04
「アキト君にダイスケ君、それにカナエちゃん!」
コテージは、ドームの右隣にある湖のほとりに建っている。
そこに向かって歩いていると、反対側から青い帽子に緑の服の少年が駆け寄ってきた。
「シンヤ、やっぱりお前も来てたのか!」
「もちろん! 負けないよ、アキト君! ダイスケ君!」
「オレも負けないぜ、シンヤ!」
「悪いけど、手加減しねえからな!」
3人は火花を散らし合っていたが、やがてシンヤが小さく笑いを漏らした。
「どうしたんだ?」
「あはは、なんかこういうのいいなって思って」
アキト達が3人揃って首を傾げると、さらに続ける。
「なんだか、すごく燃えてるんだ。君達には特に負けたくないって思える。きっとこういうのがライバルっていうんだよね」
彼は口角を吊り上げ、笑みを浮かべている。
「ああ、そう思う。オレも今、すっごく燃えてるぜ!」
「うん! じゃあ負けないために、ぼくはもう特訓に行くよ! じゃあね!」
言いながら、アキト達の横を走り抜けた。
じゃあな、と手を振ると彼も振り返って同じ行動を返し、そして去ってしまった。
「じゃあ、行くか」
しばらく背中を見送って、再びコテージに向かって歩き出した。
歩いていると、見えてきた。湖畔の、木製で趣を感じさせる建物。
「うわっ! ……なんだ、リョウジか」
ドアノブに手を伸ばしてここも木製の扉を開こうとしたら、ひとりでに開いた。……と思ったら、目つきの鋭い黒髪の少年が現れた。
「お前達か」
「待てよリョウジ」
彼はそれだけ言うと見向きもせずに通り過ぎようとしたたも、引き止める。
「これからどうするんだ?」
「手持ちの最終調整だ」
彼は立ち止まり、答えた。
「そうか。オレ、お前とのバトル楽しみにしてるよ。だから、負けるなよ!」
「フン、人のことよりも、まず自分の心配をするんだな。ポケモンリーグは甘くない、せいぜい足をすくわれないよう気をつけろ」
しかし嫌みっぽい口調でそれだけ言うと、立ち去ってしまった。
「なんだよあいつ!」
「相変わらずだねー……」
相変わらずの感じの悪さにムッとしながら、アキト達は閉じられたドアを今度こそ開いた。左には数字の書かれた札の貼られた靴箱が、右には何も貼られていないそれがある。
左の靴箱から47の札を探し、その下のスペースに入れられた緑色のスリッパと靴を入れ替えて履く。
「カナエは……」
「多分こっちかな」
彼女はリーグの参加者で無いため、部屋を割り当てられてはいない。だがそういう人達の相部屋も想定されているのか右の靴箱もいくつかスリッパが靴に変わっている。
彼女はそちらでスリッパに履き替えたらしく、空いたスペースに靴を入れるところだった。
「じゃあ行くぞ」
ダイスケも履き替えたらしい。
3人は廊下の先の階段を上がって、2階で自分達の鍵につけられた札の番号と一致するものが扉に貼られた部屋を見つけた。
「じゃあおれは48番だからこっちだ。こっからは別行動な」
彼は渡された鍵で扉を開き、さっさと部屋に入ってしまった。
「カナエ、オレの部屋にする?」
「うん」
アキトも鍵を開けて中に入る。
左右に二段ベッドが置かれ、真ん中は窓際に机、その上にパソコンがあるだけの部屋だ。
「うわあ、なんかいいなこういうの!」
アキトはまるでキャンプみたいだ、とリュックを置いてスリッパを脱ぎベッドに飛び乗った。
「ふう。オレはこれから特訓するけど、カナエはどうする?」
少しの間布団の感触と部屋の匂いを楽しんでから、あぐらをかいて尋ねた。
「じゃあ、ついていこうかな。相手が欲しかったら言ってね」
「ああ、ありがとう」
返事を聞いてベッドから降りて、2人は部屋を後にした。