03
「いくらお前が相手だからって、手加減はしないぜ、カナエ!」
「ええ!? トレーナーとのバトルは初めてなんだよ?」
「だからって手を抜いたら真剣勝負じゃないだろ?」
腰に手を当て、当然、という風な感じだ。
「……うう、分かったよ」
彼のガーディと彼女のナゾノクサは、気の毒そうに彼女の顔を見つめている。
それはそうだ、すでにバッジを1つゲットしているアキトと、初めてトレーナー同士のバトルを体験するカナエ。タイプ相性の差を考慮せずとも結果は見えている。
「ナゾノクサ、はっぱカッター!」
「行くぜガーディ! そのまま突っ込んでひのこ!」
「……かわいそうに」
元気いっぱいに指示を出す彼を見てダイスケは哀れに思ったが、言ってもしかたがない。
ナゾノクサは葉っぱを飛ばして攻撃をするが、ガーディはそれをものともせずに口から小さな炎を撃つ。
「ああっ!?」
「よし、続けてかえんぐるまだ!」
さらに炎を纏い突進し、ナゾノクサは直撃して後方に飛ばされた。そしてそのままして、落下し目を渦巻きにして倒れた。戦闘不能だ。
「よし、よくやったなガーディ!」
「……ありがとうナゾノクサ、戻って」
アキトは嬉しそうにガーディに駆け寄るが、カナエは肩をがくっと落としナゾノクサをボールに戻した。
「……まあ、元気出せよ」
「……うん」
「……」
ダイスケは彼女を励まそうとしたが、なにを言っても無駄だと悟り無言になった。
「よし2人とも! それじゃあ行こうぜ!
……カナエ、どうしたんだ?」
いつの間にかガーディをボールに戻していたアキトが振り返ると、彼女がうつむいていた。
ダイスケは心の中でお前のせいだよ、とツッコミを入れた。
「えっと……」
「初めてのバトルで疲れたんだとよ」
「そうか……。じゃあカナエ、少し休むか?」
納得するんだ。ありがとうダイスケ。アキトは、心配そうに駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫!」
「ほんとか? あまり元気そうには見えないぜ?」
だからお前のせいだよ。ダイスケはまたも1人でツッコむ。
「ほんとほんと! 元気だよ!」
「……ならいいんだけど。休みたくなったら言えよ、カナエ」
「うん、ありがとう、アキト」
カナエとダイスケがごまかすと、彼は不思議に思いながらもそれ以上は詮索せずに再び前に向き直った。
「……はあ。あいつって鋭いのか鈍いのか分からないよな」
「……うん。まあ、アキトはそれだからアキトなんだけど……」
「たまに疲れるよな」
「おーい、早く行こうぜー!」
2人が歩きながら話していると、少し遠くから声が聞こえてきた。
どうやら話に集中して歩くのが遅くなっていたらしく、彼との距離が離れていたみたいだ。
「分かったー!」
「おーう!」
2人は話を切り上げ、返事をしてから彼に駆け寄った。