03
「よし! じゃあまずは……」
「あ、ちょっと待って、アキト。みんな、出てきて!」
早速気合いたっぷりのアキトだが、彼女に肩透かしを食らってしまう。
だが彼女はそんな彼を尻目に、手持ちのポケモン達を全てボールから出した。
アキトも気を取り直して彼女のポケモン達を見ると、1匹アキトには見慣れないポケモンがいる。いや、知ってはいるのだが……。
「カナエ。そのデンリュウ……」
彼女のポケモン、モココが、デンリュウに進化していたのだ。
「ああ、うん。あのスミレって人とバトルした時に、なんとか1匹倒したんだけど、その時に進化したんだ」
「そうなのか……。おめでとう、カナエ!」
「えへへ、ありがと」
彼女はアキトにお礼を言い、ポケモン達に向き直った。
「ねえ、クサイハナ。クサイハナは、バトルが好き? 嫌い?」
そしてしゃがみこんでクサイハナに目線を合わせて尋ねると、少し考えるような仕草をした後かぶりを振った。
そうか、なるほど。確かに無理やりさせるのは良くないよな、と、アキトはうんうん頷いた。
「そっか、嫌いじゃあない、って感じなんだ。ねえ、なら、ポケモンバトルの特訓をする気はある?」
彼女の二度目の問いかけに、今度は首を縦に振りぐっと力んだ。アキトには心なしか、クサイハナの閉じている目に意志を感じさせる謎の目力があるように感じた。
「ありがとう、クサイハナ。他のみんなはどう?」
彼女が立ち上がって皆を見ると、皆もやる気になっているようだ。キッとした目つきで彼女を見ている。
「みんな……! ありがとう、これから頑張ろうね!」
彼女の言葉に、彼女のポケモン達はおー! という感じの声を出し、腕(ムウマは無いが)を高く突き上げた。
「もういいか、カナエ?」
「うん、ありがとうアキト!」
「よし! じゃあまずは互いのポケモンがどれだけ育っているか確かめるためにバトルだ! 広いところに行こうぜ、カナエ!」
「分かった! みんな、戻って!」
アキトは彼女がポケモン達をボールに戻したのを確認して、彼女の手を掴んで走り出した。