第06話 アカリがゲット、アカリとバトル
「行ってスボミー!」
ここは30番道路。アサノハシティとコウシタウンを繋ぐ道路で、今ヨウタ達はそこを進んでいた。
草むらから飛び出てきたのはメリープ。薄黄色い毛が生えた羊のような見た目で、尻尾の先には玉がついている。
アカリはそのポケモンを捕まえるために、スボミーを出したのだ。
「がんばれアカリ!」
「アカリちゃんがんばって!」
「がんばれよ」
ルミとヒロヤは相変わらず見物、しかし今回はヨウタとアカリの立場が入れ替わっている。
今はヨウタが応援、アカリがゲットする側だ。
「スボミー、はっぱカッター!」
スボミーが葉っぱを飛ばすが、向こうも負けじと電気を放って全て撃ち落とす。
「ならくさぶえよ!」
次は趣旨を変えて、美しい笛の音を聞かせる。するとメリープはグッスリと眠りに落ちた。
「今のうちにはっぱカッター!」
一度その技で切りつけてもまだ目を覚まさない。
「もう一度お願い!」
二度目でも、まだ目を覚まさない。しかしこれ以上ダメージを与える必要は無いだろう。
「お願い、モンスターボール」
アカリはあまりボールを投げたりするのは得意ではない。すやすやと寝息を立てるメリープに駆け寄って、そのおでこにコツンとボールをぶつけた。
メリープは眠っているからか全く抵抗を見せなかった。ボールは三度揺れたが、カチッという音とともに静止した。
「やった! メリープを捕まえたよ!」
「良かったね、アカリ」
「おめでと!」
「うん、ありがとう! ねえヨウタ君、お願いがあるんだけど……」
三人で彼女に駆け寄ると、彼女はヨウタを見つめて言った。
「え?」
お願いとはなんなのだろうか。
しかし推察をする間も無く彼女は言葉を続けた。
「じゃあ、行くよ!」
ポケモン用の傷を治す薬、キズぐすりを使ってポケモン達を回復させた二人はこの道路で向かい合っていた。
「行け! ムックル!」
「行って、メリープ!」
ヨウタが出したのはノーマル・ひこうタイプのムックル。対してアカリは、相性の良いでんきタイプのメリープを出した。
「相性が悪いな。ムックル、戻ってくれ。頼んだよ、コリンク!」
さすがに分が悪い、ここは交替をする。
「メリープ、でんきショック!」
「でんこうせっかだ!」
コリンクはメリープが放った電気を横にステップを踏んでかわし、そのまま突進する。
「続けてアイアンテール!」
さらに尻尾で追い打ちをかけ、
「スパーク!」
続けて電気を纏って突進する。
「メリープ!」
アカリは心配したが、声をかけるとメリープは案外元気そうな返事をした。
「ううん、やっぱりとうそうしんだからなあ」
しかしまだ元気な理由は分かっている。アカリのメリープは♀。コリンクの特性とうそうしんは、異性に対しては攻撃力が下がってしまうからだ。
「うん、次もでんきショック!」
だがあちらも負けてはいない。反撃に電気を放ち、食らわせる。
「もう一度でんきショック!」
そして再び電気を浴びせる。
「メリープ、もう一度よ!」
「避けてでんこうせっか!」
「あなたも避けて!」
三度の電気を横に跳んでかわし、突進するも避けられる。
「だったらアイアンテール!」
だがそれだけでは終わらせない。
避けられたコリンクはすぐに切り返して、尻尾を叩きつけた。
「でんきショック!」
「スパーク!」
メリープは後ずさりしながらも電気を放ち、コリンクはそれを受けながらも突進した。
「コリンク、でんげきはだ!」
「あなたもでんきショック!」
先ほどの突進で宙に投げ出されたが、飛ばされながらも電気を放つ。
コリンクも同じ技で迎え撃つが、とうそうしんのせいで押し負けて食らってしまった。
「でんこうせっか!」
しかし着地と同時に攻める。地に足をつくより少し早く動き、避けられないようにタイミングを合わせて突進した。
「メリープ、戦闘不能……。ありがとうメリープ、戻って休んでね。次は、スボミー!」
彼女は次に出したのは、こちらも相性の良いスボミーだ。
「スボミー、はっぱカッター!」
「避けてアイアンテール!」
スボミーが葉っぱを飛ばしたが、跳んでそれをかわし接近する。
「今よ、はっぱカッター!」
そして再び跳んで尻尾を叩きつけようとしたと同時に、葉っぱが放たれた。それはちょうどお腹に直撃、コリンクは倒れた。
「やった、急所にヒット! コリンク、戦闘不能!」
「やられたなぁ……。ありがとうコリンク、休んでくれ。次はムックルだ!」
ヨウタもコリンクを戻し二匹目を出した。
「アカリちゃんがんばって! こんなお兄ちゃんに負けないで!」
「る、ルミちゃん」
「お兄ちゃん、まさか女の子に負けるわけないよね? まあアカリちゃんに勝って欲しいけど、一応お兄ちゃんもがんばってね」
「ルミ、お前なあ……。分かった、絶対勝つよ!」
ルミはアカリの方をメインで応援しているが、一応兄のことも挑発交じりとはいえ少しは応援する気があるようだ。
あえてそれに勢い良く返し、アカリ達に向き直る。
「相性は不利。もしかしたら、一撃で負けるかも……」
「つばさでうつ!」
「避けてはっぱカッター!」
早速翼を広げて向かってくるが、ジャンプでかわして葉っぱを飛ばす。
しかしそれは、旋回してたやすく避けられた。
「でんこうせっか!」
「スボミー!」
今度は目にも留まらぬ速さで突進。
「つばさでうつで決めろ!」
宙に投げ出されたスボミーに、広げた翼をぶつけた。
「スボミーも戦闘不能、勝者ヒガキタウンのヨウタ……。ありがとう、スボミー。ゆっくり休んでね」
「やったぞ、ムックル!」
スボミーは無抵抗に落下し、立ち上がらなかった。
このバトル、ヨウタの勝ちだ。
「ヨウタ君も、ありがとう。楽しかったよ」
「ううん、僕こそありがとう。またバトルしようね」
アカリは少し落胆を浮かべつつも笑いながら右手を差し出し、ヨウタも足元にコリンクを携え笑顔でそれを掴んだ。