02
「あれ、リンドウさんとシンヤ?」
ポケモンセンターへ入ると、相変わらず時代に合わない服装にマントを羽織った青年と、青い帽子に緑のジャンバーという彼に似つかわしくない普通の服装の少年の2人が、なぜかソファに相席していた。
ホントに、一緒にいるのが不思議だな。あの2人。
「リンドウさんはともかく、どうしてシンヤがこの街にいるんだ?」
とにかく、2人に駆け寄る。
ポケモンリーグの開催する街へはこのカラスバシティからも行けるが、わざわざこの街から行くよりもウスズミシティから20番道路を通って行った方が早い。
アキト達はシッコク団のアジトへ乗り込むためという目的があるが、シンヤにはこの街へ来る理由がないはずだ。
「ああ、それは……」
「その質問には、俺が答えるよ」
シンヤが質問に答えようとしたのを、リンドウが遮った。
「前にトウシンナウで、シッコク団を撃退したっていうのを見たんだよ。それにアキト君の友達らしいし、協力者は多い方がいいから声をかけ協力を頼んだんだ」
「そうそう」
リンドウの返答に、シンヤも相づちをうつ。
「あの……。なら、他に誰かいないんですか? 四天王の人達とか……」
「ああ、もちろんいるよ」
四天王とは、トウシン地方のチャンピオンであるリンドウに次ぐ強さを持った4人のポケモントレーナーのことだ。
悪の組織のアジトに乗り込むというのに、あまりにも少数精鋭すぎる。他に一緒に乗り込む人がいてもいいんじゃ、と今度は彼にたずねると、彼は当然と言った声色で答える。
「だけど、最近シッコク団の活動が激しくなっているだろう?」
確かに、言われてみるとそうかもしれない。コキヒタウンを旅立つ前までは、故郷が田舎だったということもあるが聞いたことも無かった名前を最近はよく耳にするように、いや、そのしたっぱや、時には幹部も目にするようになった。
「だから、トレーナー達の最後の砦であるポケモンリーグは死守しなければならない。彼らにはそこを守ってもらっているよ。他にも、腕の立ちそうなトレーナーには各街を警護してもらったりね」
「……そうなんですか。けど、それにしたって5人はさすがに」
「大丈夫さ。君達が力を合わせればしたっぱ達なんて敵じゃない。幹部だって、もし4人全員居たとしても、まとめて出てこなければ君達が有利だろう」
人数の少なさをさらに言及しようとしたアキトに、リンドウはかぶせた。
「みんな一気に来たらどうすんだよ?」
「そんなことが無いように、俺が先に1人で乗り込むよ」
ダイスケの質問にも、あっさり返す。
「え!?」
「大丈夫なんですか、たった1人で!」
彼の言葉に皆驚いた。どれだけいるかは分からないが、少なくとも世間を騒がすほどの組織のアジトに1人で乗り込むというのだから。
「もちろん。俺はチャンピオン、そう簡単にやられはしないよ。
だから君達は、俺が行った後に潜入して、出来れば幹部も倒してほしい。無理そうなら、したっぱだけでも構わない」
彼の瞳には一寸の不安も浮かんでいない。よほど自分のポケモン達と、後から来るアキト達を信頼しているのだろう。
「……はい、わかりました!」
「ええ!?」
3人が返答に困っている中、アキトははっきりと返事をした。
カナエは慌てて彼を見る。
彼は、彼女の声を気にとめながらもしっかりとリンドウを見つめていた。
彼も、リンドウ同様迷いは無いようだ。
「じゃあ突入は明日だ。それまで各自、ゆっくり体を休めるように。ただし特訓は明日に響かなければ認める! いいな、みんな!」
「はい!」
「……分かりました!」
「お、おう!」
「……はい、がんばりましょう!」
リンドウの指示に、まずアキトが返事をする。それに次いで、少しの間を置きながらもカナエ、ダイスケ、シンヤが順に返事をした。