ポケットモンスタータイド - ポケットモンスタータイド
第08話 新たなライバル、コウイチ登場
「おし、俺の勝ちだ!」
「おめでとう、これはこのジムに勝った証、ビークバッジだ」
ヨウタ、アカリに続いてヒロヤもコウシジムに挑み、勝利してジムバッジを手に入れた。
「それにしても驚いたよ。まさかウォーグルとか……進化後を使ってくるなんて」
ジムを出て、ヨウタはずっと言いたかったことを口に出した。
自分の挑戦した時には進化していなかったポケモンが、ヒロヤの挑戦した時には進化後の姿になっていたのだ。
それをジム戦中に疑問に感じたが、アカリはバトルに集中していた為邪魔しちゃ悪いと思い、ルミには聞いても分からないだろうと誰にも言えなかったのだ。
「ジムリーダーは、相手のジムバッジの数に応じて使うポケモンを変える必要があるの」
「へえ、そうなんだ」
さすがアカリ、ジムリーダーの娘だけあって詳しいな。別に口には出さないが、ヨウタは心の中で感心した。
「うん。ジムリーダーが強いポケモンを使って挑戦者に一方的に勝っちゃったら、挑戦者の為にならないでしょ?」
「確かに。センサイさんも進化前のポケモンで戦ってたけど、そういうことだったのか」
「もちろん。本当はお父さんだって、もっと強いポケモンを持ってるんだからね!」
「はは、だよね」
「ねえ、逆さ被りの君!」
「え?」
アカリの話に相づちを打ちながら歩いていると、声をかけられた。
逆さ被りと言っているのだから自分のことだろう。
声は横から飛んで来た。見てみると、眉毛にかかる程度の長さの黒い髪、黄色いパーカーに緑のズボンの少年が立っていた。
「お兄ちゃんの友達?」
「いや、知らないな」
この少年は本当に記憶に無い。ルミの問いにも首を振る。
「君、モクラン博士からポケモンをもらってたよね?」
「まあ。けど、それが?」
「よし、ボクとバトルだ!」
「……まあ、いいけど。ずいぶんいきなりだね」
こちらの都合を考えないいきなりの挑戦が若干癪に触ったが、確かに予定は無いので頷く。
「ご、ごめん。予定無いかな、と思って」
「あ、いやこっちこそあんな言い方してごめん」
こんな普通に謝られると、なんだか悪い気がしてくる。こちらも謝り返して、
「それより、バトルだよね」
と話を戻す。
「僕は今2匹だけしか居ないんだけど、いいかな?」
「もちろん。ボクも2匹だけなんだ」
「じゃあ審判は私、アカリが務めさせていただきます!」
いきなり入ってきたアカリ。……そういえば。
「よろしく頼むよ、アカリ。後、自己紹介がまだだったね。僕の名前はヨウタ」
「私はアカリで」
「あたしはルミ!」
「俺はヒロヤ、よろしく」
「ボクはコウイチ。みんな、よろしくね」
そして忘れていた自己紹介も済ませて、五人は公園に移動した。



「さあ、負けないぞコウイチ君!」
「ボクも負けないよ、ヨウタ君!」
広い公園。すべり台やブランコなどを背景に二人は向かい合っている。
観客はアカリ達だけで無く、ここで遊んでいた子ども達も加わっていた。
「行け、ムックル!」
「ポニータ、行くんだ!」
ヨウタの出したムックルに対して、彼が出したのはたてがみと尻尾が燃えている子馬、ポニータだ。
「つばさでうつ!」
「しっぽをふる!」
早速翼を広げて接近するが、横に跳んで避けられてしまう。
そしてポニータはかわいく尻尾を振って油断させ、ムックルの防御力を下げる。
「ならなきごえ!」
しかしヨウタも対抗してなきごえを使う。
今度はムックルがかわいく鳴いて油断させ、相手の攻撃を下げる。
「むぅ……。だったらひのこ!」
せっかく相手の防御力を下げても、こちらの攻撃力が下がってはプラマイゼロで意味が無い、特殊攻撃で攻めることにした。
「避けてつばさでうつだ!」
しかしムックル素早い。飛んでくる火の粉を次々かわして接近、広げた翼をぶつける。
「もう一度つばさでうつ!」
「ひのこ!」
一回空中でUターンして再び迫るが、今度は避けれず直撃してしまった。
「大丈夫かい?」
声をかけると、顔を振りながら元気な声で返事が来た。まだまだ戦えそうだ。
「よし、今度はでんこうせっか!」
「避けろ!」
「だろうね、つばさでうつ!」
目にも留まらぬ速さの突進は避けるだけでも厳しかった。紙一重でかわした、と思った瞬間に翼が広げられ、ぶつかってしまう。
「くぅっ、ひのこ!」
「上昇だ!」
だがあちらもただではやられない。反撃に火を飛ばしてくるが、素早く上昇して回避する。
「もう一度でんこうせっか!」
「ひのこで迎え撃て!」
そして再び先ほどと同じ戦法で攻めようとしたが、甘かった。
さすがに二回も同じ手にやられてはくれないらしい。
ムックルの突進を頭で受け止め、すぐに顔を上げて至近距離から火を浴びせる。
「もう一度だ!」
