03 レッドVSシロナ
01
とうとう始まるのだ、会場の熱気も高まっている。
ポケモンワールドトーナメント第1回戦第1試合、レッドVSシロナ。
伝説のポケモントレーナーと、シンオウ地方最強の現チャンピオンの対決。
観客達が期待に胸を膨らませる中、レッドは足を踏み出した。
「あたしも好きかも、ここの雰囲気……。戦おうとする人が
どんな人か伝わってくる……」
「負けませんよ、シロナさん」
最初に出すのはどのポケモンだろう、3体は誰を選んだのか?
ない交ぜになった不安と緊張を解き放つかのようにモンスターボールが開き、フィールドに2匹のポケモンが姿を現した。
レッドが出したのは額に赤い珠を持ち、紫色の細やかな体毛、しっぽの先が2つに別れた神秘的なエーフィ。シロナが出したのは、頭に黒い雫がついていて、胸と手の甲からトゲが生えているルカリオ。
エーフィはエスパー、ルカリオはかくとう・はがねタイプ。
相性は有利でも不利でも無いが、彼は心の中でよし、と言った。
「ルカリオ、ストーンエッジ!」
「エーフィ、リフレクター!」
先に動いたのはエーフィだ。物理攻撃の威力を弱める不思議な壁を貼り、飛んできた岩のダメージを和らげる。
そしてルカリオも体力が少し削られている、ということは持ち物は攻撃する度にHPが少し減ってしまうが技の威力が上がる道具、いのちのたまだろう。
彼女が出したポケモンは、そして指示は予想通りだった。
「ルカリオ、戻って!」
「エーフィ、戻れ!」
彼女がポケモンを交替したが、レッドもそれに合わせてエーフィを戻す。
「ミカルゲ、行きなさい!」
「行け、カイリュー!」
……よし、ここまでは想定内だ。
「おにび!」
「りゅうのまいだ!」
ミカルゲが不気味で怪しい炎を放ってカイリューは火傷状態になるが、気にも止めずに神秘的で力強い舞を激しく踊り自分の攻撃と素早さを上げた。
そして終わってから木の実を取り出し、ほおばって笑顔になる。
「ラムのみを持ってたのね……!」
ラムのみ。食べると全ての状態異常を回復する木の実だ。
火傷は攻撃力が下がってしまうが、この木の実を持っているため気にせずりゅうのまいを指示出来たのだ。
「きっとげきりんを耐えられない……! かげうち!」
「突撃しろ、カイリュー! げきりん!」
ミカルゲが影を伸ばして攻撃するが、リフレクターの効果もありものともせずに突撃する。
「……!」
「ミカルゲ、戦闘不能!」
審判がジャッジを下した。
直撃して背後に飛ばされたミカルゲは、シロナの目の前に落下した。
だがカイリューも、少し顔を歪めている。ダメージを受けたのだろう。
「ということは、ミカルゲの持ち物はゴツゴツメットか……」
ゴツゴツメット。ポケモンに持たせると打撃技を受けた時相手にもダメージを与える、という効果だ。
それで先ほどダメージを受けたらしい。
「やるわねレッド君。けどその技は一度使えば少しの間暴れ続ける。行って、ルカリオ!」
そう、げきりんはドラゴンタイプの技。はがねを持つルカリオには効き目が薄いのだ。
「跳んでストーン……!」
りゅうのまいで素早さも上がっているカイリューが、一瞬で目の前まで近づいて大きなしっぽを薙ぎ払った。
それを間一髪除け空中から岩を食らわせようとしたが、間に合わない。本能のままに暴れまわる拳を叩きつけられ、落下してしまう。
「ストーンエッジ!」
しかし受け身を取ってすぐに立ち上がり、今度こそ岩を飛ばした。
相手はちょうど空中で吠えていたところで、全弾直撃する。効果は抜群だがリフレクターの効果でダメージは軽減された。
普通ならここでリフレクターは消えてしまうが、エーフィの持ち物はひかりのねんど。
持たせるとリフレクター、ひかりのかべの効果が通常より長く持続するという効果の為、まだ壁は残っている。
そしてカイリューの様子は、理性を感じさせない凶暴なものから普段の様子に戻った。
「ルカリオ、回り込んで!」
「カイリュー、後ろだ!」
カイリューに指示は聞こえていたはずだ。しかし見向きもせず地面に頭を叩きつける。
「混乱か……!」
げきりんは強力だが、暴れ終わると混乱状態になってしまう技だ。
混乱している為、訳も分からず自分を攻撃したのだろう。
「今よ、ストーンエッジ!」
チャンスは訪れた。シロナは隙を逃さず指示を出した。
「か、カイリュー! ほのおのパンチ!」
尚も地面に頭を打ちつけているカイリューの背後に瞬時に回り込み背中に岩をぶつける。
「しんそく!」
それに体が一瞬傾いた。さらに間髪入れずに突進すると、とうとうカイリューは崩れ落ちた。
「カイリュー、戦闘不能!」
「ありがとうカイリュー、戻ってくれ。行け! エーフィ!」
再びそのしなやかな体が姿を現す。
「ストーンエッジ!」
「サイコキネシスでお返しだ!」
エーフィは自分に向かって真っ直ぐ飛んでくる岩を強力な念力で受け止め、それを全て投げ返す。
「さすが、良く育てられているわね……!」
「シロナさんこそ。めざめるパワー!」
一転して自分に牙を向く岩の刃を横に駆けてかわしたが、さらに燃える炎のような橙色の光の球が迫ってくる。
「しんそく!」
だが簡単に食らってはくれないらしい。その真横を通り抜け一瞬で距離を詰め、すくい上げるように思いきり殴られてしまった。
「……サイコキネシス!」
ルカリオの持ち物はいのちのたま。リフレクターが無かったら危なかった……!
