01
「リビングレジェンドレッド!
その強さ本物なのかあ!?」
歓声の中、レッドはバトルフィールドに足を踏み出す。
「カントー最強の遺伝子!
オーキド博士の孫グリーンッ!」
そして彼のライバルグリーンも、それに遅れて現れた。
「三年振りのバトルだね、グリーン」
「ああ、リーグ以来だな」
ついに向かい合う宿命のライバル。二人は互いに目線を逸らすこと無く、真っすぐに睨み合っている。
「オレもあの時から強くなったんだ! 行くぜレッド! お前じゃオレには勝てねえ、今度こそ教えてやるよ! このオレ様が世界で一番強いってことをな!」
「いいや、絶対に負けない! ずっとお前の背中を追い続けて、あの時ようやく追いつくことが出来たんだ! 行くぞグリーン! このバトル、ぼくが勝つ!」
そしてこれまで表面上は穏やかにたゆたって見えていた炎が、とうとうその本性を表した。
二人の闘志が目に見える程に激しくぎらつき、燃え上がっている。
「行け、ラプラス!」
「出て来いナッシー!」
互いの意志をぶつけ合ったレッドとグリーンは、勢い良くモンスターボールを投じる。
フィールドに二匹のポケモンが姿を現した。
レッドが出したのは、首が長く穏やかそうな顔をしていて、背中に突起物のついたこうらを備えた水色のポケモン、のりものポケモンラプラス。
グリーンが出したのはヤシの木に似たポケモン、ナッシーだ。
「最初の対面はラプラスとナッシー! お互いに弱点を突くことが出来ます」
「へ、やっぱりラプラスで来たか。そいつなら、オレの大体のポケモンに弱点を突けるからな」
グリーンが、口角を得意げに吊り上げながら呟く。
「(恐らくナッシーはれいとうビームで一撃だ。けど、グリーンが弱点をつけるからって理由だけでナッシーを出してくるとは思えない。下手したら自分がやられるんだから……)」
「どうしたレッド、来ないならこっちから行くぜ! サイコショック!」
「れいとうビームで迎え撃て!」
どうやら考える時間を与えてはくれないらしい。相手の指示に、とっさにレッドも反応する。
実体化した念波と冷気の光線がぶつかり合い、どちらも弾けて消えてしまった。
「ならリーフストームだ!」
「れいとうビームで壁を作れ!」
次は尖った葉っぱの嵐。しかしそれも地面からどんどん高くに凍らせて作った氷の壁で勢いを弱め、
「ハイドロポンプ!」
勢いの激しい水流で押し返す。
「横に避けろ!」
目の前まで迫った激流は、効果が今一つでもなるべく食らいたくない。横に大きなステップを踏んで回避する。
「次はれいとうビームだ!」
「ナッシー、突っ込め!」
「なにっ!?」
これを避けたところに畳みかける。そう考えていたレッドにとって、これは予想外だった。
彼が無策で突っ込んでくるはずが無い、恐らく何かある……!
「弱点を突いた! しかしナッシー、きあいのタスキで耐えました!」
ナッシーはその技の直撃を、苦悶の表情を浮かべながら耐えラプラスに迫った。
「なっ、きあいのタスキを持ってたのか……!」
確かに1回戦の時もれいとうビームをかわさなかった。あれはなんとか耐えられるから、じゃ無くて、確実に耐えるからだったのか……!
そしてすでに目の前まで迫っている、これじゃあ……!
「この距離なら防げないぜ! リーフストーム!」
回避も防御も間に合わない……!
