03
「ツボミちゃん!」
負けたツボミが暗い顔で会場を出た直後、背後から声が聞こえた。
振り返ると、赤い帽子の少年とポニーテールの少女が駆け寄って来ていた。
「アキトさん……! 私……、ごめんなさい、約束……!」
彼の顔を見ると温かいなにかが込み上げて来て、うまくしゃべれず単語単語をたどたどしく口にする。
「いいんだ。しかたないさ、ツボミちゃん」
「けど……!」
「……泣きたいなら、泣いてもいいんだ。なにか、誰かに吐き出したい気持ちがあるなら、オレ達に言ってくれ。話はそれからでもいいだろ?」
彼女が必死に込み上げてくるものを抑えているのはたやすく分かった。まだなにか言おうとしていた彼女の言葉を遮り、優しい口調で言う。
「アキトさん……!」
その言葉に、留めていたものが溢れた。人目も気にせず泣き出したが、幸い今はバトルの直後で周りに人は居ない。
「アキトさん、ひっく、私、絶対勝とうって、思ったのに、1匹も、ぐすっ、倒せなくて、悔しくて、ポケモン達に申し訳なくて……!」
「……」
とめどなく溢れ出す涙を、止めようとする者はここには居ない。アキトとカナエは、ただ黙って彼女が吐き出す言葉を聞いていた。