そして離れる隙も与えずに追撃を食らわせ、ムックルは地に落ちた。もう戦う元気は残っていないようだ。
「ムックル、戦闘不能!」
「ありがとうムックル、ゆっくり休んでくれ。じゃあ頼むぞ、コリンク!」
「来たね、二匹目! 博士からもらったコリンク!」
「う、うん。まあ、そうだけど……」
興奮気味なコウイチに、ヨウタは少し引きつつも返事をした。
「とりあえず……。でんこうせっか!」
ヨウタはその様子に若干引いたが、とりあえず指示を出す。
「跳んで避けるんだ!」
「でんげきは!」
コリンクはポニータの真下を通り抜けたが、すぐに振り返って電気を放った。
「ポニータ、戦闘不能!」
ポニータはダメージの蓄積もあり、たまらずダウンした。
「ありがとうポニータ、戻るんだ。ヨウタ君、ボクのこのポケモンもモクラン博士からもらったんだ! ゆけ、ブイゼル!」
「君も博士からポケモンをもらったから、僕に勝負を挑んできたの?」
先ほどの興奮した様子と今のテンションからそんな想像が浮かんで、尋ねた。
「うん、まあね」
彼はなぜか照れている。……入れたい。何照れてるんだよ、とツッコミを入れたい。
しかしさっき会ったばかりの人にそれは失礼だと思いとどまって、相手のポケモンに意識を向ける。
ブイゼルか、前にテレビで見たぞ。水に住んでたし、多分みずタイプだ。……よし、勝てる。
「でんげきは!」
「や、やめてよ効果抜群なんだから! みずのはどう!」
コリンクが電気を放つ。ブイゼルは慌てて防ぎ、コウイチが抗議してきた。
「……うん、分かったよ」
ヨウタは少し間を置いてから、頷く。
「え、よ、ヨウタ君!?」
「え、本当!?」
するとアカリ達も、言ってきた本人のコウイチも驚きを表した。
「本当。でんげきはは使わないよ」
「あ、ありがとうヨウタ君……!」
「気にしないで。……スパーク!」
感動している彼に笑顔を送ってから少し間を置くと、ヨウタはいたずらっぽく笑みを浮かべて叫んだ。
「ええ!? か、かわすんだ!
は、話が違うよヨウタ君!」
「え? いや、でんげきはは使ってないよ?」
「そうじゃなくって! 分かってて言ってるでしょ!」
「うん」
「……もう、いいよ! ボクが悪かった! 好きなだけ使いなよ! でんげきはも、スパークも!」
「もちろん! じゃあ、遠慮無く! でんげきは!」
「みずのはどうで迎え撃つんだ!」
コリンクの放った電気は、ブイゼルのつくりだし、飛ばした水の球により相殺されてしまう。
「でんこうせっか!」
「跳んでアクアテール!」
次に目にも留まらぬ速さで突進するが、それも避けられ背中に水を纏った尻尾を叩きつけられた。
「もう一度だ!」
そして着地するとすぐに接近して、水平に尻尾を振った。
「しゃがめ!」
「なっ!?」
しかしその尻尾は、虚しく空を切るだけだった。
耳にかすりはしたものの、ダメージにはなっていない。
「スパーク!」
そして頭上ほぼゼロ距離のブイゼルに向かって、電気を纏い突進。
「ブイゼル!?」
「決めるんだ、でんこうせっか!」
ブイゼルは山なりに宙を舞ったが、まだ少し戦う力が残っていた。
追い打ちをかけると地面に受け身もとらず激突。起き上がる気配を見せない。
「ブイゼル、戦闘不能! よって勝者、ヒガキタウンのヨウタ!」
「やった、僕の勝ちだ! よく頑張ったねコリンク、ありがとう! 戻って、ゆっくり休むんだ」
「ありがとうブイゼル、ゆっくり休んでくれ。負けたよ、ヨウタ君」
コウイチは相棒をボールに戻して、駆け寄ってきた。
「強いね、さすがはボクのライバル」
「君もつよ……え?」
そして右手を差し出して来た為握手を交わし、……思わずその言葉を聞き返した。
「ら、ライバル?」
「え、うん……」
「待って。なんでそんな、当然みたいに頷くの」
「え!?」
しかも、真底心から驚いてるし。
「いや、だって同じ日にポケモンをもらって、同じ日に旅に出たんだよ? ね、ライバルだよ」
「ええ? ん、んー……?」
なんだよその理屈は。というか同じ日にポケモンをもらったのか、いやそれよりそれはライバルと関係あるのか。
次々と頭に浮かんだ質問は、しかし困惑のあまりどれも言葉にならなかった。
「良かったな、ヨウタ」
「お、お兄ちゃん、良かったねー。ライバルだよー……」
「私のお父さんは、ライバルは多い方がいいって言ってたよ。良かったね、ヨウタ君!」
彼の強引さをヒロヤは面白がり、ルミは引き、アカリはまるで自分のことかのように喜んでくれている。
「……うん」
……アカリ。言ってることは合ってるだろうし気持ちも嬉しいけど、……違うよ。
「じゃあライバルのヨウタ君、次は負けないからね! じゃあね、また会おう!」
「う、……うん! またね!」
そしてコウイチは去ってしまった。
……確かにいいやつそうなんだけど、なんか変なやつだったな。

せろん ( 2013/12/20(金) 17:56 )