十七話
2番道路を進むこと数時間。そのあいだにミコトとヴァインは、様々な野生ポケモン、そしてトレーナーと戦い、様々なポケモンを図鑑に登録した(といっても捕まえたわけではなく、見ただけだが)。
そろそろ次の街が見えてきた。
「サンヨウシティ……だったっけ? 確か、ポケモンジムがどうとかって」
「タジャ!」
ヴァインは元気よく頷く。バトルで疲れているのだが、次の街――未知の場所と考えるとわくわくが止まらないのだろう。
「どうしようか。タウンマップによると、『夢の跡地』って場所があるから……そっちにも行ってみたいよね」
「タジャタージャ」
『夢の跡地』にも、見たことがないポケモンがいるだろうと考えたミコト。
「うーん……まずは『夢の跡地』かな?」
「タジャー?」
首をかしげるヴァイン。
「うん、そうしよう」
ミコトは意気込んだ。
とそこに、
「おうい! ミコト!」
ベルがやってきた。
「あっ、ベル」
「ねえねえ、ポケモンバトルしようよ!」
唐突すぎる。
「新しく捕まえたポケモンも、ちょっとは強くなったし! ミコトもそうでしょ?」
「ボク、まだヴァインしかいないよ」
「えぇ!?」
2番道路には、ミネズミ、ヨーテリーの他、チョロネコがいた。しかし、仲間になったポケモンは一匹もいない。なぜなら、むやみに捕獲をしたくないから。
「だけど、バトルは受けようかな。ヴァインなら勝てるし」
ものすごい勢いでヴァインは頷いた。
「むぅ。なんかムカつくなあ!」
頬を膨らませるベルだが、
「じゃ、はじめるよ!」
さっと距離をとった。
「ヴァイン、疲れているところ悪いけど……よろしくね」
「タージャ!」
ミコトはもちろんヴァインを戦闘に出す。
「ようし。いっくよー、テリリン!」
ベルが放ったモンスターボールから出てきたのは、ヨーテリーだった。
「きゃうきゃう!」
元気いっぱいだ。
「先手必勝、『まきつく!』」
ヴァインは、疲れを感じさせないような速さでヨーテリーに近づき、技名どおり巻き付いた。
「きゃうっ!」
「テリリン、負けないで! 『かぎわける』!」
しかし、巻き付かれていて動くことができない。
「むううう……気合入っちゃうよ! あたしも、ポケモンも!」
えっと、えっとと呟きながら、ベルは考える。そのあいだにもヨーテリーは、ヴァインに巻き付かれているのだが。
「『つるのムチ』だ!」
「タジャ!」
ヴァインは首元からつるを出すと、つるをヨーテリーに叩きつけた。直撃どころか急所に当たる。
「きゃうーん」
巻きついていたヴァインは、ヨーテリーから離れる。目を回していた。
「わわっ、テリリン! 戻って!」
ベルは戦闘不能になったヨーテリーをボールに戻す。
「ごめんね、ありがとう。……よーしっ! 次はこのコで!」
そして今度は、昨日も見たポケモン――ミジュマルを繰り出した。
「昨日みたいには負けないよ!」
「ミッジュ!」
ベルもミジュマルも、やる気は十分だった。
「さあ、どうだろうね?」
「タージャっ」
ミコトもヴァインも、かなり余裕そうだ。
「むぅ。信じてないでしょ! だったら証明するもん。いくよ、エイウ!」
「素早さはこっちが優ってるんだ、『つるのムチ』!」
「交わして『たいあたり』っ!」
ヴァインはまっすぐ走る。ミジュマルもまっすぐ走る。ミジュマルのほうは、勢いをつけながら。
と、突然ヴァインが左にそれた。
「ミジュ!?」
それに反応が遅れ、ミジュマルは体制を崩す。そこにすかさずヴァインは『つるのムチ』を叩きつけた。
「タジャッ!」
「ミ……ジュッ!」
が、ミジュマルも負けじとホタチを投げつける。それがヴァインの背中に当たる。
「ジャッ!?」
結構痛そうだ。
「ヴァイン! 大丈夫!?」
「タージャ! タジャタジャ」
だが、平気らしい。
「エイウ!」
「ミジュミージュ」
ミジュマルも大丈夫だと言っている。だが、こちらは明らかに無理をしていた。
「さっきのナイス!」
「ミージュ!」
「いや、バトル中なんだけど……」
「タジャ……」
ミジュマルを褒めるベルと、褒められて得意になるミジュマル。そしてそれをみて、ミコト側は呆れている。
「……って、呆れてる場合じゃない。今がチャンスだ! ヴァイン、『たいあたり』!」
しかし、バトルは非情なもの。呆れや油断が命取りになる。
ヴァインは頷くと、スピードで勢いをつけて、完全に油断しているミジュマルへと『たいあたり』した。
「ミジューっ!?」
* * *
バトルは、ヴァインの勝利で終わった。
「うわあ……勝てなかった……」
ベルは膝をついて落ち込んでいる。ミジュマルも、一緒になっている。
「やっぱり強いんだね! ミコト」
「強いのはヴァインだって」
「タジャ」
ベルの言葉に、機嫌を悪くするミコトとヴァイン。だが、そんなことは気にせず、ベルは話を続けた。
「あたしも、負けないようにポケモンを育てるね!」
ミジュマルを抱え上げ、ベルは2番道路の方へ戻っていった。
「じゃあバイバーイ」
この言葉を残して。