03
「ススタケさん、挑戦者です」
バトルフィールドに着くと、既に1人の男性が立っていた。
髪は短く、上半身裸で裸足という格好だ。恐らく彼がこのジムのリーダー、ススタケだろう。
「帽子の少年、お前がチャレンジャーか?」
やはりそうだったようだ、彼が話しかけて来た。
「はい、ジム戦お願いします!」
「ああ、もちろんだ」
「使用ポケモンは3体、交替は挑戦者のみ認められ、先に全てのポケモンを倒した方が勝ちとなる!
それでは、始め!」
先ほどのガイドが両手に旗を携え、ルールの説明をしてから右手を振り上げる。
「初めてのジム戦、最初はお前だ! 行け! ガーディ!」
アキトは軽くボールを上に放り、キャッチして勢い良く投げた。
「おれの硬い石よ、現れろ! ウソハチ!」
互いのポケモンが姿を現し、とうとうアキトのポケモンマスターになるための旅で最初のジム戦が始まった。
「あのポケモンは?」
カナエが図鑑を取り出して相手のポケモンにかざす。
「ウソハチ。ぼんさいポケモン。
乾燥した空気を好む。水分を調節するときに出す水が涙に見える」
「ぼんさいポケモン、くさタイプのポケモン?」
「ぽいけど、いわタイプのジムなんだよな……」
カナエは不思議に思いながら図鑑をしまい、ダイスケとともに首を傾げた。
「はは、カナエ、ダイスケ、ウソハチはいわタイプだぜ?」
「ええ!?」
「見た目どうみても盆栽じゃねえか!」
「そんなこと言われてもな……」
アキトは苦笑いしながら指で頬をかき、相手に向き直った。
「よし、ガーディ! まずはひのこだ!」
指示を受け口から小さな炎を撃つガーディだが、ウソハチにはあまりダメージはないようだ。
「続けてアイアンテール!」
「ウソハチ、いわおとしだ!」
今度はアイアンテールを指示するが、ウソハチは落ちていた岩をどうやってか持ち上げ、投げつけてきた。
「危ない、かわせ!」
ガーディはなんとか横にかわそうとしたが、直撃してしまう。
「ガーディ、大丈夫か?」
心配して声を掛けると、ガーディは痛そうにしながらも元気な声で返事をした。「……もう一度アイアンテールだ!」
「いわおとし!」
「かわせ!」
今度は早めに反応出来たおかげで難無くかわして、そのまま走って接近し硬いしっぽを叩きつける。
これは効いたらしく、よろけている。
「よし、今だ! かえんぐるま!」
そこに炎を纏い突進するとウソハチは後方に飛ばされ、落下して目を渦巻きにし倒れた。
「ウソハチ、戦闘不能!」
「よし、よくやったなガーディ!」
アキトはガッツポーズをして喜ぶ。
「次はノズパスだ!」
「戻れ、ガーディ。……行け! サンダース!」
2人はポケモンを戻し、2匹目を繰り出した。
「サンダース! まずは……うわぁっ!」
アキトが早速指示を出そうとしたが、その前にサンダースが辺りに電気を撒き散らした。
「まだ言うことを聞かないのか。だがバトルはバトル、手は抜かない!
ノズパス、いわおとし!」
ノズパスは岩をサンダースに投げつけるが、電気に弾かれ届かなかった。
「サンダース、言うことを聞いてくれ!」
だがサンダースは彼の言葉を無視して、電気を放ち続ける。
それはノズパスにも当たり、なんとノズパスは一撃で倒れてしまった。
……すごいな、サンダース。
「ノズパス、戦闘不能!」
「くっ……! やるな! だがこいつに勝てるかな?
