03
「ターゲットはこれだな?」
「ああ。この破壊の遺伝子で間違いない」
「けどなんでこんなの欲しいんだろうな?」
「……なに? あの変な人達」
アキト達がゆっくり歩いて見物していると、一つの展示品の前に、上下黒服で、上着には赤い文字でSの字が掛かれたものを着て、同じく黒い、ハンチングのような帽子をかぶっている真っ黒な集団を見つけた。アキトが、いぶかしげにそれを見つめる。
「コスプレ集団か?」
「カナエ、ダイスケ、関わらないようにしよう」
「そうだね」
「気付かれないように後ろを通るぞ」
3人の意見が合致した。かかわらないほうがいい。そっと後ろを通ろうとして彼らの方を向くと、ちょうどポケモンに攻撃の指示を出すところだったようだ。彼らの出している数匹のポケモンの内の一匹、アーボが構えている。
「お前達なにやってるんだ! 行け! ガー……」
アキトがそれを止めようと慌てて左手をモンスターボールに伸ばすが、掴むよりも先に3つ目のモンスターボールが勝手に開き、サンダースが姿を現した。
「サンダース!?」
出てきたサンダースは、興奮しているのか全身の毛を逆立て強力な電気を周囲に放った。
「なんだこのガキ!」
それが先ほどのアーボに当たり、一発で倒れてそのトレーナーとおぼしき1人と他の人達がこちらに気付き声を荒げる。
「ど、どうしたんだよサンダース! 落ち着け!」
だがアキトは、それに気付かずサンダースを見ている。
まだサンダースは興奮が収まらず、電気を撒き散らしている。
「くっ……。戻れ、サンダース!」
「ちっ……。覚えとけ小僧! 我々はシッコク団! いずれこの地方を……。いや、世界を征服する組織のしたっぱだ!」
「え?」
危険に思ってサンダースをモンスターボールに戻した直後、アキトはいきなりそんなことを言われて意味が分からず辺りを見てみる。すると、いつの間にか彼らのポケモンが全て倒れていた。
「あー……。巻き込まれたのか」
悪いことはしていない、いや、むしろいいことをしたはずだが、なぜかアキトは申し訳なく思ってしまった。
だがそんなことを思っている間にも、彼らは退散してしまった。
「……なあ、あいつらなんだったんだ?」
「……さあ?」
彼らの走っていった方を見て、ダイスケとアキトが首を傾げる。
「アキト、大丈夫?」
「ああ。……とりあえず、そろそろ出よう。それで今日は休んで、明日次の街に行こうぜ」
意味が分からなかったが、とりあえず3人はポケモンセンターに戻って休むことにした。