03
「とうとう、ここまで来たんだな」
いよいよ明日はポケモンリーグ決勝戦。対戦相手は、オレが挑み続けて来たトレーナー、初めてバトルした時からずっと目標にしてきたライバル、リョウジだ。
今日1日の汗を流してさっぱりしたアキトは、その後明日出すポケモン、覚えさせる技を決め終えてベッドに潜り、明日に備えてずっと早く寝よう、早く寝ようと目を閉じていた。
だがそうしているとリョウジのこと、これまでのこと、明日のこと。様々なことが次々と頭の中に浮かんできて眠れずにいたため、その気持ちを少しでも落ち着けようとドーム内の観客席の最前列に来てバトルフィールドを眺めていた。その隣では、ウインディが静かに佇んでいる。
「なあウインディ、覚えてるか? 旅に出て初めて立ち寄ったシノノメシティで、お前に言ったこと」
もちろん、とウインディが彼の顔を見て頷く。
「ホントにこの旅は、色んなことがあったよな」
カナエとダイスケと見て、聞いて体験したたくさんのこと。
リョウジやシンヤをはじめとする様々な人達との出会い。
何度も悪事を働きその度に退け、最後はミュウと自身を賭けて戦ったシッコク団。
幼い頃から求めていたそのミュウとの再会。
他にも、思い出せばきりが無い。
「まあ、まさかオレもこんな旅になるとは思っても見なかったけど」
特に、世界征服を企む悪の組織との戦い、なんていう空想じみたことが自分の身近に起こるだけで無く、その当事者になったことが。
今でも夢だったんじゃないかと思えるような様々な出来事に、思わず笑いがこぼれてしまう。
「……けど、それももうすぐ終わるんだ」
少し間を置いてから、この旅の終わりが間近に迫ってきているのが実感出来ず、しかしそれでも自身に認識させるためにつぶやいた。
長いようで短かった、オレ達の旅。その最後は最高の形にしたい。
旅の始まりからずっと追い続けてきたその背を、旅の終わりまで見つめ続けていたくない。
「明日のバトル、絶対に勝とうぜ。……いや、絶対に勝つ」
オレの、オレ達の旅に悔いを、負け続けた悔しさを残さないために。
これまでのことを思う。相手は初めて戦い一矢報いることも出来ず、それから幾度と勝負を挑み、しかし一度も敵わなかった最強のライバルだ。
彼は、リョウジは強い。小細工どころか、真っ向勝負ですら通じるか分からない相手だ。
だが、それでも負けられない。
「お前も負けたくないよな。リョウジに……。あいつの、エレキブルに」
アキトの言葉に、ウインディは元気に、やる気たっぷりに返事をした。
「やっぱり、旅に出てからずっと一緒だからオレに似たのかな?」
いや、逆かな? それとももともと? まあそれはいいか。
「オレも、リョウジにだけは絶対負けたくないんだ。お前がエレキブルに負けたくないみたいに。
……よおし、みんな出てこい! みんな! 明日のバトル、絶対勝とうぜ!」
少し、いやだいぶ狭いけど、明日のバトルで戦うポケモン達をボールから出して、みんなでおー! と拳を掲げてかけ声を上げた。