第13話 再戦、ライバルミツキ
「じゃあ三対三でいいな!」
「うん、もちろん!」
食後。
公園のバトルスペース、その名の通りバトルをするためのスペースで、二人は向き合いモンスターボールを構えていた。
「じゃあ審判は私が!」
審判には前回同様アカリが名乗り出た。
「おう、任せたぜアカリ!」
「ミツキさんがんばって!」
「サンキュールミちゃん!」
「やっぱりミツキの応援かよ……」
妹のライバルへの応援に、呆れと少しの物悲しさの混じった言葉が出て来た。
やっぱり、というのは、昔から彼の妹ルミは、彼ではなくその友達のミツキを応援しているからだ。
理由はミツキの方がかっこいいかららしい。
「行け、ハーデリア!」
「お。じゃあこっちはココドラだ!」
早速先ほど予想外の形で仲間になったハーデリアを出した。
ハーデリアは振り返って嬉しそうにしている。
よほどあの状況が耐え難かったのだろう。
まあそれはともかく、ミツキが出したのは銀色で頭でっかちなポケモンだ。
「見た目的に、はがねタイプかな。とりあえず戻ってくれ、ハーデリア。行け、コリンク!」
「いかくで攻撃が下がってるからな、お前も戻れココドラ! 二匹目はこいつだ、バチュル!」
早速互いにポケモンを交替する。
「よし、ならまた交替だ! むしタイプには君だ、ムックル!」
そして出て来たポケモンを見てヨウタはまたも交替。
「つばさでうつ!」
「跳んで背中に貼り付け!」
ムックルが翼を広げて突進するが、バチュルはジャンプでかわすとそのまま背中にくっついた。
「速い……! けど、むしタイプの攻撃は効き目がいまいち。振り落とすんだ!」
「ヨウタ、こいつのタイプはむしだけじゃない! でんきタイプも持ってるんだぜ! でんきショック!」
ムックルがじたばた暴れて振り落とそうとしたが、バチュルはそれに耐えて電気を放つ。
「そんな!?」
そして電気を浴びせるとすぐに飛び降りて着地した。
「知識の差がものを言ったな。悪いなヨウタ! もう一度でんきショック!」
ムックルは効果抜群の攻撃を一度は耐えた。しかし二度目は無いだろう。
「させるか、でんこうせっか!」
だが、それならば攻撃させなければいいだけだ。
電気を溜めているバチュルに目にも留まらぬ速さで突進すると、ダメージに怯んで中断した。
「続けてつばさでうつだ!」
さらに翼をぶつける。
バチュルは宙に投げ出されてしまった。
「今だ、もう一度つばさでうつ!」
「でんきショック!」
そしてそこを狙って攻撃しようとしたが、反撃にあってしまった。
「ムックル、戦闘不能!」
ムックルは力尽き、勢いだけが残り地面を滑った。
もう動かない、戦闘不能だ。
「ごめんムックル、ゆっくり休むんだ。次は君だ、ハーデリア! とっしん!」
「また背中に貼り付け!」
次に出したハーデリアもムックル同様技をかわされ、背中にくっかれてしまう。
「でんきショック!」
「させないよ、転がるんだ!」
バチュルはすぐに電気を蓄えるが、放つより先に転がられたせいで地面と挟まりそうになる。
慌てて逃げようとしたが間に合わない。
その小ささが災いして潰されてしまった。
「行け、とっしん!」
そしてそれを食らってポンと飛び、ミツキの足元に落下した。
「バチュル、戦闘不能!」
「なら行け、ココドラ!」
彼が次に出したのは一匹目のそのポケモンだ。
「はがねタイプだから、ノーマル技の威力は半減。でもこのまま進むぞ! とっしん!」
「受け止めろ!」
しかしハーデリア渾身の突進は、その大きな頭であえなく防がれてしまった。
「なっ、全く効いてない!」
ココドラは涼しい表情のままで、かなり効き目が薄く感じる。
「まずはその速さを奪ってやる、がんせきふうじだ!」
その上反撃の岩に直撃してしまった。
「一度下がるんだ!」
一度離れなければ、と指示を出したが、そのバックステップは少し遅く感じる。
「遅いぜ、もろはのずつき!」
