01
「よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくね」
ここはウスハナシティのウスハナジム。
ジムリーダーのチグサは、青いタンクトップに黒のスカートだ。
「よし、行け! ブイゼル!」
「ゆくのよ、ビーダル!」
アキトが出したのは、釣りで捕まえた新しい仲間、みずタイプのブイゼル。
対してチグサは、みず・ノーマルタイプのビーダルだ。
「ブイゼル、がんばって覚えた技を使うぜ! きあいだまだ!」
ブイゼルは気合いを高めて渾身の力でエネルギーの球を放った。
「かわしなさい!」
ビーダルは横に移動して迫りくる球をかわそうとした。が、きあいだまは方向が逸れ、アキトにとって運の良いことにビーダルに命中した。
「あ」
彼女は予想外のことに、口を開け面食らっている。
「へへ、ラッキー!」
「やった!」
「おし、ナイスブイゼル!」
対してアキト達3人は喜ぶ。
「……驚いたわ。ビーダル、おんがえし!」
「させるか、アクアジェット!」
「受け止めて!」
攻撃をしようと走ってくるビーダル。阻止しようと水を纏って突進したが、ビーダルはそれを受け止めてから全力で攻撃を決めた。
だがブイゼルは素早く受け身を取り、ダメージを和らげる。
「よし、いいぞブイゼル! アクアテール!」
「ならこっちもアクアテールよ!」
2匹は互いの水流を纏ったしっぽをぶつけ合うが、ブイゼルは力負けしてそれを食らってしまう。
「きあいだま!」
しかしすぐに体勢を立て直しエネルギーの球を放ち、二度目のそれを食らったビーダルは倒れた。
「ビーダル、戦闘不能!」
「よし、まずは1匹!」
「ありがとう、休んで。ゆくのよヌオー!」
彼女が次に出したのはヌオー。とぼけた顔をしていて、見るからにのろそうだ。
「ブイゼル、きあいだま!」
「ヌオー!」
素早く放った技は、ヌオーに命中しダメージを与える。
「じしん!」
だがヌオーも反撃する。ヌオーがしっぽで地面を叩くことで、周囲に衝撃波が広がる。
「ジャンプだ!」
彼女の指示を聞いたアキトは、その直後に回避の指示を出し、ブイゼルは軽やかに跳び衝撃波をたやすく避ける。「ならどろばくだんよ!」
「きあいだま!」
しかし宙に居ることで回避行動がとれないブイゼルに、ここぞとばかりにヌオーが口から硬い泥の塊を発射する。
だが彼は、素早く反応し指示を出した。
ブイゼルは向かってくる泥にきあいだまをぶつけ、攻撃を相殺し着地した。
「じしん!」
そこを狙い再び衝撃波を起こすも、身軽なブイゼルはそれが当たる前に再び跳ねる。
「やっぱり速いわね……。なら距離を詰めてこごえるかぜ!」
遠くからの攻撃は断念したらしく、今度は接近し凄い冷気を放ってきた。
「もう一度きあいだまだ!」
だがそれをきあいだまで防げるはずがなく、ブイゼルはその攻撃を食らってしまう。
「じしんよ!」
「何度やっても同じですよ! ジャンプでかわせ!」
距離が近くヌオーが地面を叩くまでの時間に避けなければ食らってしまう。だが身軽なブイゼルならたやすくかわせる……はずが、やけにジャンプまでに時間がかかっていた。
それでもなんとか間に合ったが、明らかに先ほどに比べ動きが鈍っている。
「ブイゼル、ちょっと動き遅くなってない?」
「ああ、確かに。どうしたんたろうな」
「しまった、こごえるかぜの追加効果か……!」
「そうなんだ……」
「……」
カナエがダイスケに尋ね、彼が同意し疑問を浮かべた直後にアキトがそう言ったため、彼女は感心し、彼はなにも言わず口を閉じた。
「その通りよ。ヌオー、どろばくだん!」
「きあいだまだ!」
チグサが指示を出して、アキトも直後に指示する。
ヌオーは口から硬い泥の塊を放つ。
対してブイゼルは気合いを高めエネルギーの球をつくるが、動きが鈍くなりそれを放つのが間に合わず、泥に直撃してしまう。
「ブイゼル!?」