尖った葉っぱの嵐が、ラプラスに襲いかかった。
「効果は抜群だ! ラプラス、一撃でダウン!」
ナッシーはかなり特攻が高い、その技を耐えられる筈が無かった。
ラプラスはべしゃりと潰れ、再び頭を持ち上げることは無かった。
「……ありがとうラプラス、ゆっくり休んでくれ。後少しだ、任せたフシギバナ!」
彼の二匹目は、背中に花を咲かせた四足歩行の巨大な蛙、フシギバナ。
「サイコショック!」
「つるで叩き落として接近しろ!」
またも飛んできた念波は、リーフストームの反動で特攻が下がっている為威力が落ちている。フシギバナはたやすくつるではたき落としながら近づく。
「ナッシー、もう充分だ。だいばくはつ!」
「させるか、じしんだ!」
ナッシーの体から光が漏れ出すが、ほぼ同時にフシギバナが地面を踏みしめ衝撃波を起こした。
ついに爆発する、と誰もが思った。しかし爆発する寸前に衝撃がナッシーに届き、耐えきれず倒れた。
「ナッシー、戦闘不能!」
間一髪、なんとかだいばくはつを阻止出来た。
レッドは安心して大きく一呼吸して胸をなで下ろした。
「戻れ、ナッシー。次はお前だ、リザードン!」
彼の二匹目は、二足歩行で背中に翼を持ち、尻尾の先に炎を灯したリザードンだ。
「戻れフシギバナ! 行け、カビゴン!」
「リザードン、お前も戻れ! 行け、ギャラドス!」
向かい合った二人のパートナー。しかしその対決は実現しなかった。互いにポケモンを交替して、三匹目を出す。
レッドが投げたボールから重たい音とともに姿を現したのは、太った体にのん気そうな顔のポケモン、カビゴン。
グリーンが出したのは、龍に似た、長い胴体に細長いひげを生やしたギャラドス。
ギャラドスがけたたましく吠え、カビゴンを威嚇する。
「ギャラドスの特性、いかく発動! これでカビゴンの攻撃力は下がってしまった!」
「けど、ここは行くしかない! カビゴン、のしかかりだ!」
「避けてたきのぼり!」
カビゴンは走って接近してとぐろを巻いているギャラドスに迫るが、かわされその滝をさかのぼるような勢いの突進を背中に食らってしまった。
「ついでに尻尾を叩きつけろ!」
「尻尾を掴んで投げるんだ!」
続けて尻尾を振り下ろして来たが、すぐに寝返りをうって受け止め、立ち上がる。
そして思いきり一本背負いをして、フィールドに叩きつけた。
「のしかかり!」
更にそこに、全体重を込めてのしかかった。
しかし威嚇で攻撃力が下がっている為、ギャラドスは怯まずすぐに起き上がる。
「だったらもう一度のしかかりだ!」
「ギャラドス、飛べ!」
再び攻撃しようとしたが、甘かった。飛んで空に逃げられてしまう。
「もう一度たきのぼりを食らわせてやれ!」
「くっ……! かわしてくれ!」
そして高くから滝のごとく激しい勢いで落ちてくるギャラドス。その速さは、とてもじゃないがカビゴンが避けられる程のものでは無い。
「ダメだ、受け止めろ!」
慌てて指示を切り替えた。カビゴンは走り回るのを止めて、頭を守るように両腕を交差させて構える。
耳に響く、激しい衝突音が会場に轟いた。
「おっと、まだ倒れてはいない!」
しかし防御の甲斐もあって、カビゴンはふらつきそうになった足を踏みしめて持ちこたえた。
「だったらこれで終わりにしてやるぜ! じしんだ!」
「カビゴン、かわして接近しろ!」
「なっ、マジかよ!」
地面を伝わる衝撃波。しかし助走をつけて高く跳躍してかわし、そのまま接近する。
「良かった……」
グリーンは驚いているが、今のはレッドにとっても不安が残る指示だった。重く鈍いカビゴンのジャンプ力では飛び越えられるか分からなかったからだ。
「ならたきのぼりだ!」
「カビゴン、タネばくだん! 投げつけろ!」
思いきり突進してくるギャラドスに硬い殻を持つ種を投げつけたが、勢いを止めきれなかった。
もう眼前に迫ってきている。
「受け止めるんだ!」
しかしそれで充分だった。少しでも勢いを弱くすることが目的だったのだから。
全身を使ってその突進を受け止める。
「倒してのしかかり!」
そして横に倒して、顔面に思いきりのしかかる。
