02
「本当に何か出そう……」
と、カナエが呟いた直後、彼女の目の前に影が現れ、泣き叫ぶような声を出した。
「うわ!?」
「きゃあ、出た!?」
「おわあ!?」
それは足が無くふよふよと浮いていて、色も暗く、赤いネックレスのようなものが付いていて、驚いた彼らを見て笑っている。
「……なんだ、ムウマか」
一瞬驚いたけど、正体が分かればなにも怖くはない。けどカナエは知らないのかオレにしがみついてきた。……って、
「なんでダイスケまでオレにくっついてるんだ?」
カナエがしがみついてくるのは分かるけど、……ダイスケもムウマを知らなかったのか。
2人はポケモンと気付かずに、怖がってアキトにしがみつく。
アキトの手を握るカナエの手に力がこもり、ダイスケも自身の拳を握りしめている。
「そ、そりゃあホントにオバケが居たら……!?」
「……!」
ムウマは、アキトがすでに自分を怖がっていないため、さらに彼に近づく。
だがポケモンと分かっているアキトが怖がるはずもなく、彼にしがみつきながら話していたダイスケとカナエが固まってしまった。
「に、逃げろおおお!!」
「いやあああ!!」
そしてもっと近づくムウマに、二人が叫んで逃げだそうとした。
カナエは、アキトが手を握っていたためその場を離れられなかったが、まさかダイスケまでこんなことになるとは思っていなかった彼は、ダイスケの手を掴んでいなかったため止めることが出来ず、どこかへ走り去ってしまった。
「あ、おい! ダイスケ!」
アキトの声も、彼には全く届かなかった。
「アキト、手を離して! お願い! 呪われる! 呪われちゃうよ!」
「お、落ち着けカナエ! 呪われないしそもそも幽霊じゃない!
あいつはムウマっていうゴーストタイプのポケモンだ!」
」
彼女がパニック状態のため彼を追いかけることも出来ず、まずは彼女を落ち着かせることにした。
「……え、本当?」
「ムウマ。よなきポケモン。
人の驚く様子が大好きで、突然現れたり泣き叫ぶような声を出す」
言われて図鑑を取り出して確認すると、確かに図鑑が認識した。しかも、結構かわいい。
「……本当だ。そうと分かれば怖くないわ! 行って、メリープ!」
カナエはそれで一気に元気を取り戻し、メリープを出した。
「メリープ、でんじは!」
ムウマは微弱な電気を浴びて麻痺状態になり、何かしようとしていたが身体が痺れて動けなかった。
「良いよメリープ、でんきショック!」
更に続けて電気を浴びせる。
「でんきショック!」
再び電気を浴びたムウマだが、それでも向かって来る。
不思議な念波を放ち、メリープはダメージを食らってしまう。
「ならもう一度でんきショック!」
三度電気を浴びたムウマは、さすがに弱ったような素振りを見せる。
「今だ、カナエ!」
「分かってる! 行って、モンスターボール!」
そこにモンスターボールを投げると、命中した。そしてモンスターボールが3回揺れカチッという音が鳴り、モンスターボールの揺れは収まった。
「……やった! 1回でゲット出来たよ、アキト!」
「ああ、練習の成果が出たな!」
2人が喜んでいると、メリープが突然光に包まれる。
「まさか、進化か!?」
2人が見てる間にも光はどんどん形を変え、光が消えるとメリープは全く違う姿になっていた。
「わあ、すごい! えっと……」
「モココ。わたげポケモン。
電気を通さない地肌はゴムのようにつるつるだが、体毛は電気を溜めやすい」
「すごい、モココ!」
「やったな、カナエ!
……あ」
2人は喜んでいるが、ここでアキトが彼のことを思い出す。
「そうだ、ダイスケを追いかけなくちゃ! 行こう、カナエ!」
「うん、分かった!」
アキトが彼女の手を握り、カナエも急いでモココをモンスターボールに戻す。「あ、ヘラクロス!」
二人は走り出したが、アキトがそのポケモンを見つけて立ち止まる。
「よし、行け! ガーディ!」
「ちょっ、アキト!? 急がなくていいの!?」
彼女のツッコミも、アキトには届かなかった。