01
「よーし、ゴマゾウゲット!」
4番道路、昼食を済ませたアキト達はここでも草むらでポケモンを捕まえていた。
「次は……ん?」
そしてアキトがゴマゾウを捕まえ他にポケモンが居ないか辺りを見回すと、そこには羊のようなモフモフのポケモンが居た。
「あのポケモンはメリープだな。えっと……」
「メリープ。わたげポケモン。
体に静電気が溜まると体毛がいつもの二倍ほどにふくらむ。
触ると痺れる」
彼はポケモン図鑑を取り出し認識させ、説明を聞き終えポケットにしまった。
「そういえばカナエ、かわいいポケモンがどうとか言ってたな。呼んでみるか。おーい、カナエー。ちょっと来てくれー」
前のことを思い出したアキトが呼ぶと、少し離れた場所に居る彼女がすぐにはーい、と返事をしてこちらにやってきた。
「どうしたの、アキト?」
「……」
「……?」
彼女の問いにアキトはなにも言わずにメリープを指差し、彼女はその方向に目をやる。
「……かわいい!?」
そしてそれを発見した直後、カナエは嬉しそうな声をあげた。
「アキト! あのポケモン、なんていうの?」
「あれはメリープ。わたげポケモンで、触ると痺れるから気を付けろよ。……」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
彼女に聞かれたアキトが答えるが、その時に思わず先ほどのポケモン図鑑と自分を重ねてしまい、彼は自分でなにを考えているのか分からなくなった。
「ね、ねえアキト?」
カナエがすごく目を輝かせている。
「ああ、捕まえていいぜ。そのつもりで呼んだからな。頑張れよ!」
「ほんと!? ありがとう! 行って、モンスターボール!」
「あ、おい!」
カナエはアキトが答えた直後に、モンスターボールを投げた。
まだ弱らせていないのに投げても捕まりにくいのに、と彼は思ったが、どうやらそれ以前の問題があったようだ。
彼女の投げたボールは対象の真上を通過して行った。
「もう1回!」
「待った、まずはメリープを弱らせないとダメだ!」
「え?」
アキトはめげずにボールを投げようとした彼女の腕を掴み、慌てて制止する。
「ポケモンをゲットする時は、まず相手を弱らせてからじゃないと捕まえにくいんだ」
アキトから注意を受けた。言われてみると、確かにアキトはポッポを捕まえる時に先に弱らせていた。
「分かった。行って、ナゾノクサ! はっぱカッター!」
アキトの言うとおりに、カナエはモンスターボールから自分の相棒を出して指示を出した。
ナゾノクサは葉っぱを飛ばして攻撃をして、それはメリープに命中し、きちんとダメージを与えた。
「もう一回はっぱカッター!」
そして再び葉っぱを放つ。
向こうも電気を放ってきたが、ナゾノクサの攻撃はそれを打ち消しさらにダメージを与えた。
メリープはすでにかなりのダメージだ。
「よし、もう大分弱ってる。カナエ、今だ!」
「分かった! 行って、モンスターボール!」
ここでアキトに言われてカナエはモンスターボールを投げる。
が、また外れる。
「あ」
「こ、今度こそ! 行って、モンスターボール!」
外れる。
「ああ……」
「も、もう一回!」
外れる。
「……」
「うう……、お願い!」
そして、外れる。アキトは言葉を失っている。
「……」
「……アキトォ」
「え? な、なに?」
呆れながら見ていたアキトだが、彼女が突然泣きそうな顔で見てきて戸惑ってしまう。
「モンスターボール、無くなっちゃった……」
うんうん、そうか。がんばれよ。……って、
「……ええ?!」
そして彼女の発言を聞いて、アキトは大きな声で驚く。
「あ、まずい! 行け、モンスターボール!」
そして横目でメリープを確認すると、今のうちに逃げようとしているのが見えた。
彼が慌ててモンスターボールを投げるとそれは命中し、2、3回揺れてからカチッという音が鳴り、揺れは収まった。
「すごい、1回で……」
「ほら、カナエ」
「え?」
彼女が感心している間にアキトはそれを拾い上げ差し出すと、彼女は驚いたようにアキトを見た。
「捕まえたかったんだろ、メリープ」
アキトは微笑みながら待っている。
「アキト……。ありがとう」
アキトは、やっぱり優しい。笑顔でそれを受け取ると、彼女の頭にぼすっと手を置かれた。……やっぱり、アキトにこうしてもらうと安心する。
「けど! 次の街に着いたら、モンスターボールを投げる練習だからな!」
「……うん!」
アキトは笑顔でそう言って、カナエも笑顔で返事をした。