第20話 35番道路、ポケモンゲット
「うーん、いないなあ」
サヤガタシティを出て35番道路。今ここでヨウタはあるポケモンを探していた。
「どこにいるんだろう、コジョフー」
コジョフー。かくとうタイプのポケモン。
それこそヨウタが、正確にはアカリが求め、ヨウタが彼女の為に探しているポケモンだ。
「お兄ちゃん、がんばるね」
草むらをかき分けて目的のコジョフーを探すヨウタに、後ろから付いてきているルミが話しかける。
「まあね。僕は」
「アカリちゃんのことが大好き! だもんね!」
「なっ、えっ……!? ち、違う!」
普段はヨウタとアカリとルミ達は一緒に行動する為大きな声では言えないが、今は違う。
ヨウタとルミは一緒に行動し、アカリ達はそれぞれ一人で探索しているのだ。
「前にアカリからハーデリアを頼まれたから、僕もアカリの為に何か出来ないかなって……!」
「はいはい、チルットかわいいね! よしよし、おかえりー!」
「聞けよ!」
以前ヨウタは、事情があったからとはいえ彼女からハーデリアを譲り受けた。
その恩返しに、と話している最中にルミのチルットがこちらに向かって飛んできた。
「もしかして、コジョフー見つけたの?」
ルミもアカリのことが大好きな為、チルットにも探すのを手伝ってもらっていたのだ。
チルットからの返事を受け、二人は顔を見合わせチルットに案内を頼む。
草むらを進んで数分。確かにコジョフーの姿が確認出来た。
「確かコジョフーはかくとうタイプ。だったら君だ、ニドリーノ!」
どくタイプのニドリーノならばかくとうタイプの攻撃のダメージを半減に抑えられる。
それにムックルと違ってどくタイプの技では弱点をつけない為倒してしまう危険は薄い。
きっとこの選択はアカリもミツキもヒロヤさんも褒めてくれるはずだ!
「早速つのでつく!」
ニドリーノがコジョフーに向かって突進する。
しかし相手は飛んで背後に回り、跳び蹴りを仕掛けてきた。
「お兄ちゃん、ニドリーノ危ない!」
「分かってる、にどげりだ!」
対してこちらも迎え撃つ。相手が背後にいるのをいいことにすぐに二連続の蹴りを放った。
しかし相手の一蹴りとこちらの二連続の蹴りは威力が互角らしく、互いに弾かれた。
「だったらどくづき!」
だがバトルを何度も経験しているニドリーノは切り返しが速い。
すぐに指示の通り毒に染まった角を突き刺した。
「続けてどくばり!」
さらに毒のある針を突き刺す。
するとコジョフーは苦しそうに片膝をついた。
「今だ、モンスターボール!」
すかさずモンスターボールを投げると、コジョフーに直撃した。
ボールは少しの間揺れたが、それもすぐに収まった。
「よし、コジョフーゲット!」
足元でニドリーノも一緒に喜んでくれている。
よし、早くアカリを捜そう、と思いながらヨウタはルミとともに草むらを出た。
「うーん、コジョフーいないなあ……」
アカリは爪先立ちで辺りを見回すが、目的のポケモンは見つからない。
「この辺りには居ないのかなあ……」
そう彼女がため息をこぼしている後ろから、
「それは違うよ!」
「ひゃあ!?」
大きな声で否定をすると、彼女は予想以上の反応を見せてくれた。
「はは、アカリ驚きすぎじゃないか?」
「よ、ヨウタ君! ルミちゃん!」
「やあアカリ」
「ヤッホーアカリちゃん」
彼女は慌てて振り返り、それが見知った相手であると分かると恥ずかしさに顔を赤らめた。
「えっと、その……。どうしたの、ヨウタ君?」
「あ、うん。はいアカリ」
「え?」
戸惑っている彼女に、先ほど捕まえたばかりのポケモンのモンスターボールを押しつけた。
「さっきコジョフーを見つけたんだけど、ハーデリアのお礼に受け取ってほしいんだ」
「いいの? ヨウタ君、ありがとう!」
彼女はとても明るい笑顔を見せてくれている。
喜んでくれて良かった。
「いや、いいんだよ。じゃあヒロヤさんを探そうか」
「うん!」
そして三人でヒロヤを探して、合流してから次の街へと向かった。