ダメージを軽減した直後に時間が来て、リフレクターは消滅した。
エーフィが殴り飛ばされながらも念力で反撃すると、限界らしくルカリオは崩れ落ちた。
「ルカリオ、戦闘不能!」
「ありがとうルカリオ、良く頑張ったわね。後はあなたよ。天空に舞え、ガブリアス!」
「やっぱり来たな……!」
予想はしていたが、思わず息を呑む。青紫を基調とするボディ、背中と尾にはヒレ、腕にはそれに似た形状の翼が生え、鋭く尖った爪を持ったドラゴンだ。
レッドがシロナの対策の際最も警戒していた彼女の切り札。
それがとうとうバトルフィールドに現れた。
「ガブリアス、じしん!」
「避けてシャドーボールだ!」
「弾きなさい」
ガブリアスがドン、と強く床を踏みつけると周囲に衝撃波が広がる。
エーフィも跳んで回避、続けて黒い影の球を放つが腕の一振りで容易く弾き飛ばされてしまう。
「だったら接近するんだ!」
「ストーンエッジ!」
飛んでくる岩を横にステップを踏み、時には跳ね避けながら接近した。
「行け! シャドーボール!」
「防いで地面に叩きつけなさい!」
そして眼前で球を放つが、両腕で防がれてしまう。そして爪が振り下ろされる。
「サイコキネシス!」
まずい、やられる。その技もダメージは与えられたが、勢いは全く止まらない。
「じしん!」
地面に叩きつけられた直後に、衝撃波が発生する。
直撃したエーフィは、動かなくなった。
「エーフィ、戦闘不能!」
「ありがとうエーフィ、休んでくれ。フシギバナ、後は頼んだぞ!」
これでレッドも最後の一匹。彼の切り札、たねポケモンのフシギバナ。
四足歩行でずっしりとした巨大な、カエルを連想させる形の体。そこここにぶつぶつといぼのようなものが見られ、頭には犬や猫のような形の三角の耳を持つ。
そして背中には、体色の緑に映える大きな赤い花が生えている。
「ガブリアス、じしん!」
「お前もじしんだ!」
早速攻撃を仕掛けるガブリアス。こちらも迎え撃つように足踏みして衝撃を起こし、2つの技はフィールドの中央でぶつかり合い相殺される。
「ストーンエッジ!」
「つるで防げ!」
またも飛んでくる岩の雨を、フシギバナは全て背中から伸ばしたつるで弾き飛ばす。
「ヘドロばくだん!」
「受け止めるのよ!」
今度は口からヘドロの塊を飛ばすが、両腕で防がれてしまう。
「ならつるで捕まえて引き寄せるんだ!」
「ガブリアス!」
フシギバナの伸ばしたつるが胴体に巻き付き、ぐいぐいと引き寄せられていく。しかしガブリアスも必死に踏ん張り、じょじょにバランスが変わっていく。
最初は抗うだけで精一杯だったガブリアスが、今では逆にフシギバナを引っ張っている。
「くっ、リーフストーム!」
「飛んでげきりん!」
このままではまずい、とつるを外して尖った葉っぱの嵐を巻き起こすが、相手もさすがチャンピオン。一瞬の隙を逃さず空中に舞い上がり、そこから勢い良く落下してきた。
「つるで防げ!」
フシギバナはあまり速くは動けない、つるも暴走するガブリアスの力の前には意味を為さず当たってしまった。
「……今だ、捕らえろ! リーフストーム!」
「耐えられた……!」
だが、まだ倒れない。今度は別の場所に向かって突撃しようとしたがつるを巻き付けて引き止め、尖った葉っぱの嵐を巻き起こし背中に直撃させた。
「……よし」
ガブリアスは暴れるのを止めて力無く地に落ち、うつ伏せになって倒れた。
「ガブリアス、戦闘不能!」
とうとう、ガブリアスを倒した。
「第1回戦! 勝ったのは! レッドだーッ!! これが実力なのか? 残ったポケモンは1匹ッ! 見事な勝利ですっ!!」
「お疲れ様ガブリアス、戻ってゆっくり休んで。
お見事です、すばらしい戦いだったわ。ポケモンが最大限力を発揮できるよう応援しつつ、冷静な判断であざやかに勝利を得たわね!」
「ありがとうございます、シロナさんもすごく強かったですよ」
レッドはフシギバナを軽く撫で、シロナもガブリアスを労ってからポケモンに戻し、2人は握手を交わした。

せろん ( 2013/11/10(日) 13:46 )