01
『それではトウシンナウ、次はトレーナー特集です』
「お、トレーナー特集だってよ!」
アキト達は、グンジョウシティからセイランシティへと戻ってきていた。理由は、この街の西からグンジョウシティへ行く17番道路ではなく、北の18番道路を通りウスズミシティという街を通るしかカラスバシティへ行く道が無いからだ。
彼らがポケモンセンターの宿泊用の部屋でベッドに座ってテレビを見ていると、トウシン地方の今を伝える番組、トウシンナウという番組でアキトとダイスケが好きそうなコーナーが始まったのだ。
『ザ・短パン少年。すでに6つのバッジを手に入れたゴロウ!』
や、
『山男のツトム、7つ目のバッジは手に入れたも同然か!?』
など、様々なトレーナーが紹介されていく。それを見ていると、次は今年のポケモンリーグで期待のトレーナー特集です、とコーナーが切り替わった。
『まずは私達が注目している少年、コキヒタウンのアキト君!』
「え!?」
「はあ!?」
先陣を切って紹介されたそのトレーナーに、3人は驚愕する。
お、オレ!?
『一見すると彼は普通の少年ですが、なんと! この前ポケモンをもらったばかりなのに、あのトウシン地方最強のジムリーダーと呼ばれるショウブさんに勝利したんですよ!』
テレビの中でスタジオが一気に騒がしくなる。それもそうだ。彼は、四天王の候補に挙がるトレーナーですら倒せなかったジムリーダーなのだから。
『そしてなんと、あのシノノメシティやウスハナシティの事件解決にも、彼が関わっていたらしいのです!彼はアオズリ博士から最初のポケモンとしてガーディを受け取り、幼なじみの少年少女と一緒に旅に出たみたいです。
ジム戦などでも不利な相性を覆して勝利したりと、見る者を楽しませるバトルをします!
バッジもすでに8つ集めており……』
「アキト、すごいね! 最も注目されてるだって!」
「なんか照れるな……」
それからしばらくバトルの様子などが流され、最後に期待の持てるトレーナーですね、と締めくくられ彼の紹介は終わった。
「終わっちゃった……」
アキトは残念そうにしていて、ダイスケはまあ次はおれだろ、とウキウキしている。
『次のトレーナーは、シノノメシティのリョウジ君! 私は今年の新人トレーナーの中ではアキト君と同じくらい彼に注目しています!』
「リョウジ!」
「おれじゃねえのかよ!」
アキトとダイスケは思わず声が大きくなる。
……って言うか、あいつシノノメシティ出身なんだな。
『彼は先ほど紹介したアキト君に何度も勝利する程の腕前の持ち主で、ジム戦も事前に対策をして確実に勝ちを取りに行く堅実さを持っています。
ですが、勝ってもそれを鼻にかけないところがクールですね!』
「むっ……!」
オレに何度も勝った、はいいだろ! って言うかなんでそんなことを……。まあいいや、次こそ勝ってやるさ!
『それにシノノメシティの件は彼とアキト君の2人で解決したらしいですよ!
彼もすでに8つバッジを揃えていて……』
そして説明が終わって彼もバトルの様子が流され、一言とともに紹介は終わった。
「ま、まあ次こそおれが」
『次は、コクボウタウンのシンヤ君。彼は優しい顔つきの少年で、バトルも強いんですよ。
噂で彼のファンの女の子は結構いるとも聞きますが、確かに、優しくて強く正義感もある、納得ですね!』
「なっ!?」
「おっ、シンヤだ」
「シンヤ君だね」
そして紹介された3人目は、シンヤ。ダイスケは、自分がまだ来ないことにショックを受ける。
「シンヤ君、人気なんだね。確かに、ちょっと分かるかも」
「お前は、シンヤみたいなのが好きなのか?」
アキトは彼女の発言が気になり、たずねてみる。
「うーん……。わたしは、いつもそばにいてくれて、いざというときに守ってくれるかっこいい人がいいかな」
「なんだそれ、そんな都合いいやついるわけねえだろ」オレとカナエが話していると、ダイスケも入ってきた。
「居るよ! ね、アキト?」
彼女はオレに同意を求めてきた。けど……。
「オレに聞かれても困るよ。で、シンヤはどうなんだ?」
「もお。だから、いつもそばにいる人がいいんだって」
結局彼がどうなのかは答えていなかったから再度たずねたら、彼女はわざとらしく頬を膨らませてぷいと顔を背けた。
「そんなの、オレとダイスケくらいだぜ」
「えへへ、まあね」
「だよな」
カナエが笑って、オレもつられてしまう。
ダイスケはそんな2人のやりとりに、ため息をついた。
……なんなんだよ。
「あ、シンヤのが終わる」
今まで話しながら見ていた友達の紹介が終わり、会話も途切れたためアキトは体を画面に向けた。
『次は前回のポケモンリーグでベスト4に入った、タカオ君』
そして特集は続いていく。結局ダイスケは彼の後に出たが、アキトやリョウジに比べてやや尺が短かったため少し不機嫌そうにしていた。