03
「……うん、昼より空気が冷たくて気持ちいいな」
既に日が落ち暗い中、街灯を頼りにカワラケシティの公園に来たアキトは、言いながらベンチに座り3つのモンスターボールを取り出した。
「……よし、みんな出てこい!」
そしてそれらを上に放り、ガーディ、ポッポ、サンダースをボールから出す。
「うわっ!」
だが、出てきたサンダースはやはりアキトの足元に電気を放ち.彼から顔を背けた。
「なあサンダース、教えてくれ。お前をあんな目に遭わせたのは、あいつら……、あの、シッコク団とかいうやつなのか?」
彼はそれでもサンダースに問いかける。
すると、今まで顔を背けてツンとしていたサンダースが、シッコク団、という言葉を聞いた瞬間に全身の毛を針のように逆立てた。
「……やっぱり、そうなのか。お前、初めてボールから出した時もあれほど興奮してなかったもんな」
彼が逆立った毛に刺さらないように気をつけながらサンダースを優しく撫でると、少し落ち着いたのかその毛は徐々に元に戻っていく。ガーディはそれを確認してサンダースを舌で舐め毛繕いを始めたが、纏っている電気に感電しビクッと身体を震わせた。
「……なあ、サンダース。これからは一緒に戦わないか? ジム戦や博物館みたいに、1匹で動くんじゃなくてさ」
サンダースは耳をぴくっと動かした。ちゃんと聞いてくれているみたいだ。
「もちろん、オレがトレーナーとして力不足と思ったならオレのとこから居なくなってもいいし、相手があのシッコク団だかのやつらの時だけでいいんだ」
アキトは穏やかに自分の提案を伝え、サンダースもガーディもポッポも彼の顔を見つめている。
「相手が今日のジム戦みたいにデタラメに戦っても、それにちゃんと戦ってもどうしても1匹じゃあ倒せない時だってあると思う。けどオレ達が力を合わせれば、そんなやつらも倒せると思うんだ。なあガーディ、ポッポ」
2匹はコクリと頷き、その後その2匹からじーっと見られたサンダースは、ゆっくりと頷いた。
どうやら、了承してくれたらしい。
「そうか……、ありがとな、サンダース!」
そういって抱きしめようとしたアキトだが、ぴょんと跳んでかわされてしまった。
どうやら、それとこれとは別らしい。
「っはは。まあ、一緒に戦ってくれるだけでも嬉しいよ、ありがとう」
それでも笑顔で笑いかけると、サンダースは再び顔を背けツンとして、彼の腰についたモンスターボールのスイッチを押してボールの中に戻っていった。
「……よし、オレ達もそろそろ戻るか」
「あ、居た! アキトー!」
そう言って立ち上がった直後遠くから声が聞こえてきて、よく見知った幼なじみの少女、カナエが走ってきた。
「お、カナエ!」
走ってくる彼女にアキトと足元のガーディも駆け寄り、ポッポは飛んで近寄って、足元に立った。
「寒くないか?」
彼女の格好は半そでだ。まあオレもそうだしオレは寒くないけど、一応聞いてみる。
「うん、大丈夫。それよりアキト、どうしたの?」
「ああ、まあちょっと。けど、もう大丈夫だ。な、ガーディ、ポッポ」
彼が足元のガーディとポッポに目をやると、2匹は元気に返事をした。
「……? ……ううん、よく分からないけど、良かったね! じゃあ、戻ろっか!」
カナエはキョトンとして少し考え込んだが結局分からず、とりあえず笑顔で言った。
「ああ!」
アキトは2匹を軽く撫でた後モンスターボールに戻し、2人は話しながらポケモンセンターへの帰路を辿っていった。