02
「絶対負けるもんか、行け! ヘラクロス!」
「フン、出て来いカイリキー」
2人が出したのはかくとうタイプのポケモンだが、むしタイプの入っているヘラクロスが有利か。
「ヘラクロス、メガホーン!」
「カイリキー、ストーンエッジ!」
ヘラクロスは飛んで硬い角を突き出し突撃を、カイリキーは鋭く尖った石を飛ばして迎え撃つ。
だがヘラクロスは高度を変えることでその石を難なくかわして接近する。
「攻撃をかわせた……。あのカイリキー、特性は根性だな」
「カイリキー、受け止めろ!」
アキトが分析している間にもリョウジが指示を飛ばす。
カイリキーは接近してくるヘラクロスの角を両腕で受け止め、残った腕のうち1本でそれを掴んだ。
「しまった!? ストーンエッジだ!」
「全て砕け!」
今度はヘラクロスが尖った石を飛ばす。だが、それはカイリキーの角を掴んでいない3本の腕でことごとく砕かれてしまう。
「なら思い切り投げ飛ばせ!」
「カイリキー、持ち上げろ」
ならばとヘラクロスは力強く地面を踏みしめてカイリキーを投げ飛ばそうとしたが、カイリキーに持ち上げられて宙に浮かされてしまい、それも失敗に終わる。
「ストーンエッジ!」
「今だ、つばめがえし!」
さらに反撃を食らってしまったが、ヘラクロスも持ち前の根性で負けじと攻撃を繰り出す。
「行け、ヘラクロス! メガホーンだ!」
効果は抜群、カイリキーの力が少し緩んだ隙に無理やり腕を引き剥がし、思い切り硬い角を突き刺した。
「よし!」
「ストーンエッジ!」
だがアキトの喜びもつかの間、カイリキーはすぐに反撃を繰り出した。技を決めたことにより油断して隙が生まれていたアキトとヘラクロスはそれに対応出来ず、食らってしまう。
「ヘラクロス!?」
「じしんだ!」
さらに、カイリキーが思い切り地面を殴ることによって発生した衝撃を食らってしまい、ヘラクロスは倒れてしまった。
「……ありがとうヘラクロス、ゆっくり休んでくれ。行け! ピジョン! ブレイブバード!」
「受け止めろ!」
先手必勝、早速翼を折りたたみ突撃するが、カイリキーは4本の腕全てを突き出して勢いを止めてしまう。
「まずい、離れろ!」
アキトはヘラクロスの時の反省から、すぐさま距離をとるように指示をした。
「ストーンエッジ!」
「かわしてブレイブバード!」
そしてカイリキーが尖った石を飛ばすが、それを回避しカイリキーに突撃を決める。
効果は抜群、カイリキーは倒れ、ピジョンは攻撃の反動を受けた。
「よし! いいぜピジョン!」
「出て来いヒトデマン!」
アキトが声援を送っている最中にも、彼はポケモンを出す。
彼の2体目は、みずタイプのポケモンヒトデマンだ。
「ピジョン、ブレイブバード!」
「避けろ!」
ピジョンは再び突撃するが、ヒトデマンはジャンプでそれをかわす。
「なっ、はええ!?」
「さすがリョウジ、よく育ててるな……!」
ダイスケが驚き、アキトも歯ぎしりする。
「れいとうビーム!」
「かわせ!」
今度はヒトデマンが攻撃を仕掛ける。ヒトデマンは、ピジョン目掛けて凍えるような冷たいビームを身体の中心の赤いコアから発射した。だがピジョンは旋回して、間一髪それを回避する。
「でんこうせっかだ!」
そして今度こそ避けられないように素早い攻撃を決める。
「ブレイブバード!」
「もう一度れいとうビーム!」
そして再び突撃をする。ヒトデマンの攻撃を食らいながらも痛みをこらえて技を決め、その直後にピジョンは攻撃の反動で倒れてしまった。
「ありがとうピジョン、ゆっくり休んでくれ。……最後はこいつだ、リョウジ! 行け! ガーディ!」
アキトは倒れたピジョンをボールに戻し、リストバンドで汗を拭ってからガーディのそれを軽く上に放り、キャッチして勢いよく投げた。
「あのガーディか。ヒトデマン、バブルこうせん!」
なんとかピジョンの攻撃をこらえたヒトデマンに、リョウジは早速指示を飛ばした。ヒトデマンはそのコアから、今度は泡を勢いよく放つ。
「かわしてひのこだ!」
だがガーディは、横に跳んでそれを避け小さな炎を放つ。
効果は今ひとつで威力もあまり無いが、体力が残りわずかのヒトデマンには十分だ。その技を食らったヒトデマンは、力尽き倒れた。
「戻れ、ヒトデマン。フン、なら俺はこいつだ。出て来いエレブー!」
彼はヒトデマンをボールに戻し、最後の1匹、エレブーを繰り出した。
「エレキッド、進化してたのか……! ……けど、負けないぜ! ガーディ、ひのこだ!」
ガーディは再び口から炎を放つ。だが、その威力は先ほどのそれと比べて明らかに強力になっている。
「な、なんだ!?」
アキトが戸惑っていると、ポケットから振動が伝わってきた。振動しているのはポケモン図鑑だ。
彼が取り出して画面を見ると、ガーディの覚えている技が表示されていた。しかし今までと一つ異なっているところがあり、それは、かえんほうしゃが加わっていた点だ。
「ガーディ、新しくかえんほうしゃを覚えたんだな!」
「10まんボルト!」
喜んでいるアキトだが、ガーディの放った激しい炎はエレブーの放った強力な電気により押し切られ、電撃を浴びてしまう。
「かみなりパンチ!」
「かわしてかえんほうしゃ!」
さらに拳が振り下ろされるが、言うが早いかガーディは後ろに跳んでそれを避け、火炎を放つ。
「よし! 続けてかえんぐるまだ!」
「終わらせろ、かみなりパンチ!」
上手く直撃して喜びつつも指示を出すアキトだが、エレブーはすぐさま体勢を立て直し、ガーディが炎を纏い突進するより速くその技を決めた。
「ガーディ!?」
ガーディは後方に飛ばされて、そのまま倒れてしまった。
「ガーディ! 立て、立つんだ!」
アキトがいくら必死に呼びかけても、ガーディはピクリとも動かない。戦闘不能だ。
「……ありがとう、ガーディ。ゆっくり休んでくれ。……」
くそっ……!
「戻れ、エレブー」
勝敗が決して、2人は互いにポケモンを戻した。
「……くそっ、また負けた……!」
「どうした、俺に勝つんじゃなかったのか?」
彼はボールをベルトにセットすると両手をポケットに突っ込み、近づいてきた。
「……ああ、勝つさ。確かに今回も負けたし、次も負けるかもしれない。
それでもオレは……絶対お前に勝ってやる!」
リョウジの言葉に、アキトは帽子を深くかぶり拳を握りしめ、叫ぶ。
「フン。……やはり、あきらめの悪いやつだ」
しかし彼は鼻を鳴らし少しの間を置きそれだけ言うと、3人に背を向け歩き出した。
「アキト……」
「……オレは、大丈夫さ。行こうぜ、カナエ、ダイスケ」
「……ああ」
「うん……」
カナエは心配そうに彼に声をかけるが、彼は帽子をかぶりなおして言った。2人も彼が落ち込んでいるのは分かったが、やはり励ます言葉は見つからず、返事だけをした。
「……もっと、強くなってやる。あいつに勝つために」
そして彼は、自分の手のひらを見つめてつぶやき、強く握りしめた。