「避けてくれ!」
そしてその遅くなった動きではかわしきれず、直撃してしまった。
「ハーデリア、戦闘不能!」
「くっ、なんて威力だ……!」
「当然だろ、いわタイプ最強の技なんだからな。まだまだ甘いな、ヨウタ」
「さすがだねミツキ……! ありがとうハーデリア、戻って休んでくれ」
たしかに彼の言葉の通り、威力は絶大だった。しかしそれなら向こうにもなにかしらの反動があってもいいはず、と相手を見てみるが、ココドラは平然としていた。
「反動は無いのか……!」
「惜しい、少し違うぜ。もろはのずつきに反動が無いんじゃなくて、こいつの特性いしあたまで反動ダメージを受けなかったんだ」
「なるほど、そういう特性だったのか……」
「ついでに教えてやるとこいつのタイプははがね・いわだ」
「そうか、とっしんもそれで……」
彼が教えてくれたことで、疑問が全て解決した。
反動が無いのは反動のおかげで、とっしんがあまりにも効かなすぎたのは(無論単純に防御力が高いのもあるのだろうが)二タイプから威力を半減、つまり四分の一されたからだったのだ。
「うん、すっきりしたよ。最後は任せたよ、コリンク!」
彼は疑問が解けて晴れ晴れとした気分で三匹目、相棒のコリンクを出した。
パチパチと電気をスパークさせてやる気になっている。
「でんげきは!」
まずは牽制。先ほどがんせきふうじを食らったら素早さが少し下がった。
彼の言葉と合わせて考えるとおそらくそれが追加効果なのだろう。
つまりその技を二度も最初にするということは、ココドラは防御は高くてもそんなに速くはないということだ。
そして推測通りだった。
電気を放つが、相手は受け止めるのが間に合わず直撃した。
「くっ、がんせきふうじだ!」
「遅いよミツキ! かわしてでんげきは!」
反撃の岩の攻撃も距離があるため楽々避けて、再び電気を浴びせる。
「もう一度でんげきはだ!」
「ココドラ!」
「ココドラ、戦闘不能!」
その攻撃でココドラは倒れた。
ミツキはココドラを労いながらボールに戻し、最後の一つを構える。
「ブビィ、後はお前だ! 任せたぜ! ヨウタ、ぜってえ負けないぜ!」
そして最後の一匹を出す。
ブビィは小さく炎を吐いてやる気を見せている。
「僕も負けないよ! コリンク、でんげきは!」
「防いでひのこだ!」
コリンクが早速電気を放つがいともたやすく片手で防がれ、そのまま小さな炎を吐いてきた。
「スパークで突っ切れ!」
しかし炎の中に電気を纏って突進、そのままブビィに直撃した。
「うん、次はでんげきはだ!」
「させねえぜ! ほのおのパンチ!」
続けて電気を浴びせようとしたが先に炎を纏った拳を食らって中断してしまう。
「はじけるほのおだ!」
「下がって避けるんだ!」
相手が小さな火球を後ろに跳んでかわした、と思ったが、炎が弾けて周りに飛び散りコリンクはそれを食らってしまった。
「もう一度だ!」
「なら高く跳ぶんだ!」
そして再び火球が発射される。しかし今度は高く跳躍することで難を逃れた。
「今だ、やれ! ほのおのパンチ!」
と、思ったのもつかの間。
コリンクを追いかけるようにブビィも跳び、再び炎を纏った拳が振り下ろされた。
「コリンク!」
「コリンク、戦闘不能!」
コリンクは地面に叩きつけられ起き上がらない。
「よって勝者、ヒガキタウンのミツキ君!」
「よし、やったぞブビィ!」
「うう、負けた……。ありがとうコリンク、ゆっくり休んでくれ……」
「サンキューブビィ、お前も休めよ!」
勝負が決して、二人は相棒をボールに戻した。
そしてミツキがヨウタに駆け寄る。
「ヨウタ。お前もなかなか強かったけど、もっとポケモンのタイプや特性に注意したほうがいいぜ」
「うん……。バチュルのでんきがなあ……」
「ま、次も負けねえからな! じゃあな、ヨウタ、みんな!」
「うん、じゃあね!」
そして彼は去ってしまい、残されたヨウタはみんなと一緒にポケモンセンターに向かった。