08 決勝戦 レッドVSキョウヘイ
01
「とうとうポケモンワールドトーナメントも大詰めとなります! 決勝戦、レッドVSキョウヘイだーッ!!」
「…… …… ……」
実況が入り、二人は向かい合う。
レッドは無言で腰に手を伸ばして、ベルトについたピンポン大の紅白球、モンスターボールの真ん中にあるスイッチを押してソフトボール程の大きさに膨らませて、構える。
「レッド君。絶対、負けないよ」
そして彼の対戦相手、キョウヘイも、普段の人懐っこい笑顔とは正反対の真剣な表情で、同じくボールを構えた。
「ぼくも、絶対に負けない。行け、ピカチュウ!」
「ゆけっ、ルカリオ!」
二人がボールを投げたのはほぼ同時だった。
そしてピカチュウとルカリオ、二匹は同時にバトルフィールドに姿を現した。
「まずは小手調べだ、はどうだん!」
ルカリオが体の奥から撃ち放った、青いエネルギー弾。それはブレること無く真っすぐにピカチュウに向かって行く。
「ピカチュウ、この技は避けられない。アイアンテールで弾くんだ!」
しかしピカチュウの眼前に迫ったその球は、軽く跳んで、振り下ろされた硬い尻尾に弾かれて地面に衝突。弾けてしまった。
「そのピカチュウ、なかなか鍛えられてるみたいだね。だったらしんそく!」
「横に跳ぶんだ!」
続けてルカリオは目にも留まらぬ速さで接近してくるが、横に跳んで回避する。
「ボルテッカー!」
「かわしてはどうだん!」
通り過ぎ、見せてしまった無防備な背中にピカチュウが電気を纏って突進してくる。
ルカリオは高く跳躍してそれを避け、空中から青いエネルギー弾を発射した。
「アイアンテールで打ち返せ!」
しかしピカチュウは再び硬い尻尾を叩きつけ、その弾は軌道が変わって今度はルカリオに迫った。
「ルカリオ、もう一度はどうだん! 相殺するんだ!」
2つのエネルギー弾がぶつかり合い、弾けた。
辺りに衝撃で煙が立ち込める。
「今どうなっているんだ……?」
キョウヘイが注意深く見つめていると、煙の中から電気を纏ったピカチュウが現れる。
「まずい……! ルカリオ、かわせ!」
しかしルカリオはピカチュウが来るのが分かっていたらしく、指示が出されるより先に高く跳んでいた。
「ルカリオ! さすがルカリオ、頼れるぅ! 波動を感知したんだな!」
「惜しい、波動か……!」
ルカリオは相手の波動をキャッチして動きを感知することが出来る。煙に紛れて攻撃する作戦は失敗に終わってしまった。
「はどうだんだ!」
相手は着地すると同時に振り返り、またもエネルギー弾を発射した。
「避けてつっこめ!」
「誘導してぶつけるつもりだね、そうはさせないよ! はどうだん!」
「ボルテッカー!」
ピカチュウは電気を纏った突進でたやすくその技を突破して、相手の股下をくぐり抜ける。
「まずい、跳ぶんだ!」
「もう一度ボルテッカーだ!」
ルカリオは高く跳躍したが、こちらもすぐに電気を纏い追いかける。
「くっ……!」
背中にボルテッカーが直撃。
「ボルテッカーが決まった!」
「アイアンテール!」
ルカリオが落下したところに、さらに自分に飛んできた弾を尻尾で弾いて命中させた。
「ルカリオ、戦闘不能!」
「よし、よくやったピカチュウ」
「ありがとうルカリオ、ゆっくり休んでくれ。
すごいやレッド君、まさかルカリオがピカチュウにやられるなんて思わなかったよ。けど次はそうはいかないよ! 行け、ウインディ!」
彼は次に、立派なたてがみで橙色の体、所々に黒いラインが入ったポケモン、ウインディを出した。
「しんそく!」
ウインディが目にも留まらぬ速さで接近。
「横に避けろ!」
「だいもんじ!」
ピカチュウは横に転がってなんとか難を逃れたが、続けて飛んできた大の字の炎を避けられず一撃で倒れた。
「……ありがとうピカチュウ、戻って休むんだ。次はお前だ、カビゴン!」
続けて出したのは、グリーン戦でも登場したカビゴン。
砂煙を上げながら着地して、あくびをしている。
「だいもんじ!」
「受け止めろ!」
再び大の字の炎が放たれるが、カビゴンは両腕を交差させてたやすくそれを受け止めた。
そして余裕たっぷりににやりと笑う。
「あまり効いていない。この攻撃ではまずかったか?」
「さすがカビゴン、特防が高いな。それにきっと、特性はあついしぼうだ……!」
キョウヘイはごくりと息を呑み、
「けど、これならどうだ! インファイト!」
しかしすぐに笑みを浮かべて指示を出した。
「受け止めるんだ!」
接近してくる相手に備えて、足を踏みしめ防御態勢を取る。
しかしウインディは前足で殴ったり思いきり後ろ足で蹴ったりしてガードを崩し、連続攻撃を決めた。
「よし!」
しかし、まだ倒れない。
「なっ!?」
「カビゴン、捕まえて地面に叩きつけろ!」
距離を取る前に前足と頭を掴み、体重を込めて横倒しにした。
「じしん!」
そして思いきり足踏みして衝撃波を起こし、ウインディは避けられず直撃。
「ここでじしんが決まった! 効果は抜群、一撃でダウン!」
「ウインディ、戦闘不能!」
