ポケットモンスタータイド - ポケットモンスタータイド
第09話 31番道路、三匹目の仲間
「なにかいいポケモン居ないかな?」
「ううーん……」
ここは31番道路。ヨウタ達はポケモンを探しながら、膝下丈の草むらを進んでいる。
ヨウタは先ほどコラッタに逃げられてしまい、アカリはその後に会ったキャモメを誤って倒してしまって、2人とも先ほどよりも必死になっていた。
「よしよしチルット。ポフィンだよー」
「ふーん、セレビィか。時間ってディアルガと若干かぶってんなあ……」
そしてルミは頭の上に乗せたチルットにお菓子をあげかわいがり、ヒロヤはヨウタから借りた本を読んで、2人とも草むらの外でヨウタ達を待っている。
「むっ……」
「どうしたのヨウタ君?」
「しっ、なにか聞こえる……」
「あっ、ポケモン!」
ガサガサとかき分ける音が聞こえて振り向くと、草むらが揺れ大きな四つの耳が飛び出していた。
「アカリ、あまり大きな声を出しちゃダメだよ」
「ご、ごめんなさい……。つい……」
紫色の耳が二つ、水色の耳が二つ。どちらも丸みを帯びたひし形で、水色の方が少し小さめだ。
二人で一匹ずつにポケモン図鑑をかざす。
「ニドラン♂。どくばりポケモン。
耳が大きく、遠くの音を聴く時羽ばたくように動く。怒るとどくばりを出す」
「ニドラン♀。どくばりポケモン。
小さくてもどくばりの威力は強烈で注意が必要。メスの方が角が小さい」
「……いいな、このポケモン」
「……うん、いいね」
二人は顔を見合わせ頷き合う。そして、
「♂の方は任せたよ、ヨウタ君!」
「アカリは♀をよろしく! 頼むぞ、コリンク!」
「行って、スボミー!」
役割を決めてポケモンを出した。
向こうはいきなり目の前に二匹が現れ驚いている。
「でんこうせっか!」
「はっぱカッター!」
二匹の間を裂くように技を放つ。
二匹は反対方向に飛んで、綺麗に分断された。
「よし」
かわされたが、これでやりやすくなった。
「コリンク、アイアンテール! 続けてでんげきは!」
尻尾を垂直に振り下ろすが下がってかわされる。
しかし間髪入れずに放った電気が命中!
「次はスパークだ!」
だが飛んで避けられ、背後から角で突き刺された。
さらに、二連続の蹴りを食らってしまう。
「大丈夫か、コリンク! 戻ってくれ!」
どちらの攻撃も背中に当たった。単なるダメージの心配もある。
しかしそれよりもコリンクの表情が存外苦しそうな為、一度戻すことにした。
「まさか、どくばりの追加効果を食らったのかな……。次はムックルだ! つばさでうつ!」
続けて出したムックルが、早速翼を叩きつける。
「今だ、モンスターボール!」
ニドラン♂はもうだいぶダメージを食らっているだろう。
投げたボールは命中し、無事捕まえることが出来た。
「よし、ニドラン♂ゲットだ!」
それを拾い上げ振り向くと、まだアカリはニドラン♀捕獲の為奮闘している最中だった。
「僕は終わったから待ってるよ」
ヨウタは彼女に一言告げて、ヒロヤ達に駆け寄った。
「ヒロヤさん!」
「ん、どうしたヨウタ?」
「コリンクが……」
言いながらボールから出して、抱きかかえて見せる。
「……なるほど」
その苦しそうな表情と血の気を失ったような青い顔から、コリンクがどく状態になっていることを悟ったらしい。
こりゃ毒だな、ちょっと待てよ、とカバンに手を突っ込んだ。
そして桃色でハート形の木の実を取り出し、コリンクに食べさせる。
「どく状態を治す、モモンのみだ。甘くて美味しいぜ」
コリンクは一口かじるとみるみるうちに顔色が良くなり、笑顔で残りに食らいついた。
「……ありがとうございます、ヒロヤさん」
「気にすんなよこんくらい。だって仲間だろ?」
「仲間……。はい、ありがとうございます! ……ん?」
コリンクを撫でながらお礼を言うと、笑顔で返してくれた。彼の優しさを噛みしめていると、背後から物欲しそうな視線を感じた。
「ヒロヤさん! あたしもチルットも食べたい!」
「おいおいルミ、お前なあ……」
振り返ると、ルミがよだれを垂らして立っていた。
彼は思わず呆れてしまう。
「いいってヨウタ。ほらルミちゃん、光栄に思うがいい。この場所にあるモモンのみは、この俺のカバンの中のだけなんだ。ゆっくり味わえよ」
「わーいやったー、ありがとう! うん、甘くておいしい!」
「おいおい、ルミ……」
ヒロヤが再びカバンから出したモモンのみを、ルミも頭の上のチルットも大口でかじりついた。
その一口だけで、面積が三分の一も減ってしまっている。
ヨウタもヒロヤも呆れて肩をすくめるばかりだ。
「あ、なに食べてるのルミちゃん?」
と、そこにニドラン♀を捕まえたらしくアカリが戻ってきた。ルミ達が持っているもの、モモンのみを興味津々に見つめている。
「モモンのみ。甘くて美味しいよ! ヒロヤさん、おかわり!」
「ヒロヤさん、私も一つもらえますか?」
「残念」
「……え?」
ルミ達が最後の一口をほおばって手を差し出し、アカリも控えめに手を出して待っている。
しかし予想外の返事に、二人と一匹は固まった。
「今ので品切れだ。言ったろ? ゆっくり味わえって」
「そんなぁ、先に言ってよ!」
「ええ……!?」
二人は、傍目から見ても分かる程にショックを受けている。
しかしヒロヤは構わずじゃあ先進むぞ、と歩きだし、彼女達は暗い雰囲気を纏いながらそれに続いた。


せろん ( 2013/12/30(月) 18:24 )