02
「……と、こんなところかな」
日が沈みあたりが暗くなりはじめた頃、ようやく街を巡り終えた彼らはポケモンセンターの前に来ていた。
「ありがとうございますリンドウさん。勉強になりました!」
彼が教えてくれたことは、知っていることも少しはあったが、田舎町出身のアキト達には知らないことが多かった。
例えばポケモンセンターは、ポケモンの回復や転送だけでなく、道具の転送や宿泊まで出来ること。
フレンドリィショップの売り物や構造などの説明。
それと、あまり勉強が得意ではないアキトとダイスケには意味はよく分からなかったが、この街にはシノノメカンパニーという会社があり、モンスターボールやキズぐすりなど色々な道具を作っていて、トウシン地方ではとりあえず大事らしいということ。まあそれはよく分からなかったが、他にも色々教わった。
まあ、案内の途中の視線や、何を言っているかまでは聞き取れなかったひそひそ話はきつかったが。
「いいんだよ。困った時はお互い様だし、俺も楽しかったしさ」
アキト達がそんなことを思っているとは知らずに、笑みを浮かべている。……いや、知っていても反応は変わらないだろうが。
「このお礼はまた今度するよ。 出てこいボーマンダ! それじゃあ!」
彼はボールから赤い翼を持った青いドラゴンポケモン、ボーマンダを出し、マントを翻しそれに乗り飛び去ってしまった。
「……すごいポケモン持ってるんだな、リンドウさん!」
「ああ、かっこよかったな!」
「……」
アキトとダイスケが彼を見送り楽しそうに話しているが、カナエはうつむき考え込んでいる。
「すごいトレーナーなんだな……って、カナエ?」
「……ねえアキト。あの人、リンドウさん、どこかで見たことない?」
アキトがそれに気付き声をかけると、どうやらカナエはあんな強烈な人をどこかで見たことがあるらしい。
「……言われてみれば、どこかで見たことある気がする。
それも、すごくあの服装には見覚えがあるような……。
まるでチャンピオンのリンドウさんみたいだ……。……って、え?
……なんで、なんで気づかなかったんだろう……!」
確かに心当たりがありアキトが独り言を呟き、そして自分の言葉にハッとする。
「……え、ええっ!?」
カナエも、彼の言葉を聞き叫んでいる。
「同性同名で持ってるポケモンも同じなんて、めずらしいな!?」
「……なあ、カナエ」
「え?」
「オレ達、すごい体験したんだな」
「うん、本当びっくりだよ」
アキトとカナエは、ダイスケの狙ったのかそうじゃないのか分からないボケを無視し、顔を見合わせしみじみとしている。
「お、おい! 無視するなよ!」
「はは、ごめんごめん。じゃあ、今日はもう部屋で休もうぜ」
「うん、そうだね」
「……ったく」
騒ぐダイスケに平謝りをしながら、3人はポケモンセンターに入った。