01
「よし、回復終わり!」
アキトは回復のために預けていたポケモンを受けとると、ポケモンセンターのロビーの端のほうにあるソファに座っているカナエとダイスケに駆け寄った。
「じゃあ次はダイスケがジム戦だな」
「おう! ぜってえ勝つから見てろ!」
カナエの隣に座って、彼女を挟んで2人が会話している。カナエは少し困ったような顔をしているが、彼らは気にしない。
そうして話していると、宿泊用の部屋がある2階から1人の少年が降りてきた。
話に夢中になっていたアキトだが、ふとその少年の姿が目に入り、固まる。
「ん、どうしたアキ……!」
ダイスケとカナエが彼の視線の先を見ると、黒髪の少年、リョウジが相も変わらずポケットに手を突っ込みながら階段を降りているところだった。
「リョウジ!」
彼に駆け寄ると、彼は眉をひそめてアキトを通り過ぎようとしたため、立ちふさがる。
「邪魔だ、どけ」
「いやだね、オレとバトルしようぜ!」
「……相変わらずこりないやつだな。それとも、ショウブに負けたのを見て自分でも勝てる、とでも思ったのか?」
「そんなことは思ってないさ。もちろん、お前に勝つつもりだけどな!」
「フン、本当にこりないやつだ」
多少の自嘲を込める彼にそう返すと、彼はため息混じりに言った。
「で、バトルを受けてくれるのか? ……って言っても、イヤとは言わせないぜ!」
「……しかたない。ルールは」
「臨時ニュースです」
リョウジがそこまで言ったところで、受付のお姉さん、ジョーイさんの真上のモニターから女性の声が聞こえてきた。注目はモニターに向かう。
「シノノメシティのシノノメカンパニーが、黒服の集団から襲撃を受けたとの情報が入りました。街中にも……」
「まさか、シッコク団……!?」
「なに……!?」
女性は淡々と読み上げている。
アキト達だけでなく、リョウジまで血相を変えてそれを聞いていた。
「ちっ……! 悪いが、バトルは今度だ!」
だが彼は我に帰ると目の前のアキトを押しのけ、走ってポケモンセンターを出て行った。
「あ、おい! 待てよリョウジ!」
「アキト!」
アキトが急いでそれを追いかけ、カナエ達もついていく。