「ギャラドス、げきりん!」
ギャラドスは暴れまわろうとしたらしく、起き上がって目つきが更に凶暴なものに変化して吠えた。
早速カビゴンに尻尾を叩きつけようと振り上げたが、いきなりピタリと動きが止まってしまった。
「ちっ、これは……!」
グリーンが舌を鳴らす。
「ギャラドス、のしかかりの追加効果の麻痺で体が痺れて動けない!」
のしかかりは、たまに相手を麻痺させることがある。どうやらその効果が発動したらしい。
「よし、今だカビゴン! のしかかり!」
相手が静止している。その隙を狙い、胴体にのしかかる。
「ギャラドス、戦闘不能!」
さすがにもう耐えきれないらしい。
ギャラドスは最後に吠え、倒れた。
「戻れギャラドス! いいかレッド、たまたま運が良かっただけで調子に乗るんじゃねえぜ! こいつで教えてやるよ! オレ達の強さをな!」
彼はギャラドスを戻すと最後のモンスターボールを高く掲げて、
「出て来い! リザードン!」
そのかけ声とともに勢い良く投じた。
フィールドに、再び翼を持った巨大なトカゲが姿を現した。
「まずはそいつからだ! きあいだま!」
「タネばくだん!」
カビゴンの投げた種は、しかしリザードンが渾身の力で放ったエネルギー球には威力が及ばなかった。
種はたやすく弾かれ、きあいだまが迫ってくる。
「かわすんだ!」
間一髪、なんとか身を翻して避けられた。しかしそれがそう何度も出来るとは思えない。
「エアスラッシュ!」
今度は空気を切り裂く刃だ。これもなんとか避ける。
「おいおい、どうしたんだよレッド! 避けてばかりじゃ勝てねえぜ!」
「ああ、分かってるさ!」
彼の言う通りだ。……ここは、勝負に出るしかない。
「ならいいんだよ! きあいだまだ!」
「カビゴン、避けてのしかかり!」
渾身の力で放たれた球を避けて、接近する。
「へ、来たか! リザー……ドン……!?」
グリーンは迎え撃とうとしたが、声は止まってしまった。カビゴンが一瞬でリザードンの背後に回り込み、のしかかったのだ。
「な、どういうことだ!?」
「カビゴンの持ち物はせんせいのツメ。その効果が発動したのさ」
慌てふためくグリーンに、レッドが静かに解説した。
「せんせいのツメ発動! カビゴン、先手を取った!」
「イチかバチかだったけど、発動して良かったよ」
「けどこれで終わりだ! リザードン、抜け出せ!」
「カビゴンにのしかかられて抜け出せるはずが……!」
レッドが言っている間にも、リザードンはカビゴンの重たい体を背中で持ち上げ、這って少しずつ抜け出していく。
「やるな……! 逃がすなカビゴン、翼を掴め!」
「これだけ抜け出せれば充分だ! きあいだま! 上空に撃て!」
すでに上半身は抜け出している。逃がすまいと両翼を抑える。
しかしリザードンは自由になった両腕を使って、上空にエネルギー球を放った。
「なにを……! そうか! カビゴン、すぐに離れろ!」
その球は、天井に届くかという程高くに昇ると再び落下してきた。
そして狙いに気づいた。落下するきあいだまをぶつけることが目的なのだと。
カビゴンはすぐさま後ろに跳び下がり、リザードンは自由になった。
「リザードン、尻尾できあいだまをはじけ!」
そして落ちてくる球に自身も飛んで位置を合わせ、一回転して思いきり薙いだ尻尾の力で軌道が変わりきあいだまはカビゴン目掛けて真っすぐ飛んでくる。
「くっ……!」
カビゴンは両腕でそれを防ごうとしたが、無意味だった。
「カビゴン、戦闘不能!」
その威力の前では防御も意味を為さず、カビゴンは重たい音を立てて仰向けになった。
リザードンが反動を受けている。持ち物はいのちのたまなのだろう。
「……これで、ぼくも最後だ! 頼むぞ! フシギバナ!」
リストバンドで汗を拭って、ボールを投げる。
とうとう互いに最後の一匹。泣いても笑っても、これで最後だ。
レッドが出したのは、背中に花を咲かせた大きな蛙。フシギバナ。
フシギバナもリザードンも、レッド、グリーンの二人が初めて手にしたポケモンの最終進化系だ。
