04
「カビゴン、のしかかり! サンダース、カビゴンを踏んで飛び越えてから10まんボルトだ!」
2匹は指示通りに動き、カビゴンは走ってサンダースに近づき、サンダースはそれを飛び越え電気を浴びせる。だがカビゴンにはあまり聞いていないようだ。
「カビゴン! 今だ、じしん!」
「……な、なに?」
アキト達を見ていたカナエだが、突然声と激しい足音が聞こえてきて振り向いた。
「お、カナエ!」
そこに居たのはダイスケだった。彼は安心した顔でこちらに走ってきた。
「だ、ダイスケ?」
「おう。良かった、無事みてえだな」
「え? あー……。ダイスケ、ちょっといい?」
カナエは手をぱたぱたとして座るように促し、小声でも聞こえるように彼に顔を近づけた。
「んだよ、どうしたんだ?」
「しっ、静かな声で! アキトが今特訓中だから!」
カナエは口元に指を当てて、彼をいさめた。
「かえんほうしゃ!」
「あれ、アキトだったのか」
彼女に言われて声を小さくしながら、彼は指示を出している幼なじみを確認した。
確かに、あの赤い帽子はアキトだ。
「うん。ダイスケは知らなかったと思うけど……。アキト、リョウジ君に勝てないのが悔しくて、夜中抜け出しては特訓することが前からあったの」
「……そうだったのか。……はは、どうりで、追いつけねえわけだ……」
リョウジに勝つため、か……。アキトはいつもあいつばっかライバル視して……。
……けど、知らなかった、あいつがそんなことをしてたなんて。あいつ、おれが思ってるよりもがんばってたんだな……。ダイスケは、カナエから初めて聞かされた事実に一瞬目を丸くしてからうつむき、誰にも聞こえないようにつぶやいた。
「けど、ダイスケが知らなかったのも無理はないよ。アキト、わたし達が寝てるのを確認してから特訓に出てたから」
「なんでわざわざんなことをしてたんだよ、あいつ」
「うーん……。アキトのことだから、わたし達に気を使わせたくなかったんじゃないかな?
それか、なんとなく知られたくなかった、とか」
アキトの行動に疑問を持ったダイスケ。だがカナエも理由を知らないため、幼なじみの彼が考えそうなことをあげてみた。
「あー、かもな。ったく、水臭えな、あいつ……。
……てか、なんでお前は起きてんだ? あいつ、おれ達が寝てるか確認してたんだろ? ……寝る前に水飲みすぎたのか?」
水を飲みすぎた? なんの話だろう……。……まあいっか。
カナエは疑問に思ったが、気にしないことにした。
「うん。寝たふりをして……」
「あーなるほど。おれもそうしようかな」
「無理だと思う」
「はえーよ」
カナエの瞬時の指摘に、ダイスケは理由を聞くよりも先にツッコミが口から出てしまった。
「だってダイスケ、寝てるときはいびきをしてるから分かりやすいんだもん」
「……確かに、そりゃあムリだな」
「ね?」
「……2人とも、起きてたのか。そんなところでなにを話してるんだ?」
「……え?」
2人で話していると、もう1人の幼なじみ、現在特訓中のはずのアキトに話しかけられ、2人はギクッとした。
「あ、あはははは……。その……。……ね?」
カナエはなにを言おうかと思ったが、なにも思いつかなかったため笑顔でごまかそうとした。
「ねって言われても分からないけど……。部屋にいなかったから探しにきてくれたのか? 心配かけてごめん、カナエ、ダイスケ」
が、それはスルーされた。
「ったく、ホントだ。起きたら部屋にいねえんだからよ」
「はは、ごめんな、ありがとう。じゃあもう夜も遅いし、これ以上やるのも迷惑かもだし、戻ろうぜ。みんな、戻れ」
アキトは心配してくれたらしい2人に謝罪と礼をして、ポケモン達を皆モンスターボールに戻した。
「おう、だな」
「うん、分かった」
「よし、じゃあ行くか」
そうして3人は、話しながら宿泊施設へと戻った。