06
「サニーゴ、しっかりして! サニーゴ、お願い!」
カナエの呼びかけも、すでに意識を失っているサニーゴには届かなかった。
「じゃああなたのポケモンいただくわよ。スカタンク、やっちゃいなさい!」
ポケモンが全て倒され抗うすべを失ったカナエは、なにも出来ずその場に座り込んだ。
そんな彼女に、スカタンクが猛然と迫る。
「行け! サンダース! 10まんボルト!」
もうダメ! と目を閉じた彼女だが、彼女の耳に聞き慣れた声が飛び込んできて、直後激しい音とともに焦げたような匂いが漂ってきた。
恐る恐る目を開けると、スカタンクが自分の1メートルほど手前で倒れていた。
「カナエ、大丈夫か!?」
「大丈夫ですか、カナエさん!」
「あ、アキト!? 呼んでくれたんだ、ありがとう! えっと……」
自分の前に現れた幼なじみと先ほどの少女。
2人はカナエを守るように、彼女の前に躍り出る。
「自己紹介が遅れましたね。私はツボミって言います」
カナエは彼を呼んでくれた少女にお礼を言おうとしたが、名前が分からず口ごもる。ツボミはそれを察して、自己紹介をした。
「カナエが無事でホントに良かったよ……。さあて、そこのお前! オレの大事な仲間を攻撃しようとしてたんだ! 許さないぜ!」
アキトは安心して胸をなで下ろしてからリストバンドで額の汗を拭い、へそ出しの女性に見栄を切った。
「許さないからなんなのよ! このシッコク団幹部のスミレ様が、あなたみたいな子供に負けるわけないでしょ!?
……って、赤い帽子にサンダース……。ふぅん……」
「え?」
自分を見たスミレが興味深げにしているのを見て、アキトは首を傾げる。
「なるほど、あんた達がアタシ達の部下の邪魔をしたっていう子どもね。
分かった、今はアタシのニドクインちゃんがそういう気分じゃないし、これ以上長居して他にも人を呼ばれたらたまらないから、今日はこれで勘弁してあげるわ! それからそこのポニーテール、覚えときなさい! ほら行くわよ、あんた達!」
どうやら彼女の名はスミレというらしい。
スミレは未だ気絶している部下達をたたき起こし、大きな黒い袋を置いてさっさと撤退してしまった。
「待て、お前たち!」
「待ちなさい!」
「待って! アキト、ツボミちゃん! 相手は下っ端が何人も居るし自称幹部まで居るんだから、止めた方がいいよ! それに、追いかけたい気持ちはわたしも同じだけど……。先に、捕まってる人達を助けようよ」
2人が追いかけようとするのを、カナエは制止する。
……確かに、助けるのが先か……!
アキトとツボミは悔しそうにしながらも追うのを止め、ツボミは捕まっている人達を縛る紐をほどき始めた。
「ねえ、アキト」
「ん?」
彼女に加勢しようとしていたアキトを、カナエは呼び止める。
「助けてくれてありがとね、かっこよかったよ」
「へへ、気にすんなよ。仲間だろ?」
「うん、ありがとう!」
それだけ言うと彼女がツボミの加勢をしたので、アキトもまだ紐がほどけていない人に駆け寄った。
その後彼女達が置いていった大きな黒い袋の中身を確認するとモンスターボールが大量に入っており、すべてツボミを除く捕まっていた人達のものだったらしい。
それらを全て持ち主に返した後、アキト達はポケモンセンターに向かった。