02
「やい、そこの赤帽子!」
アキト達が1番道路を進んでいると、突如横から声が飛んできた。
赤い帽子ということは、たぶんオレに言っているのだろう。
思わず驚きながら声の主を探すと、オレンジ色の帽子を逆にかぶり、同じ色のTシャツに黒いズボン、白いスニーカーを履いた同い年くらいの少年がこちらを見ていた。
モンスターボールを持った右手を前に突きだしている。
「おいらは短パンこぞうのゴロウ! おいらとバトルだ!」
やはり、バトルの申し出らしい。
「目と目が合ったらポケモン勝負! 断るなんて、出来ないぜ!」
「え、ええ?」
元からバトルを受けるつもりだったが、その言葉に腰のボールに伸ばした左手が思わず動きを止めてしまった。
「い、いや、まあいいか。オレはポケモントレーナーのアキト! そのバトル、受けて立つぜ!」
だがすぐに気を取り直し、不良かよ! っていうか目合ってなかっただろ! と内心ツッコミを入れつつアキトは彼と同じようにモンスターボールを持った左手を前に突き出す。
「ゆけっ! コラッタ!」
ゴロウが勢いよくモンスターボールを投じる。
「行け! ガーディ!」
そしてアキトも、モンスターボールを軽く上に放り、キャッチして勢い良く投げる。
彼が出したのはコラッタ。ボールから出たガーディは、元気に吠えアキトへ振り向き、その後コラッタへと向き直り構える。
「コラッタか……」
アキトがポケモン図鑑を取り出しコラッタへと向ける。
「コラッタ。ねずみポケモン。
キバは長くて鋭い。一生伸び続けるので、固いモノをかじって削る」
すると、電子音声が説明を読み上げる。
それだけ聞くとコラッタへ目線を戻し、図鑑を閉じポケットにしまう。
「行くぞコラッタ、でんこうせっか!」
彼の指示を受け、コラッタが動き出す。
目にも留まらぬものすごい速さで突っ込み、アキトが指示を出すより先にガーディに直撃してしまう。
だがガーディはそこまでダメージはないようだ。
「よし! ガーディ、ひのこ!」
そして今度はアキトが攻勢に移る。
隙の出来ているコラッタに、ガーディは口から小さな火を撃ち攻撃をする。
先ほどとは逆にコラッタがダメージを受けた。
「続けてアイアンテール!」
さらに、跳んで宙から固いしっぽを振り下ろす。
「コラッタ! かわしてたいあたりだ!」
しかし、コラッタは後方に跳んでそれをかわし体当たりを決め、ガーディは直撃して後方に飛ばされてしまった。
「ガーディ、かみつく!」
だが上手く着地をし、すぐさまコラッタに鋭い歯で噛みつき、前方へ放り投げる。
「よし、決めるぜガーディ! かえんぐるま!」
そして空に弧を描くコラッタに、炎を纏い突進する。
「コラッタ!」
コラッタはその技を食らって跳ね飛ばされ、力無く地面に落下した。見てみると、目を渦巻きにして倒れている。戦闘不能だ。
「くそお、負けた。戻れコラッタ!」
「よくやったなガーディ、すごいぞ!」
悔しそうにコラッタをモンスターボールに戻すゴロウとは対照的に、嬉しそうにガーディへと駆け寄るアキト。ガーディのもとへたどり着くと抱き上げて頭を撫で回し、ガーディも嬉しそうにそれを受けている。
それを見てカナエとダイスケも、つい笑みを浮かべてしまう。
しばらく撫でた後モンスターボールに戻し、今度はゴロウのもとへと駆け寄り、
「またバトルしようぜ!」
と言いながら手を差し出す。
「うん! 次は負けないぞ!」
ゴロウはそれをがっしりと掴み、彼に応える。
その後彼と別れを告げ、アキト達は再び歩き始めた。