ブイゼルは歯を食いしばり立ち上がろうとしたが、体力が尽きて倒れてしまった。
「ブイゼル、戦闘不能!」
「……ありがとうブイゼル。ゆっくり休んでくれ。よし、行け! カビゴン!」
彼が次に出したのは、カビゴン。動きは遅いがパワーとスタミナがある、典型的な重量級アタッカーだ。
「カビゴン、のしかかり!」
「ヌオー、じしん!」
ヌオーの起こした衝撃波はカビゴンに当たるが、カビゴンはダメージに怯まず接近し倒れ込む。
「ぬ、ヌオー!?」
あまりの重さに、ヌオーはお腹の下でじたばたしている。だが、やはり抜け出せない。
「じしん!」
「のしかかり!」
そこでダメージを与えて早く倒そうと考えたチグサは指示をだし、ヌオーに乗っているだけでは倒せないと考えたアキトも同じく指示を出した。
ヌオーがカビゴンに衝撃波を与え、カビゴンがヌオーに勢いよくのしかかる。
何度も攻撃を受け体力が限界まで達したらしくヌオーは倒れたが、カビゴンはまだ戦えるようだ。
「ヌオー、戦闘不能!」
「よし、やったぜカビゴン!」
彼の声援に、カビゴンは腕を振って応えた。
「ありがとうヌオー、戻って。行きなさい、ルンパッパ! バブルこうせん!」
「へへ、カビゴン! のしかかりだ!」
タフなカビゴンは、いくらかダメージが溜まっているが、耐えて接近し思い切りのしかかった。
「ルンパッパ、かわらわり!」
だがルンパッパも反撃を見せる。
乗っかっていてゼロ距離のカビゴンは、避ける間も無くルンパッパの攻撃を食らってしまう。
効果は抜群。これまでのダメージもあり、カビゴンは倒れた。
「カビゴン、戦闘不能!」
「……ありがとう、カビゴン。ゆっくり休んでくれ。
よし、行け! ガーディ!」
アキトはカビゴンを戻し、ガーディのそれを軽く上に放り、キャッチして勢いよく投げた。
「おい、ガーディは相性悪いぞ!? なに考えてんだよお前!」
ガーディは気合い十分に吠えるが、ガーディは相性が不利。ダイスケは思わず身を乗り出して叫んだ。
「まあ見てろってダイスケ! 確かに相性が良いとは言えないけど、オレ達は絶対勝つぜ!」
「……はあ。……負けんなよアキト!」
「おう!」
彼の性格が分かっているダイスケは、もうなにも言わず応援することにした。
だが、内心は彼に勝てなかったことに対する悔しさで少し複雑な気持ちである。
無論そんなことを知らないアキトは、元気に返事をする。
「えーと……じゃあわたしも。アキト、がんばってね!」
「ああ、もちろん!」
続いてカナエからも声援を受けたため、それにも元気に返事をして正面に向き直った。「行くぜガーディ、かえんほうしゃ!」
「バブルこうせん!」
ガーディは激しい炎を放ち、ルンパッパの放った泡を次々に割り迫っていく
しかしルンパッパは技を中断し、寸前で回避した。
「もう一度かえんほうしゃ!」
「かわしなさい!」
だが激しい炎は命中し、体力が残り少ないのだろう、ルンパッパは顔を歪めている。
「よし、行ける! ガーディ、かえんぐるまだ!」
「ルンパッパ、かわしてバブルこうせん!」
炎を纏い真っすぐ突進する。しかしルンパッパは間一髪攻撃を横にかわし、通り過ぎざまに泡を放ち食らわせた。
「しまった! ガーディ、大丈夫か!?」
効果は抜群、かなりのダメージを受けたガーディだが、立ち上がった。
「よし、決めるぜガーディ! かえんぐるま!」
「かわして!」
今度は技を避けれなかったルンパッパは、すでに体力を消耗していたため耐えれず、崩れ落ちた。
「よし! やったぜガーディ!」
アキトがガーディに駆け寄り、同じくガーディも彼に駆け寄り胸に飛び込んで抱きかかえられる。
「おめでとうアキト君。これはウスハナジムに勝った証、アクアバッジよ」
「ありがとうございます!」
そう言って彼は、ガーディを下ろして差し出されたバッジを受け取る。
「よーし! アクアバッジ、ゲットだぜ!」
そしていつものかけ声でそれを高く掲げ、足元のガーディもジャンプする。