ポケットモンスタータイド


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第23話 ライバル対決 VSミツキ
「お、来てたのかヨウタ! みんな!」
ハナビシシティのポケモンセンター。
ヨウタ達がポケモン達の回復を終わらせてそこを出た時、彼に会った。
「ミツキさん!」
「まあ待てルミちゃん。アカリ、まずはお前に見せたい物がある」
「見せたい物?」
幼なじみのミツキ。彼に抱きつこうとしたルミを片手で押さえ、彼はポケットからジムバッジのケースを取り出した。
「これ……」
「開ければ分かる」
アカリは言われるがままにそれを開く。
そして思わず息を漏らした。
「このバッジ……!」
中には四つのバッジが入っていた。
その四つ目は、木を模した形のものだ。
ツリーバッジ。アサノハシティのジムリーダー、センサイに認められた者が手に出来るバッジだ。
つまり……。
「ミツキ君、お父さんに勝ったの……?」
「ああ。さすが、センサイは強かったけど、ギリギリな」
「そっか……。おめでとうミツキ君!」
「ああ、サンキューアカリ!」
そうか、ミツキはセンサイさんに勝ったのか。僕は勝てるかな、あの人に。
「というわけでヨウタ!」
一人で考えていると、いきなり声をかけられた。
「え?」
「お前がセンサイさんに勝てるか、オレが試してやる! 早速やるぞ!」
やる、というのは勿論ポケモンバトルのことだろう。
「うん、分かった。負けないよミツキ!」
「オレも負けないぜ!」
そして彼らは場所を移した。



「行くぜヨウタ!」
「うん、僕達も行くよ! ミツキ!」
ハナビシシティの公園で、互いのポケモンを出して向かい合う二人。
対峙しているのは、ニドキングとリングマだ。
「じしん!」
「こっちもじしんだ!」
ニドキングとリングマが思い切り地面を殴り、衝撃波を起こす。
しかし威力が拮抗し、どちらも消えてしまった。
「だったらどくづき!」
「ほのおのパンチで迎え撃て!」
今度は接近し、互いの拳をぶつけ合う。
こちらも威力は互角で、二匹とも後ずさりする。
「かみなり!」
だが、ニドキングは攻撃の手を休めない。
すぐに足を踏ん張って後退するのを止め、角の先端から強力な電気を放った。
「すてみタックル!」
しかしリングマも負けてはいない。電気を浴びながらも怯まず猛然と迫ってくる。
「まずい、防ぐんだ!」
慌てて防御に切り替えようとしたが、間に合わない。
直撃したニドキングは一瞬宙に浮かび、あお向けに倒れ地面を滑っていく。
「やれ、ほのおのパンチ!」
なんとか腰を持ち上げて起き上がったが、リングマが燃える拳を構えて迫ってきた。
「どくづき!」
ニドキングも完全に立ち上がるのは間に合わず、片膝を立てて迎え撃つ。
やはり威力は互角だが、これで一時凌ぎにはなった。
「もう一発パンチだ!」
「腕で防げ!」
相手が今度は左手で殴りかかってきたが、しっかり立ち上がったニドキングはそれを腕で防ぐ。
「どくづき!」
そしてこちらの反撃が、リングマの腹に命中した。
「よくやったな、一度戻って休んでくれニドキング。次はブースターだ!」
ニドキングはもう十分がんばった。
ヨウタはニドキングとブースターを交替する。
「やっぱりかわいいなあ、ブースター……」
「うん、お兄ちゃんの癖に生意気だよね……」
出て来たブースターはやる気十分に炎を吐いている。
それを見て、アカリとルミの二人は羨ましそうにため息を漏らした。
「リングマ、じしん!」
「跳んでかわすんだ! でんこうせっか!」
「防御しろ!」
迫ってくる衝撃波を跳んで避けたブースターは、そのままリングマに接近する。
「ほのおのキバ!」
そして相手が防御の為に構えていた腕に思い切り噛みついた。