「さっきのインファイトで防御が下がっちゃったからか……!」 ごめんウインディ、ゆっくり休むんだ」
キョウヘイは自分の指示の迂闊さに歯ぎしりしながら、ウインディを戻した。
「けど、絶対負けないよ! 最後は僕の相棒だ! 任せたぞ、エンブオー!」
キョウヘイが最後の一匹として出したポケモンは、エンブオー。
太くたくましい力強さを感じさせる腕に、燃えるアゴヒゲを持ったポケモンだ。
「かたや余裕しゃくしゃく! かたや疲れを見せております!」
確かに、カビゴンはすでに激しく消耗しているがエンブオーは体力が有り余っている。
この戦いは勝ち目が無いだろう。
「カビゴン、じしん!」
「ジャンプだ!」
「なっ、あんな身軽なのか……!?」
カビゴンが足踏みして発生させた衝撃波はジャンプでたやすく避けられ、そのままカビゴンまで迫ってくる。
その鈍重そうな外見からは予想も出来ない身軽な動きに、レッドは度肝を抜かれた。
「アームハンマー!」
そして腕を右に突き出しながら突っ込む、ラリアットのように喉元に技を食らわせた。
カビゴンは押し倒されて起き上がらない。
「強烈な一撃! たまらずダウンです!」
「カビゴン、戦闘不能!」
「……驚いた。カビゴン、ゆっくり休んでくれ」
出てきたのはその言葉だけだった。
「キョウヘイ君、やっぱり決勝に勝ち上がるだけあって強いな。けど、負けないぞ! 勝つのはぼくだ! 行け、フシギバナ!」
レッドも最後の一匹を出した。さり気なくこの大会全てのバトルに出ている、彼の相棒だ。
「相性は不利だ、一気に攻めるぞ! ヘドロばくだん!」
「フレアドライブ!」
フシギバナはヘドロの塊を次々発射するが、エンブオーは炎を纏って構わず突進する。
「避けろ!」
フシギバナは横に跳ぶが、エンブオーはすぐに切り返して激突した。
「効果は抜群だ! フシギバナ、なんとか持ちこたえる!」
「オッカのみを持ってて良かった……」
しかし安心するのはまだ早い。おそらく相手は一撃では倒せない、対してこちらは次攻撃を受けたらやられてしまうのだから。
フシギバナから緑色のオーラが出て来る。
体力が減ったことで特性しんりょくが発動したらしい。
「かえんほうしゃ!」
「かわしてヘドロばくだん!」

激しい炎が迫ってくるが、避けてヘドロを発射する。
だがこちらの攻撃も避けられてしまう。
「フレアドライブ!」
先ほど突進してきたので、さほど 距離は開いていない。
エンブオーは再び炎を纏い、走り出した。
「じしんだ!」
「……っ、跳ぶんだエンブオー!」
しかしフシギバナが衝撃波を起こし、慌てて空中に逃れる。
「やっぱり、跳んで避けたね」
「えっ……!?」
それを見て、レッドはにやりと笑った。
キョウヘイはその反応にまず驚き、直後自分の失敗に気付いた。
「エンブオー! 早く! フレアドライブだ!」
「遅い! ヘドロばくだん!」
急いで指示を出したが、間に合わなかった。
エンブオーは纏っていた炎の鎧を脱ぎ捨て跳躍した為、今は無防備だ。
そしてまだ落下に入っていないので、最初のようにヘドロを炎で防ぎながら攻撃も出来ない。
炎を纏い始めたところにヘドロが直撃。
結局攻撃の態勢に移れないまま落下して、着地するのが精いっぱいだった。
「リーフストーム!」
だがその瞬間、尖った葉っぱの嵐に襲われた。
しんりょくで威力も上がっている。
エンブオーは着地に気を取られすぎていて防御が間に合わず、もろに食らってしまう。
「エンブオー、戦闘不能!」
エンブオーはその攻撃に耐えきれず仰向けに倒れ、起き上がらなかった。
「エンブオー!? ……ごめんよ、エンブオー。勝たせてあげられなくて」
「やった……! よし、ぼくの勝ちだ! よくやったなフシギバナ!」
キョウヘイは申し訳なさそうなエンブオーに歩み寄り頭を撫で、レッドも嬉しそうなフシギバナに駆け寄り強めに撫でた。
「ありがとう。じゃあ、ゆっくり休んでくれ」
そして二人とも、自分の相棒をモンスターボールに戻した。
「優勝は……! レッドだーッ!!」
「……!?」
「ありがとうレッド君、すごく楽しいバトルだったよ」
キョウヘイが、言いながら右手を差し出す。
「ぼくも楽しかったよ」
レッドは、返事とともににそれを掴んだ。
「けど、次は負けないよ! またいつかバトルしよう!」
「うん、もちろん! 次も負けないぞ!」
二人は互いの健闘を称えて、固く握手を交わしている。会場からも拍手が沸き起こっている。
「チャンピオンズトーナメント!
これにて終了ゥ!!
次の大会もヨロシクゥ!!」
「じゃあ、また会おう」
レッドの言葉にキョウヘイはコクリと頷き、一瞬見つめ合う。
そしてどちらともなく手を離して、互いに背を向け歩きだした。
バトルフィールドを後にする二人へ、しばらくの間拍手と歓声が送られ続けていた。
その後表彰式が行われ、レッドには優秀記念のメダルが、他の人達には残念……、参加賞の色のついたかけらが送られ、ポケモンワールドトーナメント・チャンピオンカップは無事幕を閉じた。


せろん ( 2013/12/16(月) 22:18 )