01
「では2回戦の組み合わせを発表します!」
1回戦が全て終わり、ドームの大きなモニターに勝ち上がったトレーナー達の顔が表示された。
「えーっと、あ、あったあった」
観客席から試合を見ていたアキトが、その場で明日の自分の対戦相手を確認する。
黒い髪を後ろに立たせてでこの出た、茶色の上着のアキト達より少し歳が上に見える青年、タカオだ。
「相手は、確か前回リーグベスト4だったタカオさんか!」
「アキト君、大丈夫かい?」
「へへ、手ごわいだろうけど、絶対勝ってやるさ!」
シンヤが少し心配そうにたずねてきたため、拳を握りしめて返す。
「さっすがアキト。がんばってね!」
「ああ、もちろん!」
「おお、なかなか元気だな少年。けど、おれも負けないよ」
「え?」
そして同じしぐさでカナエにも返事をした直後、後ろの席から声が聞こえて振り返る。
「た、タカオさん!?」
「やあ」
そこには、先ほどモニターで見た彼と同じ姿の青年が、席から身を乗り出してひらひらと手を振っていた。
「おれはセイランシティのタカオ、よろしく」
「あ、僕は」
「そうかしこまるなよ、ため口でいいぜ。それと君、グンジョウジムに勝って、シッコク団のボスも倒したコキヒタウンのアキトだろ? 知ってるよ」
アキトが自己紹介しようとしたのを遮って、彼は得意げにしながら右手を差し出した。
「で、隣はガールフレンドのカナエちゃん」
アキトがそれを掴んだのを確認して、手はそのままに今度はカナエを見る。
「が、ガールフレンド!?」
「ち、違いますよ!」
「あれ? 後1人、ダイスケは?」
彼は否定を無視して、ようやく手を離してあたりを見回す。
「……ダイスケは」
「今は、部屋に居ると思います」
アキトが言いづらそうにしているのを察して、カナエが代わりに彼の居場所を教えた。
「だからため口で、いや、まあいいか。まあせっかくのリーグで1回戦はちょっとショックだよな。ま、とりあえず明日戦うからよろしく」
「はい、よろしくお願いします」
彼はそれだけ言うと立ち上がり、席を離れていった。
「アキトさん!」
「ん?」
「私の対戦相手を見てください!」
彼がいなくなったのを確認して、ツボミが興奮気味に話しかけてきた。
「分かった。えっと、ツボミちゃんツボミちゃん……。あっ!」
頷いて彼女の顔を探し、見つけて対戦相手を見る。
「リョウジ!?」
黒髪で切れ長の目の少年。なんと、彼女の対戦相手はアキトのライバル、リョウジだった。
「アキトさんには悪いですけど、私、勝っちゃいますからね!」
「ああ、応援してるよ。けど、ホントに気をつけた方がいい。
あいつは、リョウジはすごく強い。対策をバッチリにして全力で行っても勝てるか分からない。
オレも勝てなかったし、1回戦、1体も倒されずに勝ってたからな」
握りしめた拳を胸の前に持ってきて元気に言う彼女に、アキトは自分の苦い体験と1回戦の結果から警告をする。
「はい、アキトさんが勝てなかった相手ですから、すごく強いというのは分かってます。
けど、アキトさん。私もバッジを全部集めたんですよ? きっと勝って見せます!」
「はは、心強いな。じゃあ頼んだよ、オレのかわりにあいつに勝ってくれ!」
それでも元気な彼女に、アキトも笑いながら指切り代わりに右手を差し出した。
「はい、まかせてください!」
ツボミもそれを受け取って、頷きながら応えた。