01
「いよいよ聖火が灯されます!」
アキト達がコクヨウシティに着いた翌日の夜、ドームの中、とは言ってもバトルに使う場所のため天井は無いのだが、そこで参加者達が見守る中大きな聖火台に火が灯された。
「では第1回戦の組み合わせを発表します!」
そして皆の視線はその下のスクリーンに移される。
「さあ、どんな相手と当たるのかな」
「へっ、どんなやつが来たって負けねえよ」
ざわめきながら、全員の顔と名前が総勢64名のトーナメント表に表示されるのを待っている。
「えっと、あったあっ……、えっ……!?」
「どこだ? あ、そこ……! まじかよ……!」
「え? あっ、嘘……!」
緊張の中発表された組み合わせを見て、アキトとダイスケ、カナエは驚愕した。
表の左端、そこに表示されていたのは、見紛うはずが無い。長年見て、親しんできた2つの顔と名前だったのだ。
明日の午前に始まるポケモンリーグの第1回戦第1試合、アキトVSダイスケだ。
「そんな、いきなりダイスケと……」
「……アキト。おれはぜってー……! 今度こそ、てめえに負けねえからな!」
3人はしばし呆然としていたが、やがてダイスケが小さな声で名前をつぶやき、次に大きく宣言した。
「……ああ、お互い手加減抜きだ! オレも負けないぜ!」
「たりめえだ、本気で来ないと許さねえぞ!」
「もちろん!」
2人はにらみ合い、しかしダイスケはすぐに目を逸らして大股にドームから出ていった。
「えっと……」
彼を見送り、気持ちを抑えながら再びスクリーンに目を戻した。
他のトレーナーもチェックしつつ、顔馴染みを探す。
シンヤは同い年位の少年と、リョウジは大人が相手だ。
「あっ!」
知っているのは2人だけで終わりかと思ったが、もう1人見つけた。
ウスハナシティで会ってほんの少しの間一緒に居た、黒い長髪に白い服の少女、ツボミだ。
「ツボミちゃんも参加するのか」
「すごい、ジムバッジ8つ集めたんだ……」
「居た、アキトさん! カナエさん!」
スクリーンを見て驚いていると、背後から声をかけられた。
1人の少女が手を振りながら駆け寄ってくる。
「え? あ、ツボミちゃん! 久しぶり!」
一度表の顔と少女の顔を見比べ、一致しているのを確認してから言った。
「はい、お久しぶりです。あの時は本当にありがとうございました」
「いや、こちらこそ。おかげでカナエを助けられたよ、ありがとう」
「ううん、わたしの方こそアキトを呼んでくれてありがとね」
ぺこりと頭を下げられたため、アキトとカナエも同じ動きを返す。
「けどすごいねツボミちゃん、バッジ8つ集めたんだ」
「はい、大変でしたがなんとか」
「あ、じゃあオレも」
ツボミが言いながらバッジケースを出して見せてきたため、アキトも取り出した。
「これ、ドラゴンバッジ……! 本当にショウブさんに勝ったんですね、すごいです!」
「へへ、オレの力だけじゃないさ。オレとポケモン達が力を合わせたから、勝てたんだ」
左手でそれを持ちながら、彼は照れくさそうにはにかんだ。
「これは手ごわい相手ですね……! けどアキトさん、私もバッジの数は一緒、あなたとバトルすることになっても負けませんよ!」
「ああ、こっちこそ!」
眉をキリッとさせたツボミに、いずれ戦うことを願って右手を差し出す。
彼女はそれをしっかりと掴んで、離した。
「じゃあもっと話していたいですけど、明日のバトルもあるので私はもう行きますね!」
そして再び頭を下げて、彼女は立ち去っていった。
「ああ、お互いがんばろうぜ!」
その背中に声をかけて見送り、隣を見る。
「じゃあカナエ、オレ達も行こうぜ」
「うん、そうだね」
返事を聞いて、2人もすでに人の散らばり始めた会場を後にした。