ポケモン研究の権威オーキド博士からそのポケモンとポケモン図鑑を受け取り、二人は旅に出た。
あれから三年。再びライバル同士の二人のパートナーが向かい合った。
もう逃げられない、戦うしかない。
「懐かしいなレッド! 三年前のリーグも、最後に残ったのはオレのリザードンと……」
「うん。ぼくのフシギバナ、だったよね」
向かい合った二人と二匹は、かつて繰り広げた戦いに思いを馳せる。
「行くぞグリーン! 絶対に勝つ!」
しかしそれも、すぐに打ち切った。大事なのは三年前の戦いではなく、今のこのバトルだ。
「来いよレッド! 勝つのはこのオレ様だ!」
最後の戦い、相性も最悪だ。しかし不思議と、負ける気はしなかった。
「ヘドロばくだん!」
「かわしてりゅうのはどう!」
リザードンはヘドロの塊を飛んでかわし、大きな口から衝撃波を放つ。
「受け止めろ!」
しかしフシギバナもつるを伸ばして交差させ、受け止めた。
「なかなかやるじゃねえか。だったら次はエアスラッシュだ!」
「つるで軌道を逸らしてヘドロばくだん!」
今度は空気を切り裂く刃で攻撃してきたが、つるを斜めに伸ばしてそのラインを伝わらせた。結果刃が傷つけたのは、フシギバナではなくフィールドだった。。
「尻尾ではじけ!」
そしてこちらも仕掛ける。ヘドロを発射したが、尻尾の一撃で叩き落とされてしまった。
「つるを伸ばして捕まえるんだ!」
このまま自由に飛ばれていては勝ち目が無い。
とにかく、動きを封じなくては。
しかしもちろん簡単には捕まってくれない。
ヒョイヒョイとたやすくかわして攻撃しようとしてくるが、こちらも負けじとかわしたり、軌道を逸らして避けたりしながらつるを伸ばす。
しかしこのままでは埒があかない。仕掛けなければ。
「ヘドロばくだん!」
「だいもんじ!」
どうやら互いに同じことを考えていたらしい。同時に仕掛けた攻撃は、衝突せずにすれ違った。
「くっ、かわせ!」
「お前もかわせ!」
リザードンが身を翻してかわし、フシギバナも横に跳んで間一髪避ける。
「つるを伸ばしてヘドロを掴め!」
そして自分の真横で静かに鎮火してゆく炎に若干怯みながらも、つるで掴んだ。
「そのままぶつけろ!」
リザードンは高度を上げて一度はかわしたが、
「もう一度だ!」
ハンマー投げのように横に一回転して再び迫ったヘドロの塊を、今度は食らってしまった。
衝撃で地面に向かって頭から落ちるが、空中で回転して足で着地する。
その瞬間、リザードンを炎のような橙色のオーラが包んだ。
「リザードンの特性、もうか発動!」
もうか。追い詰められると、ほのお技の威力が上がる特性だ。
連戦のダメージでそれが発動したらしい。
「へ、一気に畳みかけるぞリザードン! だいもんじ!」
先ほどのそれよりも激しく燃える大の字の炎が、眼前に迫って来る。
「ヘドロばくだんで軌道を逸らしてかわすんだ!」
フシギバナはそれの端の方にヘドロをぶつけて軌道を少しだけ横にずらすことに成功し、その反対に跳んだ。
「焼き尽くしてやるぜ! だいもんじ!」
「フシギバナ!?」
しかし、リザードンが目の前に迫って来ていた。
逃げられないようにフシギバナを押さえて、その大きな口から激しく燃え盛る大の字の炎を放った。
「あーっと、効果は抜群だーっ!!」
「頼むフシギバナ、耐えてくれ……!」
「ヘッ、これでオレ達の勝ちだ」
いのちのたまに加えて、特性のもうかまで発動している。耐えられるはずが無い。勝利を確信して、彼は笑った。
辺りには焼け焦げた匂いと、煙が立ち込めている。
「フシギバナ! ……まだだ、勝負はまだ着いてないぞ! グリーン!」
「はぁっ……!?」
しかし、彼の耳には確かに聞こえた。レッドの、その言葉が。
何か凄く嫌な予感がする。何を言っているんだ、今のを耐えられる筈がない。しかし、それでもその予感は収まらなかった。
そして見えた。やや晴れてきた煙の中に光る橙色のオーラの他に、もう一つ。
緑色の、フシギバナの特性、しんりょくが発動したことを示すオーラが。
まだだ。本当に、まだフシギバナは倒れていなかった……!
