04
「本当にありがと、アキト。重くなったら、いつでも言ってね」
「はは、大丈夫だってこのくらい。……まあ、ちょっと重いけど」
買い物を終えたアキト達は、ポケモンセンターに向かっていた。
荷物は全て、アキトが持っている。とはいっても、持たされたわけではない。自分から全部持つと言ったのだ。
多少の重さはあるものの、1人で十分持てる程度だ。
「うん……。……けど、今日は楽しかったよ。ありがとね、アキト」
カナエは少し申し訳なさそうにしていたが、いつもの調子で話を始めた。
「いや、オレも楽しかったからいいよ」
「そっか。なら、良かった」
「ああ」
アキトは微笑みながら返して、前に向き直った。
そして会話が終わったため、なにを話そうかな、と考える。
「あれ? アキト君にカナエちゃん?」
「ん?」
たまにはバトルの話でもしようかな、と思っていると、後ろから声をかけられた。
「あ、シンヤか! 久しぶりだな!」
「久しぶり。奇遇だね、2人とも。元気にしてたかい?」
振り返ると、青い帽子で茶髪の少年、以前バトルをしたシンヤが立っていた。
「ああ、もちろん! お前はどうなんだ?」
「ぼくも元気だよ。バッジも、6つ手に入れたしね」
「へえ、一緒だな! オレも今、6つバッジを手に入れてるんだ!」
「そうなんだ!」
「ああ! そうだ、せっかくだからバトルしないか?」
以前負けたことは確かに悔しいが、久しぶりに会ったのだ。まずはリベンジどうこうを抜きに彼のポケモンの成長を確かめたいと思い、たずねる。
「うん、もちろん。……って、言いたいけど……」
「けど?」
「いつでも全力で戦えるようにしておきたいんだ、ごめんね」
「……いいけど、どうしてだ?」
アキトは残念そうにしながらも、理由が気になり聞いてみた。
「うん、母さんが言ってたんだ。この街で全身真っ黒くてSの字の入った変な人を見たって」
彼から伝えられた服装は、明らかにアキト達が何度も会った集団のそれだった。
「それって……、シッコク団か……?」
サンダースを傷つけたと思われる、そして何度も悪さをしていた集団だ。
アキトはカナエと顔を見合わせてから、言った。
「知ってるのかい?」
「ああ。オレ達は、何度か会ってるんだ」
「そっか。ぼくも前に一度だけしたっぱに会って、ポケモンをよこせって言われたんだ。まあ、返り討ちにしてやったけどね」
彼は笑いながら言ったが、真顔に戻って続けた。
「……だから、いつ会ってもいいようにしておきたいんだ」
「そうか……。ならしかたないな」
残念だが、しかたない。それにこの街ということは、自分達も他人事ではないのだ。
「ごめんね、アキト君」
「ああ、気にすんなよ」
シンヤとの会話も終わり、今まで黙っていたカナエを見る。
「じゃあカナエ、そろそろ行こうぜ。シンヤも一緒に来るか?」
「そうだね、じゃあ……」
「どけ!」
言いかけて、目の前を件のシッコク団員数名が通り過ぎて行った。
「今の……。じゃあね、アキト君、カナエちゃん!」
シンヤは、それをすぐに追いかけて行った。
「オレも行く! 悪いカナエ、ちょっと待っててくれ!」
アキトも、カナエに荷物を持たせると走り出した。
「アキト、気をつけてね!」
「ああ、分かった!」
カナエの心配そうな声に、アキトは振り向いてサムズアップをしながら返し、向き直った。