「くっ……、振り放せ!」
「かえんほうしゃ!」
リングマがぶんぶん腕を振り回して抵抗され、ついに宙に投げ出されてしまった。
しかし空中から炎を放ち、直撃。
リングマは耐えきれず倒れた。
「リングマ、戦闘不能!」
「よし、まずは先制だ! ……って、やっぱりアカリそれやるのか」
「ああ、なんでお兄ちゃんが勝ってるの!? ミツキさん負けないで!」
「たりめえだ! リングマ、良く頑張ったな。次はお前だ、ドンカラス!」
彼の二匹目はドンカラス。ヤガスリの森の時のが進化したようだ。
「ブースター、かえんほうしゃ!」
「ブレイブバード!」
ブースターがかえんほうしゃを放つが、向こうは意に介さない。翼を畳み炎と中を突き進んでくる。
「まずい、かわすんだ!」
そう叫んだ瞬間。衝撃で辺りに砂煙が舞った。
少し待つと煙は晴れ、動かなくなったブースターが見えた。
「ブースター、戦闘不能!」
「ありがとうブースター、ゆっくり休むんだ。もう一度頼む、ニドキング!」
再びバトルフィールドに現れたニドキング。
だがまだダメージが残っているらしく、呼吸が荒い。
「一気に決めないと。かみなり!」
「ああ、決めるぜ! かわしてつじぎりだ!」
勝負を焦ったヨウタが先に指示を出したが、かみなりは命中率があまり高くない。
高度を下げてたやすく避けられ、翼の一撃を食らってしまった。
「ニドキング、戦闘不能!」
「良く頑張ったねニドキング、ゆっくり休んでくれ。最後は君だ、ルクシオ!」
ブースターとニドキング、二体が立て続けに倒されてしまった。
だがまだ立て直せるはずだ。どうやらブースターに使った技、ブレイブバードは自分も反動を受ける技らしく、ドンカラスも少し息を荒げながら飛んでいる。
「ドンカラス、つじぎり!」
「跳んで避けるんだ!」
向こうは低空飛行で翼を広げながら向かってきたが、ルクシオはジャンプで軽々避ける。
「でんげきは!」
そして通り過ぎざまに電気を浴びせる。
「そろそろやべえな、ブレイブバード!」
彼も先ほどのヨウタ同様焦っているらしい。
一気に勝負を決めようとしてきたが、好都合だ。
「思い切り跳ぶんだ!」
Uターンして再び低空飛行で迫ってくるドンカラス。
しかし高くに跳ばれて、慌てて起動を上方に修正してルクシオを狙うも間に合わない。
ルクシオの下を通り過ぎてしまった。
「もう一度でんげきは!」
そして中途半端な高さに上がったドンカラスは、すでにただの的でしかない。
電気を浴びたドンカラスは目を渦巻きにして落下した。
「ドンカラス、戦闘不能!」
「よし、残り後一匹!」
「サンキュードンカラス、戻って休めよ。さあ、オレの最後はこいつだ! ブーバー!」
これで勝負は五分五分だ。ミツキの最後の一匹、彼の相棒のブーバーが現れる。
「ルクシオ、でんげきは!」
「かえんほうしゃ!」
向かい合う二匹の技の撃ち合い。
しかしルクシオの放った電気は、ブーバーの炎に飲まれてしまう。
「避けろ!」
慌てて指示を切り替える。ルクシオは横に跳んだが、少しかすってしまう。
「こいつはどうだ、ほのおのパンチ!」
「アイアンテールで迎え撃て!」
接近して燃える拳を振り下ろすブーバー。こちらもしっぽで迎え撃ち、力は拮抗する。
「ふう……。……え!?」
これでなんとか凌いだ、と思って胸をなで下ろしたヨウタだったが、甘かった。
競り合いの続く中対戦相手の顔を見ると、ニヤリと笑っていた。
「甘いなヨウタ。ブーバー、ほのおのパンチ!」
ヨウタは気づいた。ルクシオは一本しかないしっぽを使ってアイアンテールをしているが、ブーバーの腕は当たり前だが二本ある。
つまり、攻撃は一度では終わらないのだ。
「ルクシオ!」
「まだ終わらないぜ! かえんほうしゃ!」
拳撃で地面に叩きつけられたルクシオ。しかし容赦ない追撃が襲いかかる。
