01
「よろしくお願いします、トクサさん!」
「こちらこそよろしくね、アキト君」
ロクショウの森と、7番道路を抜けたアキト達一行は、食事を済ませジムに挑戦した。
場所はワカクサタウンのワカクサジムだ。
この街はその名の通り緑が豊かで、きれいな花がたくさん咲いている植物園もあるため、観光地にもなっている。
ジムリーダーのトクサは、七分袖の服にショートパンツ、髪は長くてお姉さんといった感じの人だ。
「アキト、がんばってね!」
「負けんなよアキト!」
「よし、行け! ヘラクロス!」
「行きなさい、ロズレイド!」
アキトが出したのはロクショウの森で捕まえたヘラクロス。
対してトクサは、くさ・どくタイプのロズレイドだ。
「ヘラクロス、メガホーン!」
「かわして!」
アキトは早速指示を出す。
ヘラクロスは硬い角を突き出して接近するが、ロズレイドは跳んで難なくそれをかわす。
「ヘドロばくだん!」
そしてがら空きになっているヘラクロスの背中に、ヘドロの塊をぶつけた。
「ヘラクロス、大丈夫か?」
アキトが声をかけると、ヘラクロスはすぐに体勢を立て直した。
「よし、もう一度メガホーンだ!」
「もう一度かわすのよ!」
再度接近するが、それも再びかわされてしまう。
「ヘドロばくだん!」
そして再びヘドロがヘラクロスに迫る。
「つばめがえし!」
だがヘラクロスは素早い動きで切り返し、ヘドロばくだんをかわしてロズレイドを切りつけた。
効果は抜群、ロズレイドはかなりのダメージだ。
「よし! メガホーン!」
さらに続けて硬い角を突き刺す。
強烈な一撃に、ロズレイドは後方に飛ばされ倒れた。
「ロズレイド、戦闘不能!」
「ありがとう、戻って。行きなさい、ワタッコ」
「ワタッコか……。いったん休むんだ、ヘラクロス。行け! サンダース!」
トクサが出したのはワタッコ、対してアキトが出したのはサンダースだ。
「おいアキト! 相手はくさタイプ、でんき技は効かねえぞ!」
「確かにそうだけど、ワタッコはひこうタイプも入ってるから大丈夫さ。それに……。まあ見てろって!」
実はサンダースに……。
ダイスケが彼に聞こえるように大きな声で言うが、アキトはぐっとサムズアップをして返した。
「アキト、大丈夫か?」
「大丈夫だよ、アキトだから」
ダイスケは心配そうだが、カナエはそうでもないようだ。
「よし、サンダース! 新しく覚えさせた技、めざめるパワーだ!」
アキトの指示を受けたサンダースは、半透明の白に近い水色のエネルギーの球数発をワタッコに向けて飛ばした。
「かわして!」
しかしワタッコは上昇してそれをかわす。
「はあ、めざめるパワー!?」
「なんだかダイスケ、今日はいつもよりしゃべるね」
アキトの指示した技にダイスケが驚くが、隣のカナエはそんな彼を不思議そうに見た。
「……ああ、まあ。いいかカナエ。めざめるパワーっていうのはな、使うポケモンによってタイプも威力も変わる技なんだ。けど、場合によってはみずタイプのポケモンがみずタイプのを覚えたりで……」
「ワタッコ、戦闘不能!」
「サンダース、すごい! 一撃で倒した!」
「聞けよ!」
ダイスケが説明しようとして腕を組んで目をつむるが、カナエはそれを全く気にせずに身を乗り出してサンダースを見ていた。
そんな彼女に文句を言ってから彼もバトルフィールドを見ると、すでにワタッコは倒れていた。
サンダースは涼しい表情をしているあたり、ダメージを食らわずに倒したようだ。
「す、すごいなサンダース!」
意外な威力に、トレーナーのアキトも驚いている。
「さすがに一撃で倒されるとは思わなかったわ。戻って、ワタッコ」
「ぼ、僕もびっくりです」
彼女、トクサの言葉に、彼も苦笑いしている。
「急所に当たったんじゃなければ、そのめざめるパワーのタイプは多分こおりかしら」
彼女の言葉から察すると、ワタッコを倒すのに使った技はどうやらめざめるパワーだったようだ。
「こおりですか……。良いタイプだ、やるなサンダース!」
彼が褒めると、サンダースはふん、と得意げにした。
……あれ? オレ、もしかしてサンダースと仲良くなってる?
