01
「よし! 初めてのバトルだ、絶対負けないぜ! 行け! ガーディ!」
「気を抜くなよ。出て来い、エレキッド!」
2人は研究所の目の前の広い野原に出て向かい合い、アキトはモンスターボールを軽く上に放り、キャッチして勢いよく投げた。
ボールから出たガーディは、元気いっぱいに吠える。
リョウジもボールを投げ、エレキッドが出て来る。
「エレキッドか……」
「エレキッド。でんきポケモン。
腕をぐるぐる回して電気を発生させるが、すぐ疲れるので少しししか電気が溜められない」
アキトが出て来たエレキッドに図鑑をかざすと、図鑑が認識して電子音声がそのポケモンの説明を読み上げる。
図鑑の画面には、対象となるポケモンの姿と説明が表示されている。
「よし、オレのガーディは……」
「……」
「ガーディ。こいぬポケモン。
人なつこく誠実な性格。敵には吠えて噛みつき追い払おうとする」
今度は対象を自分のガーディに変更する。
すると今度は、先程エレキッドを認識したとき同様のデータとともに、このポケモンの大きさ、体重、覚えている技も表示され、アキトは技を確認し図鑑をポケットにしまった。
「……そろそろいいか?」
彼は既に確認済みだったのか図鑑を出さずに待っていたらしく、アキトが図鑑をしまったのを見て尋ねてきた。
「ああ、いいぜ! よし! ガーディ、ひのこだ!」
「エレキッド、でんきショック!」
2人は同時に攻撃の指示を出す。
ガーディは口から小さな炎を撃ち、エレキッドは二本の角の間から電気を放つ。二つの技は空中でぶつかり合い、相殺された。
「威力は互角か……」
「なら次はかみつく!」
「でんこうせっかでわざを潰せ!」
かみつくをしようと飛びかかるガーディだが、エレキッドに目にも留まらぬ速さで突っ込まれ体勢を崩してしまう。
「続けてクロスチョップ!」
そして、追い打ちを掛けるようにガーディに両手を叩きつけた。
「ガーディ、大丈夫か?!」
アキトが心配して声を掛け、それに答えるようにガーディは小さく吠え体勢を立て直した。
「よし、いけるな。アイアンテール!」
「クロスチョップ!」
ガーディはエレキッドの頭上に跳び固い尻尾を振り下ろすが、エレキッドはそれに両手を叩きつけ弾き返す。
「まだまだ! かみつく!」
「かわしてでんきショック!」
すぐさま体勢を立て直し再び飛びかかるガーディだが、エレキッドは後方に下がりそれをかわし電気を浴びせる。
「追撃だ、クロスチョップ!」
そして、再び両手を叩きつけられた。
「ガーディ! 大丈夫か!?」
何度もエレキッドの攻撃を受け満身創痍のガーディだが、アキトの声を受け、歯を食いしばってなんとか立ち上がった。
「まだ行けるか?」
その様子を見て無事か訪ねると、ガーディは痛みを押し殺し威勢良く吠え、大丈夫、と伝えた。
「ガーディ……。よし! お前の気合い、無駄にするわけにはいかないよな。勝とうぜガーディ! これで決めるぞ! かえんぐるま!」
そして指示を受けたガーディは、思いきり吠え炎を纏い突進する。
「終わらせるぞ、エレキッド!かみなりパンチ!」
対するエレキッドは、電撃を纏った拳で迎え撃つ。
ぶつかり合った二つの力は火花を散らしてしばらく拮抗していたが、徐々にエレキッドが押していく。
「負けるな、行けぇ!」
「押し切れ!」
だがアキトの応援も空しく、ガーディは力負けして拳を食らい、宙に投げ出されてしまった。
そして地面に落下したガーディだが、今度こそ起き上がる様子はない。戦闘不能、アキトの負けだ。
「……ごめんな、ガーディ。ゆっくり休んでくれ。……リョウジ、お前強いな。手も足出なかったよ!」
彼は倒れたガーディを抱き上げ頭を撫でた後ボールに戻し、悔しさと申し訳なさを抑えてリョウジに握手を求めた。
「は、お前が弱いだけじゃないのか?」
だが彼は、その手を無視してアキトを嘲笑する。
「な……、なんだと!?」
「実際、お互いトレーナーになったばかりのはずが随分差が付いてたじゃないか」
「くっ……!」
なおも続けるリョウジに、アキトは何も言い返せず唇を噛みしめている。
「まあいい、行くぞエレキッド。戻れ」
彼は足元に駆け寄ってきたエレキッドをボールに戻し、アキトに背を向け歩き出した。
「リョウジ! オレは……。絶対、お前に勝つからな!」
「……」
アキトは去りゆく彼の背を指差して宣言し、ガーディを回復させるため研究所へと走りだす。そして、その言葉を聞き一度は立ち止まり振り向いたリョウジも、彼が戻るのを見て再び歩き出した。