02
「君はリョウジ君だよね? トウシンナウで見たよ」
「そうか」
アキト達は、灰色の無機質な長い通路を進んでいた。現在は階段を探して、何度か角を曲がったところだ。
エレベーターが使えれば早いのだがカードキーが無ければ動かないらしく、しかたなくなのである。
上の階は、先にリンドウが入ったおかげだろう、やかましい足音とたまに衝撃音がするが、今いる階はあまり人気が無くたまに見かけるしたっぱ達も気絶していて、聞こえるのは自分達の足音と話し声のみだ。
シンヤは友好的に話しかけるが、彼の返事はそっけない。
「ぼくはシンヤって言うんだ。トウシンナウに出てたんだけど、知ってるかな?」
「ああ」
……会話が続かないよ。
シンヤは萎縮気味に帽子のつばを下げた。
「まあまあリョウジ、少しは話そうぜ? ただ歩いているだけじゃあつまらないだろ」
「そうだよリョウジ君」
「……相変わらずのんきだな」
アキトとカナエが彼の隣に行くと、彼はため息を交えながら呆れた声を出す。
そして、お前達と話すことは何も無い、と付け足した。
「うーん……」
相変わらずのこの反応、アキトは困り半分、あきらめ半分に頬をかいた。
そして少し歩いていると、再び曲がり角だ。
「お、階段!」
「待てよダイスケ!」
曲がると、廊下の先に階段が見えた。
ダイスケがまっ先に駆け出し、彼らは慌てて追いかけた。