「ふふ、タイプも知らないで使ってたの?」
「はは……まあ、どうかなー、と思っただけです……」
彼の様子を見たトクサが思わず笑いながら尋ねると、彼は苦笑いして答えた。
「アキトすげえと思ったら、なんとなくかよ……」
どうやらめざめるパワーを覚えさせた理由は、なんとなくというだけらしい。
「まあ、それがアキトだからね……」
ダイスケは彼のことを一瞬でもすごいと思ったのをバカらしく感じ、カナエも苦笑いしている。
「行きなさい、キノガッサ!」
とにもかくにも彼女は最後の一匹を出した。
このポケモンを倒せば、アキトの勝ちだ。彼も気合いを入れる。
「サンダース、シャドーボール!」
「マッハパンチ!」
サンダースが技を使おうとエネルギーを溜めようとしたが、キノガッサは腕を伸ばして先制攻撃を決めた。
「でんこうせっかだ!」
あの伸びる腕は厄介だ。接近戦に持ち込ませるため指示を出した。
サンダースはかなりの速さで接近する。
「タネマシンガン!」
「かわせ!」
キノガッサも勢い良く数発の種を発射し迎え撃つが、サンダースはその全てをジャンプでかわす。
「よし! シャドーボール!」
そして空中から黒い影の球を発射、命中する。
「もう一度シャドーボールだ!」
「マッハパンチ!」
一撃では倒せそうにないため追撃の指示を出すも、空中でエネルギーを溜めるサンダースの腹に高速の拳がのめり込む。
「サンダース!?」
「とどめのマッハパンチよ!」
宙でやまなりを描いているサンダースは、まだ体力が残っていた。だがそこに三度目の拳を決められてしまい、サンダースは力無く地に落ちた。
「サンダース、戦闘不能!」
「……ありがとう、サンダース。ゆっくり休んでくれ。行け! ヘラクロス!」
続けて出したのは、最初に戦ったヘラクロスだ。
「ヘラクロス、つばめがえし!」
「キノガッサ、かわらわり!」
ヘラクロスが素早く切りつけるが、キノガッサはその攻撃に拳をぶつける。
だが威力の差で、ヘラクロスは押し切られてしまった。
「もう一度つばめがえしだ!」
「かわらわりで受け止めてがんせきふうじ!」
そして二度目の攻撃も、再び押し切られてしまった。
キノガッサは隙の出来たヘラクロスに岩を投げつけてダメージを与え、落ちたものがヘラクロスの動きを封じる。
「そこよ、もう一度がんせきふうじ!」
身動きの取れないヘラクロスに、再度岩が襲いかかる。
ヘラクロスは避けれずに食らってしまい、耐えきれず倒れてしまった。
「ヘラクロス、戦闘不能!」
「……ありがとう、ヘラクロス。ゆっくり休んでくれ。
最後はお前だ、行け! ガーディ!」
2匹を倒されてしまったアキトは、残りの1匹を繰り出す。
ヘラクロスを戻して、ガーディのボールを軽く上に放り、キャッチして勢い良く投げた。
「ひのこだ!」
「振り払ってマッハパンチ!」
ガーディは早速攻撃をする。
小さな炎を撃ったが、キノガッサは腕でそれを払いもう片方の拳を伸ばした。
「かわせ!」
だが寸前で横にかわす。
「よし、接近してひのこだ!」
「振り払うのよ!」
距離を詰め再びひのこを撃つも、やはり払われてしまった。
「今だ、決めるぜ! かえんぐるま!」
しかしその隙を突いて炎を纏った突進をする。
「マッハパンチ!」
技を阻止しようと腕を伸ばすも再び横にかわされてしまい、かえんぐるまはキノガッサに直撃した。
「キノガッサ、戦闘不能!」
効果は抜群、キノガッサは倒れた。
「よし! やったぜガーディ!」
アキトはガーディに駆け寄り、抱き上げて頭を撫でる。
「負けたわ、アキト君。これが私に勝った証、リーフバッジよ」
「ありがとうございます!
よし! リーフバッジ、ゲットだぜ!」
彼はトクサがバッジを差し出したためガーディを地面に下ろし、それを受け取った。
そして高く掲げて言い、足元のガーディもそれに合わせジャンプした。
これでアキトの手に入れたジムバッジは4つ。あと半分で、ポケモンリーグへの参加資格を手にすることができる。