無論避けれるはずが無く、直撃したルクシオはヨウタの足元まで転がっていった。
「ルクシオ……?」
ルクシオは動かない。ダメージは相当大きかったらしい。
「どうしたヨウタ、もう終わりか?」
「……嫌だ」
ミツキは勝ちを確信したのか、余裕に振る舞っている。
だがヨウタは気にせず足元を見る。
傷つき、倒れているルクシオ。いや、ルクシオだけではない。ブースターとニドキングもだ。
「嫌だ、負けたくない」
それは心からの言葉だった。
もちろんヨウタ個人のライバル意識も含まれている。
だがそれ以上に、ここで負ければ三匹の頑張りが無駄になる、それが嫌だったのだ。
「お願いだ、立ってくれ! ルクシオ、立つんだ!」
初めてだった、ここまで負けたくないと思ったのは。
誰かの叫び声が響き、それが自分の発したものであると気づくのにそう時間はかからなかった。
その瞬間、わずかにルクシオの足が動いた。
「お兄ちゃん、すごく熱くなってる……」
「あんなヨウタ君、初めて見た……」
今までに感じたことの無い情熱。それはルクシオにも、見ていたアカリ達にも伝わっていた。
ヨウタの声に応えるように、ルクシオはゆっくりと立ち上がった。
「ルクシオ……!」
ヨウタが思わず名前を呼んだ瞬間、ルクシオが光に包まれた。
「まさか、進化か……!?」
光は徐々に形を変え、一回り大きくなってそれは消えた。
立派な黒いたてがみ。力強さを感じる太くたくましい足。
見紛うことなく、ルクシオの進化した姿だった。
「レントラー。がんこうポケモン。
壁の向こうも見える力で逃げた獲物を追いつめる他にも迷子の子どもを探ししたりする」
「進化して技もパワーアップしてる……! 行こうルクシオ! かみなりだ!」
「へっ、ここに来て進化か……。おもしれぇ! かえんほうしゃで迎え撃て!」
ポケモン図鑑でレントラーを確認したヨウタは、早速指示を出した。
でんげきはの倍は強力な電気が、炎を切り裂きブーバーを包んだ。
「行くんだ! ワイルドボルト!」
だがまだ終わりでは無い。ルクシオ、いや、レントラーは電気を纏って真っすぐ突進した。
「やべぇ……! 避けろブーバー!」
ブーバーは必死で横に跳んだが、避けきれなかった。
直撃したブーバーは宙を舞い、無抵抗に地に落ちた。
「ブーバー、戦闘不能!」
一目瞭然だった。先ほどのルクシオと違って全く起き上がる気配を見せない。
「よって勝者、ヒガキタウンのヨウタ! ……君」
「ありがとなブーバー。わりぃ、勝たせてやれなくて。じゃあ、ゆっくり休めよ」
勝敗は決した。
「あ、危なかった……! やったぞ、ありがとうレントラー!」
ヨウタは急いでレントラーに駆け寄って抱きしめようとしたが、ダメージが大きかったことを思い出し撫でるだけに留めた。
そして少しの間撫でてから再びお礼を言い、モンスターボールに戻した。
「……はぁ、まさかあそこで進化するなんてな。オレの負けだ、ヨウタ!」
「ミツキ。……楽しいバトルだったよ、ありがとう」
「え? おう、まあ負けたのは悔しいけどオレも楽しかったぜ!」
ヨウタは彼に歩み寄り、手を差し出した。彼もがっしりとそれを掴み、固い握手を交わす。
「じゃ、回復させないといけないからオレはもう行くぜ! じゃあな、次は負けないぜ!」
だが彼はすぐに手を離し、それだけ言って走り去ってしまった。
「どうせポケモンセンターに行くのは一緒なのにな。じゃ、僕達も行こうか」
それにやや遅れて、四人もポケモンセンターに向かうことにした。
「(ポケモンバトル、やっぱり面白いな……。それにミツキとのバトルは、なんだかすごく熱くなる)」
その道中で、ヨウタは何度も先ほどのバトルを思い出し、一人胸を高鳴らせていた。


せろん ( 2014/04/04(金) 20:54 )