第24話 ハナビシシティ出発 アサノハへの道
「じゃあ、行くよロゼリア!」
ハナビシシティを出る前に、彼女にはやりたいことがあるらしい。
37番道路手前で、アカリはロゼリアの額にひかりのいしを当てた。
彼女のやりたいこと。それはポケモンの進化だ。
ヨウタとミツキのバトルを見て、彼女は感化されたらしい。
すでに先ほどトゲチックはトゲキッスに進化を済ませていて、残るはロゼリアだけだ。
ロゼリアの体が光に包まれ、見た目が変わっていく。
「ロズレイド。ブーケポケモン。
両手の毒の成分はそれぞれ違う種類だが、どっちを刺されても 死にかける」
「うわぁ、怖い……」
「うん、えげつない行為がいともたやすく行えちゃうな……」
ロズレイドの説明を聞いたルミとヨウタは、目の前のポケモンが優しい性格だと分かっていても少しばかりは恐怖があった。
「ポケモンはそういうもんだからな。かわいいだけじゃあないんだ」
その少しばかりの恐怖、それを口にしたら、ヒロヤが冷静に言い放つ。
確かに。ニドキングもすごいパワーがあったりするし、伝説のポケモンだと天変地異レベルの力を持ったものもいる。
「けど、私達が育て方を間違えなければ大丈夫だよ! ポケモンに対して正しい心を持って接したら、ポケモンもそれに応えてくれる! お父さんもそう言ってた!」
「さすがはジムリーダーの娘、言うことが違うなあ」
彼女の言葉に、ヨウタは素直に感心した、と同時に彼女がジムリーダーの娘だということを実感した。
「えへへ、褒めたって何も出ませんよ」
彼女はこそばゆそうに笑っている。
しかしヨウタはその笑顔の裏に、彼女自身へと注がれた父親の愛情と、彼女と彼女の父親センサイのポケモンへの愛情を感じ取った。
そしてその愛情があるから彼女がジムリーダーを目指すのだと分かり、今まで以上に彼女の夢が立派で、素晴らしいものに思えた。
「じゃあ行こ、ヨウタ君、みんな」
「うん、そうだね」
アカリがロズレイドをモンスターボールに戻し、皆を振り返る。
ヨウタがそれに頷いて、四人はハナビシシティを後にした。
「見つけたぞオノンド!」
37番道路。ハナビシシティを南下してアサノハシティへと向かう道路だ。
アカリは現在ルミとポケモンを探していて、ヒロヤは捕まえたいポケモンがいないのか草むらの外でポケモンを撫でている。
珍しくヨウタ一人だ。
ヨウタの目的はドラゴンタイプのオノンド。
「行くんだムクバード!」
張り切ってボールを投げ、ポケモンを出す。
出て来たムクバードはオノンドを威嚇している。
オノンドはたじろぎつつも、臨戦態勢に入った。
「つばさでうつ!」
ムクバードが翼を広げて突進するが、固い牙で受け止められてしまう。
「もう一度、今度は後ろからだ!」
ならばと背後から攻める。背中に翼をぶつけると慌てて振り返ったが、
「次は上からだ!」
今度は上昇して上から攻撃をする。
だが、向こうもただやられるばかりではない。
一旦距離を取ろうとしたムクバードを追って跳び、爪で背中を切り裂いた。
「ムクバード! いや、いかくのおかげで大したダメージにはなっていないみたいだ。つばさでうつ!」
再び突進するが、向こうは跳んでかわし、またも背中を切りつけた。
「むう……。だったらでんこうせっか!」
オノンドの着地の隙を狙ったが、つばさでうつでは間に合わないだろう。
素早く突進すると、防御が間に合わなかったのかお腹に命中した。
「続けてつばさでうつ!」
ムクバードはそのまま横にずれて、翼を叩きつける。
「よし、かなり効いてるはずだ! 行け、モンスターボール!」
ついにオノンドがよろけた。そこを狙って投げたモンスターボールは見事に命中した。
「オノンド。あごオノポケモン。
キバは二度と生え変わらないので、戦い終わると川原の岩を使って丹念に磨きあげる」
「よし、これからよろしくなオノンド。ありがとうムクバード、ゆっくり休むんだ」
ヨウタがオノンドのボールをベルトに装着して、ムクバードにボールを向けたその時。
ムクバードが体から光を放った。
「ムクバード、ついに進化か!」
「ムクホーク。もうきんポケモン。
自分の体が傷つこうとも攻撃をやめなくなった。 とさかの形を気にしている」
図鑑をかざして確認する。
「良かったな、おめでとうムクホーク。じゃあ今度こそ戻ってくれ」
彼はすぐに図鑑を戻してムクホークに駆け寄り、頭を撫でた。
そしてムクホークをボールに戻してからアカリ達と合流する。
アカリのモココがデンリュウに進化したことや、自分のムクバードがムクホークに進化したことなどを話しながら歩いていると、あっという間にアサノハシティへと到着した。