01
「オノノクス、げきりんだ!」
「バイバニラ!」
「バイバニラ、戦闘不能!」
アキトの指示でオノノクスが暴れまわって攻撃する。
このオノノクスは、以前修行の谷で彼が捕まえたオノンドが進化したものだ。
準決勝、6対6のフルバトルだが、アキトは残り3匹。対して相手は今ので残り1匹になった。
今はがぜんアキトが有利だ。
「アキト、がんばれ!」
このバトルに勝てばとうとう決勝戦だ。カナエ達の応援にも気合いが入る。
……そしてアキトが勝利して、次はリョウジの番だ。
「リーフストーム!」
白い体毛に茶色の体を持つダーテングが両手の扇で起こした葉っぱの嵐は、しかし霰の中に紛れる巨体には当たらなかった。
「残念だったな。つららばり!」
そして予想外の位置、隣から鋭い氷柱が何発も飛んできて、ダーテングは避けれず倒れてしまう。
「ダーテング、戦闘不能!」
「なんと! マンムー、3体立て続けに倒した!」
リョウジの準決勝の試合。リョウジのユキノオーが特性で霰を起こし、そのフィールドを引き継いだマンムーが現在活躍中だ。
今はリョウジが残り5匹、相手は残り2匹だ。
「さすがリョウジ、強いな」
準決勝を先に勝ち抜いたアキトが、感心しながらその様子を眺めている。
「おいおいのんきだな。このまま行くとお前があいつと戦うことになるんだぞ」
「まあそうなんですけどね。でも、やっぱりあいつは強いですよ」
「……だな」
呆れ気味なタカオへのアキトの返事に、彼は思わず肩をすくめてしまった。
そしてそれからあまり時間も経たずに、大して危なげも無くリョウジが勝利した。
そして決勝に勝ち上がったのはアキトとリョウジ。すでに相手は分かっているが、モニターに表示された決勝戦の組み合わせを見る。
「……リョウジ」
まさか、決勝で1番のライバルリョウジに当たるなんて。
まるでお膳立てでもされたかのようなベタな展開に、しかし感謝せざるをえなかった。
とうとうあいつと戦う時が来たんだ。それも、トウシンリーグコクヨウ大会参加者の中から最強のトレーナーを決めるこの決勝戦で。
「よし! 絶対負けないぜ! リョウジ!」
明日のバトルへの胸の高まりを押さえきれず、アキトはその場で立ち上がり声高に叫んだ。
バトルフィールドを立ち去ろうとしていたリョウジは立ち止まり、ちらりと肩ごしにそちらを見たが、すぐに再び歩き出した。
周りの人々は、決勝に進出したトレーナーがすぐ近くに居ることに気づいて少しざわめきだした。
「やべ、面倒にならないうちに逃げるぞ」
「え? うわ!」
「あ、待って!」
「おい!」
自分も去年体験したから分かる。バトルが終わった後に囲まれて握手を求められたり子ども達からは質問攻めにあったり、悪い気分はしなかったがそれ以上に疲れたものだ。
それを阻止するためにタカオはアキトの服の襟を掴んで引っ張り、カナエ達も慌ててそれを追いかけた。