01
「なあ、ガーディ」
ポケモンセンターの一室、宿泊用の部屋にあるベッドの上でアキトはあぐらをかいて、ガーディをそこに乗せて撫でながら話しかけた。
「オレさ、旅にずっと憧れてたんだ。相棒のポケモンをもらって旅に出て、色んなところに行って。それから色んなポケモンを捕まえて、色んな人とバトルして、各地のジムを回って8つのジムバッジをゲットして」
ガーディは意味が分かっているのかいないのか、笑顔で彼の顔を見て、彼の隣のベッドに居るカナエも、起き上がって彼を見つめる。
まあダイスケは既にベッドに入り、大きないびきをかいているが。
「それからポケモンリーグに出て、今度は別の色んな地方を冒険して。それで、最終的にポケモンマスターになるのが、オレの夢なんだ」
アキトが撫でる手は止めずに上を向いて言うと、ガーディは元気に鳴いた。
……分かってるのかな。……まあ、いいか。
「その夢はずっと遠くにあるし、道のりは険しいからそう簡単には辿り着けない。けど、……何があっても、諦めずに進んで行きたいんだ」
不意に、アキトの顔が険しくなる。
「……それに、絶対にあいつ……、リョウジには、負けたくないんだ」
アキトは、初めてのバトルを思い出して、自然と撫でていないほうの手に力がこもっているのを感じた。
「……でも、まだオレ達の旅は始まったばかりなんだ。これから色んなことがあるだろうけど、頑張って行こうぜ」
しかし彼はすぐに優しい顔に戻り、ガーディの頭を両手でがしがしと撫でた。
そして彼が撫でる手を止め抱き上げ見つめると、ガーディも見つめ返し笑顔で鳴いた。
「……よし、じゃあもう寝るか。お休み、ガーディ」
それを見て最後に軽く頭を撫で、ガーディをモンスターボールに戻した。
「カナエも、お休み」
そして今まで自分達のことを見つめていた彼女に視線を向け、笑顔で言って彼は寝転がり布団をかぶった。
「うん、お休み」
彼女もそれに笑顔で返し、布団に潜る。
「……絶対、負けたくない。あいつだけには……!」
アキトは拳を天井に向けて伸ばし、握りしめてからつぶやいた。