02
「……さて、ダイスケも戻ってこないし、特訓しようかな」
見送りも終わり、彼は言う。そして、ブイゼルもう進化させようかなー、と続けて、手を後頭部で組む。
「カナエは」
「ねえ、アキト!」
オレも特訓するとなると、カナエが1人で残されるよなー、と思い彼女にこれからどうするのか尋ねようとした時、彼女が自分を呼ぶ声が重なり、2人とも慌てて口をつぐんだ。
結果、今は2人だけなので、沈黙が生まれる。
「あー……。先、いいぜ」
「あ、アキトが先でいいよ……」
彼女が顔を赤くしてうつむいてしまったため、このまま待っていても話は進まないだろう。お言葉に甘えて彼は、先ほど遮られた問いを今度こそ彼女に投げかけた。
すると彼女はうつむいたまま少しの間えーと、その、などを繰り返してモジモジしていたが、意を決したのか、顔を上げて口を開いた。
「その、アキト……。わ、わたしに……」
「あ、ああ」
彼女は頬を染め、恥ずかしそうにしている。いつもと違う彼女の様子にアキトは思わず息をのむ。
落ち着け、オレ、とは思っても、発した声は同様を隠しきれていない。
「わたしに……、バトルのことを、教えてほしいの!」
「あ、ああ! オレも……。……え?」
彼女の様子に、そういうことを少しばかり、いや、大分期待していたアキトは、予想外の申し出に対して素っ頓狂な声で返してしまう。
「え、アキト、オレもって?」
「あ……。い、いや! なんでもない! なんでもないから!」
そう言いながら両手を前に突き出しぶんぶんと振ると、彼女は少し不思議そうにしながらも、そっか、とだけ言い、それ以上の詮索はしなかった。
「そ、それより、なんでバトルのことを……! ……シッコク団のことか?」
アキトは羞恥心を必死に抑えて話を無理やり元に戻すが、内心大分落胆していたのは彼女に内緒だ。とにかく、言いかけて彼女と一緒に旅をして思い当たるそれらしい理由が頭に浮かび、問いかける。
「……うん。あの時2人が来てくれなかったら、わたしのポケモン達は奪われてた。
トレーナーなら、自分のポケモンは守らなきゃいけないのに……。
だから、アキト! わたし、強くなりたいの! お願い!」
「もちろん、いいぜ! じゃあ、早速特訓だ!」
やはり理由は当たっていたようだ。彼女が頭を下げて頼んできたため、アキトはポンと彼女の頭に手を置きサムズアップをした。
彼女はそれを見ると明るい顔に変わり、彼を見上げた。