04
「……釣れないなあ」
「まだ来ないの?」
30分後、アキトは1人だけ釣れずに待ち続けていた。カナエは、すでに道具をしまってアキトの隣で膝を抱えて座っている。
そしてしばらく静寂が続くが、ようやく彼の竿に変化が起こる。
「お、来た!?」
アキトが歓声を揚げるが、その瞬間竿がすごい勢いで引っ張られる。
「うわ! くっ……!」
驚きながらも彼は全力で竿を引く。だが、抵抗するのがやっとで距離は全く変わらない。
「アキト! 手伝うよ!」
カナエも彼に手を貸し、2人の力を合わせようやく少しは張り合えるようになった。
「ぐぐぐ……!」
「ううんっ……!」
力いっぱい竿を引っ張り、距離は少しずつ縮まっていく。
そして後一歩、というところまで行ったが、一気に竿が軽くなり、2人は引っ張っていた反動でしりもちをついてしまった。
「うわぁ!」
「きゃあ!」
「いたたた、尻が……。カナエ、大丈夫か?」
「……あ、アキト! 後ろ!」
彼が尻をさすりながら立ち上がると、同じく立ち上がったカナエが後方を見ながら指を差している。
アキトが振り返ると、そこには1匹のポケモンが立っていた。
「あのポケモンは、ブイゼル」
ポケモン図鑑を開き、確認をする。
「ブイゼル。うみイタチポケモン。
しっぽをスクリューのように回し水中を泳ぐだけでなくまとわりつく海草も切れる」
図鑑が説明を読み上げ、それを聞き終えてポケットにしまう。
「けど、さっきまで居なかったよね?」
「たぶん、さっき竿に食いついてたのが水から出てきたんだろ」
「なるほど」
呑気に話す2人とは対象的に、ブイゼルは殺気立ちこちらを睨んでいる。
「よし、あっちもやる気満々みたいだな。行け! ゴンベ!」
アキトは何か誤解している気がする。カナエはそう思ったが、心にしまうことにした。
ゴンベはのんきにお腹をかきながらモンスターボールから姿を現した。
「よし、ゴンベ! のしかかり!」
ゴンベは走って接近するが、ブイゼルは跳んで後ろに回り込み、口から凍えるビームを発射し、直撃する。
「れいとうビームか……。へへ、強い技を覚えてるな! もう一度のしかかりだ!」
だがアキトはそれに感心をして、その後指示を出す。
ゴンベはあついしぼうでブイゼルの技をものともせず接近し、思いきりのしかかりブイゼルを下敷きにした。
「続けてほのおのパンチ!」
そして腹の下のブイゼルに炎を纏った拳を叩き込む。
ゴンベがどくと、ブイゼルはほとんど体力が残っていないのか歯を食いしばって立ち上がった。
「行け! モンスターボール!」
だがアキトはそのチャンスを逃さずに、空のモンスターボールをブイゼルに向け投じる。
ボールは三度揺れたが、それはすぐに収まった。
と、その直後、ラルトス同様ゴンベも身体から光を放つ。
「お、進化だな!」
光は見る見る大きくなっていたいき、ゴンベは3倍とちょっとの大きさになっていた。
「カビゴン。いねむりポケモン。
1日に食べ物を400キロ食べないと気がすまない。食べ終わると眠ってしまう」
「すごい大きくなったなあ」
アキトがカビゴンを見上げて言うと、カビゴンは照れくさそうに頭をかいた。