「離れろ! リザードン!!」
「フシギバナ! リーフストーム!!」
その声は、ほぼ同時だった。バッと下がったリザードンを、尖った葉っぱの激しい嵐が飲み込む。
そして嵐が収まり、同時にリザードンも崩れ落ちうつ伏せになった。
尻尾の炎は弱々しく燃えているが、先ほどまで纏っていたオーラは消えてしまっていた。
「リザードン、戦闘不能!」
「やった……!」
「嘘だろ……!」
肩の力が、ドッと一気に抜け落ちた。
「第2回戦、レッドVSグリーン! 歴史に残る一戦! 勝ったのは! レッドだーッ!! 相性の差を覆しての見事な勝利ですっ!!」
「やったぞ、フシギバナ! ぼく達の勝ちだ!」
レッドはフシギバナに駆け寄り、抱きしめた。
「……わりいなリザードン、勝たせてやれなくて。じゃあ、ゆっくり休めよ」
グリーンはリザードンに歩み寄り、頭を撫でてボールに戻した。
「……はあ」
彼は一つ大きく息を吐いて、ライバル、レッドに近づく。
「全力を賭けたのに、勝てなかった……!
……レッド! ……素直に認めるよ、お前達の勝ちだ!」
そして一度うつむいたがすぐに顔を上げ、言いながら、手を差し出す。
「グリーン……! けど、グリーンも凄く強かったよ。今回は運が良かったから勝てただけで……」
「うるせえ、んなことどうでもいいんだよ! お前が勝って、オレが負けた! なのにそんな風に言われちゃこっちが惨めになるだろ! ……大体、運も実力の内だしな。勝ったのは、レッド。お前達の実力だよ」
レッドは感激してその手を握りしめ、しかし彼に実力では劣っていたと言おうとして遮られた。
彼は最後の方は恥ずかしくなったのか、顔を逸らして頬を人差し指でかいている。
「……ははっ」
「わ、笑ってんじゃねえよ!」
その様子がなんだかおかしくて思わず笑いを零したが、怒られてしまった。
「ごめん、つい……」
「……はあ。……そういえばよ、レッド。なんでフシギバナはだいもんじを耐えたんだ? 絶対倒せると思ったのに」
「ああ。実は大会が始まる前に、グリーンとのバトルの為に持ち物をオッカのみに変えておいたんだ」
レッドは普段フシギバナに能力下降を一度だけ戻すしろいハーブを持たせていた。大会が始まったら持ち物と技の変更は行えない。しかしグリーンとはこの大会で当たる気がしていたので、持ち物をあらかじめ変えておいたのだ。
「それでもあのだいもんじは耐えられるか不安だったんだけど……。良かったよ、なんとか耐えてくれて」
言いながら、隣のフシギバナの頭を撫でる。
「なるほど、だからか。レッド! 決勝戦、絶対負けんじゃねえぞ! お前に勝つのはオレなんだからな! じゃ、あばよ!」
「ああ、もちろん勝つつもりだよ! じゃあな、グリーン!」
踵を返して歩き出し、背を向けながら軽く手を降るグリーンに、こちらも振り返した。
「ありがとうフシギバナ、お前もゆっくり休んでくれ」
そして相棒をボールに戻して、彼もバトルフィールドを後にした。