03
「やっと追いついた……。まったく、いきなりどうしたんだよ、ガーディ」
ある程度走るとガーディはその場に座り込んだため、アキトは汗だくになりながら駆け寄った。
「おい、アキト!」
「だ、ダイスケ!?」
そこにダイスケが現れたため、どうしてここに、と言おうとしたが、その前に彼はからっと笑って、なんか面白いことが起こりそうだったから、と言った。
「うーん、悪いけど、期待してるようなことは」
「だから駄目だと言っているだろう!」
アキトがガーディをボールに戻しながら言おうとすると、遮るように不穏な声が聞こえてきた。
「え!? あ、えっと、違います! 僕達は……」
「アキト、違う。あいつらに対してだ」
アキトはとっさに返事をして、ダイスケがそれに突っ込む。
アキトが彼に言われて前を見てみると、赤いSの文字に黒の団服が複数、シッコク団達の姿が見えた。
その中の一人には帽子をかぶらず髪がとさかのように逆立っており、服は丈が短く袖が無いのを羽織り、周りとは違う団服のがたいのいい男性も居る。
彼も幹部なのだろうか。
「てめえらなにやってるんだ!」
「お前達は許さないぜ!」
とにかく、ダイスケとアキトが慌てて飛び出した。
「君達は?」
先ほどの声の主と思われる、片手に袋を持った作業服の男性が尋ねてきた。
「おれはダイスケ、こっちは幼なじみのアキトだ!」
「よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。俺の名前はエンジだ……!」
彼の名前はエンジと言うらしい。彼は険しい表情で彼らを見つめたまま、返事をした。
「うるせえ、さっさと進化の石をよこしやがれ!」
団服の違う男性が怒鳴る。
「お前も幹部なのか?」
「おう、幹部のアオフジだ。それよりその赤い帽子、てめえが何回も俺らの邪魔をしてるっていうアキトとかいうガキか?」
アキトの問いに、彼はどことなく楽しげな笑みを浮かべる。
「ああ。お前の邪魔もさせてもらうぜ! 行け! ガーディ!」
「上等だ! ゆけっ! ドードリオ!」
「出番だ、ニョロゾ!」
そしてアキト、アオフジ、ダイスケの3人はポケモンを出す。
「すまない、君達。俺はもうポケモンが残っていないんだ……!」
エンジはポケモンを出さないが、それはすでにやられているからのようだ。
したっぱはポケモンが残っている2名がそれぞれアーボとラッタを繰り出した。「大丈夫です、僕達が倒しますから!
サンダースも行け! ガーディ、ドードリオにかえんほうしゃ! サンダース、アーボに10まんボルトだ!」
「サイホーンも出番だ! ニョロゾ、ドードリオにれいとうビーム! サイホーン、ラッタにロックブラスト!」
「ちっ、れいとうビームをかわせ!」
激しい火炎と凍える光線が襲いかかり、ドードリオは光線はかわしたが、火炎は食らってしまう。
「へへ、焼き鳥だぜ!」
「れいとうビームだ!」
そしてそこに光線をぶつけられ、ドードリオは倒れた。
そしてアーボは電撃を食らい倒れ、ラッタはかわしてサイホーンに迫っている。
「サイホーン、つのドリルだ!」
前歯を見せつけて飛びかかってきたラッタに、回転している角が突き刺さる。
一撃必殺、ラッタも倒れた。
「お、サイホーン! 進化だな!」
「進化して後ろ足だけで立つようになった。ツノで突かれると岩石にも穴が空いてしまう」
「戻れ、サイドン!」
進化して姿の変わったサイドンに図鑑をかざし、説明を聞き終えると図鑑をしまってサイドンもボールに戻した。
「戻れ、サンダース!」
「ゆけっ、ウォーグル!」
したっぱはこれ以上ポケモンを出さないためアキトはサンダースを戻し、アオフジはゆうもうポケモン、力強い鳥ポケモンのウォーグルを繰り出した。
「こいつが俺の最強のポケモンだ、こいつには勝てねえぞ!」
「悪いけど、オレたちはこんな暑いところに長居したくないんだ。とっとと倒させてもらうぜ! かえんほうしゃ!」
「こいつに同意だ、れいとうビーム!」
「ちっ、また同時攻撃か! なら特攻だ、ブレイブバード!」
「かわせ!」
激しい炎と冷気に真正面から突っ込んできたウォーグルは、2つのエネルギーを押しのけガーディに迫る。
ガーディが間一髪かわしたところに凍える光線が命中し、ウォーグルは凍り付けになった。
「おいおい、マジかよ!」
「おう、マジだよ! とどめだニョロゾ、バブルこうせん!」
「よし、決めるぜガーディ! かえんぐるま!」
激しい動揺を見せるアオフジ。そこに、2匹の攻撃が迫る。
激しい炎の鎧を身に纏ったガーディの突進と、ニョロゾが激しい勢いで放った大量の水が直撃する。
アキトにはガーディの技は普段の倍は威力があるように見え、ダイスケはニョロゾが明らかに別の技を出したように思えた。
「もしかして……」
2人が図鑑を取り出し確認すると、予想は的中していた。
アキト達は気づかなかったが図鑑は振動していたらしく、ガーディの覚えている技の欄にはフレアドライブが、ニョロゾの技の欄にはハイドロポンプが加わっていた。
とにかく2匹の大技を食らったウォーグルは、力尽きて倒れ、ガーディは攻撃の反動を受けた。
「新しくフレアドライブを覚えたんだな、やったなガーディ!」
「ハイドロポンプ! ナイスだ、ニョロゾ!」
2人に褒められて、2匹は振り向いて嬉しそうな声を出して頷いた。
「ちっ、運が良かったな! 今日はポケモンが残ってねえからこれで勘弁してやる! 覚えとけ!」
彼、アオフジはウォーグルを戻すと、捨てゼリフを吐いて下っ端とともに去っていた。
……前に会ったスミレって幹部に似てるな。アキトはそう思ったが、口には出さなかった。
「おい、あんた大丈夫か?」
「ああ、助かったよダイスケ君、アキト君。後でポケモンセンターにお礼を送っておくよ、受け取ってくれ」
「い、いえ、そんな! お礼なんて」
「いいからいいから! じゃあまた後で会うことになると思うけど、それじゃあ!」
「え? あ……」
アキトの言葉を遮ってそう言ったエンジは、すぐに立ち去ってしまった。
「……帰るか、ダイスケ」
「だな。戻れ、ニョロゾ」
そして2人と1匹も、その場を後にした。