サヤ、元からお前には期待していない。足止め程度の役割が出来れば十分だ」
サヤ「ひ、ひどい!けどツルギ…わたしがあんまり、気をはらないように。ありがとう、です」
ノドカ「…いつも思うけど、サヤちゃんすごい前向きだよね。だからツルギくんとやっけてたんだと思うけど」
ソウスケ「…不良が一度でも良いことをしたらという、あれのようだね」
ノドカ「ツルギくん…すくなくとも、サヤちゃんに気をつかって言ってはないよね」
ツルギ「ああ」
サヤ「ふふっ。ほんとはやさしいです」
ノドカ「…楽しそうなら、よかった!」
せろん ( 2018/09/30(日) 19:51 )