任せたぞイシツブテ!」
「イシツブテか……。サンダース、戻ってくれ!」
ススタケがノズパスを戻しアキトも戻そうとするが、サンダースはボールから放たれた光を避け、アキトの足元に電気を撃った。
「うわっ! さ、サンダースゥ……」
彼がうなだれるが、そうこうしている間にも、ススタケは最後の一匹、イシツブテを繰り出した。そしてサンダースはそのイシツブテに電気を放つが、イシツブテはびくともしない。
「ダメだサンダース! イシツブテにでんきタイプの技は効果が無い!」
「イシツブテ、いわおとし!」
アキトの言葉にサンダースが驚き振り向くが、そこに岩が命中する。
「大丈夫か、サンダース!?」
彼が呼びかけてもサンダースは無視して、今度は影の球を放った。
サンダースはアキトを無視はしていても、話を聞いていないわけでは無いのかも知れない。
「イシツブテ、かわしていわおとしだ!」
「サンダース、かわせ!」
だがイシツブテの投げた岩は、サンダースにクリーンヒット。
サンダースは、耐えきれず倒れてしまった。
「サンダース、戦闘不能!」
「サンダース……。ごめんな、ゆっくり休んでくれ。
行け! ポッポ!」
アキトはサンダースを戻し、三匹目、ポッポを繰り出した。
「イシツブテ、いわおとし!」
「かわしてはがねのつばさだ!」
イシツブテの投げた岩をポッポはたやすく回避し、硬い翼をぶつけた。
「くっ、いわおとしだ!」
イシツブテは少し揺らぐが、すぐさま持ち直し再び岩を投げつけた。
「かわせ!」
しかしポッポは、上空に飛びそれをかわした。
「よし! はがねのつばさ!」
そしてそこからイシツブテへと翼を広げ突進する。
「羽を掴め!」
だが、イシツブテはその翼を掴みポッポの攻撃を受け止めた。
「ウソだろ!?」
「ずつきだ!」
さらに、ポッポに勢い良く頭をぶつけ、ポッポは後方に飛ばされてしまう。
「いわおとし!」
そこに岩をぶつけられ、ポッポは地面に落下し倒れてしまった。
「ポッポ、戦闘不能!」
「ありがとなポッポ、ゆっくり休んでくれ。
後は頼んだぜ、相棒! 行け! ガーディ!」
アキトはポッポを戻して、最後の一匹、ガーディのボールを軽く上に放り、キャッチして勢い良く投げた。
「連続でいわおとしだ!」
「うわ!? か、かわせ!」
再びガーディが姿を現し元気に吠えるが、沢山の岩が飛んできたため慌てて避ける。
「当たるまで何度でもやれ!」
だがイシツブテは両手を使い次々と岩を投げ、ガーディはかわすのに必死だ。
……ジャンプで近づくのは途中で岩に当たるからダメ、相手のスタミナ切れを狙うのも、ガーディの方が先に疲れるだろうからダメ。普通に避けながら行くのもできそうにない……。足場でもあれば、避けながら近づけるのに……!
アキトも、なかなか岩の雨の打開策が考えつかず攻めあぐねている。
「ん、待てよ? 足場?」
だが彼は、先ほどの考えを再び見つめなおす。
「……そうだ。
ガーディ! 飛んでくる岩を足場にするんだ!」
そして彼はニッと笑い、指示を出した。
ガーディは戸惑いつつも、言われた通りに動く。
「なに!?」
「よし! アイアンテール!」
ガーディは飛んでくる岩を足場にどんどん接近していき、硬いしっぽを叩きつける。
「よし! 決めるぜ、ガーディ! かえんぐるま!」
イシツブテはなんとかその攻撃は持ちこたえたが、ガーディの炎を纏った突進を食らい後方に飛ばされ、そのまま倒れた。
「イシツブテ、戦闘不能!
よって勝者、チャレンジャーのアキト!」
「ふぅ……。よぉし! やったぜガーディ!」
審判が下され、アキトはリストバンドで汗を拭ってからガーディに駆け寄り抱き上げた。
その後ガーディを地面に下ろし、頭を撫で回す。
「……おめでとうアキト君。これはこのカワラケジムに勝った証、ロックバッジだ。受け取ってくれ」
「ありがとうございますススタケさん!」
ススタケが彼に近づきバッジを差し出したので、彼は撫でるのをやめそれを受け取る。
「よし! ロックバッジ、ゲットだぜ!」
そしてアキトはそれを高くかかげて喜び、足元のガーディも彼の声に合わせてジャンプした。