02
「よ、よろしくお願いします、セイジさん」
「こっちこそよろしくね、アキト君」
セイジと呼ばれた男性は、この街のジムリーダーだ。
虫取りあみを背負い、虫メガネのようなメガネをかけており、上下タマムシ色の服を着ている。派手で目が痛くなるような虫づくしの格好だ。アキトも少し戸惑っている。
「よ……、よし、行け! ピジョン!」
「ゆけっ! カイロス!」
とにかく2人がポケモンを出し、ジム戦が始まった。
「ピジョン! ブレイブバード!」
「カイロス、シザークロス!」
2人の指示が飛び、ピジョンは翼を折りたたみ突撃を、カイロスは向かってくるピジョンに2本の角を向けて構えた。
だがカイロスが素早さで勝り、突撃が届くより先に2本の角が交差しピジョンを切り裂いた。
「ピジョン! もう一度ブレイブバード!」
「無駄だよ! もう一度シザークロス!」
再びピジョンは翼を折りたたみ突撃を、カイロスは2本の角を前方に向けて構えた。
「ピジョン! 宙返りでタイミングをずらせ!」
指示を受けたピジョンは、カイロスが両の角を交差させる直前に空中でひるがえり、きれいな輪を描きカイロスに突撃した。
「カイロス!?」
効果は抜群、カイロスはあお向けになり倒れ、ピジョンは攻撃の反動を受けた。
「カイロス、戦闘不能!」
「よし! やったなピジョン!」
「戻るんだカイロス。ゆけっ! シュバルゴ!」
セイジはカイロスを戻し、2匹目、シュバルゴを繰り出した。
「うわあ、騎士みたい。ねえダイスケ、あのポケモンもむしタイプのポケモンなの?」
「ああ。タイプは……。えっと……」
観客席のカナエが、隣で見ているダイスケに尋ねた。だが彼も分からずに、頭を抱えている。
「シュバルゴはむし・はがねタイプだぜ」
「おお、そうそう! それそれ!」
見かねたアキトが助け舟を出すと、彼は両手をパン、と合わせアキトを指差し言った。
「カナエ、あいつはむし・はがねタイプだ」
「さすがアキト、よく知ってるね!」
「へへ、だろ?」
「おい!」
そしてカナエを見て言うが、彼女は彼を無視してアキトを褒めたため、ダイスケは声を荒げた。
「よし! ピジョン、ブレイブバード!」
「受け止めろ! シザークロス!」
ピジョンは三度突撃するが、シュバルゴの両腕の槍に受け止められ、返しの一撃で倒れてしまった。
「ピジョン、戦闘不能!」
「……ありがとうピジョン、ゆっくり休んでくれ。行け! サンダース!」
「シュバルゴ、シザークロス!」
「かわせ!」
出てきたばかりのサンダースに、シュバルゴは高速で迫る。だが素早さならサンダースも負けてはいない。真っすぐ突っ込んできたのを、ひょい、と横に飛んでかわした。
「よし、10まんボルト!」
「シザークロス!」
そして電気を放つサンダースだが、シュバルゴはそれを食らいながらも接近し、二本の槍でサンダースを切り裂いた。
「大丈夫か!?」
だが、サンダースはまだ倒れない。顔を歪めながらも歯を食いしばって立ち上がった。
「サンダース! よし、行くぜ! 10まんボルト!」
「シザークロス!」
サンダースは再び電気を放つ。しかし、それでもシュバルゴは倒れず、サンダースに2本の槍の攻撃を食らわせた。
「サンダース!?」
アキトが名前を叫んでも、サンダースは倒れたまま起き上がらなかった。
「サンダース、戦闘不能!」
「……ありがとう、サンダース。ゆっくり休んでくれ。よし! 行け! ガーディ! ひのこ!」
アキトはサンダースをボールに戻し、残りの1匹、ガーディのそれを軽く上に放り、キャッチして勢い良く投げた。
ボールから出たガーディは、早速小さな炎を撃つ。
「かわしてシザークロス!」
さすがにこれを食らうのは体力的にも危ないと判断したのか、セイジは回避の指示を出し、続けて攻撃の指示を出す。
シュバルゴは炎を横に避け、ガーディに接近する。
「ガーディ、かえんぐるま!」
しかしガーディも、炎を纏い突進をする。シュバルゴが槍を振るうが、それが決まるより先にガーディの技が決まった。
効果は抜群、シュバルゴは倒れた。
「シュバルゴ、戦闘不能!」
「……ありがとう、戻るんだ。ゆけっ! コロトック!」
彼はシュバルゴを戻し、最後のポケモンを繰り出した。
「ガーディ、ひのこ!」
「コロトック、かわしてシザークロス!」
ガーディは小さな炎を撃つがコロトックは横にかわし接近して、腕を交差させ切りつけた。
だがガーディはすぐに立ち上がり、元気に吠える。
「よし、もう一度ひのこ!」
「かわせ!」
再び横に避けようとしたコロトックだが、今度は技を食らってしまう。
「よし! 決めるぜ、ガーディ! かえんぐるま!」
さらに、続けて炎を纏い突進する。
効果抜群の連撃を食らったコロトックは、後方に飛ばされ倒れた。
「コロトック、戦闘不能! よって勝者、コキヒタウンのアキト!」
「よし、やったぜガーディ!」
ガーディはアキトに駆け寄り、足元に座った。アキトはしゃがんで、その頭を撫でる。
「負けたよ、アキト君。はい、クリケットバッジ。このジムに勝った証だ」
セイジはそんな彼に近寄り、バッジを差し出した。
「ありがとうございます!
よし! クリケットバッジ、ゲットだぜ!」
アキトは立ち上がり、礼を言いながらそれを受け取る。そしてそれを高く掲げて喜び、足元のガーディもそれに合わせ高くジャンプした。